心の色…
中島しのぶ
幼馴染の薫は黄色
「色言葉」ということばを知ったのは、いったいいつだっただろう。
学校の授業? それとも図書館で読みふけった小説に書いてあった?
確か、色のもつ印象やイメージ。一つ一つの色がもつ意味……いや、根源的な連想による意味、文化的な色彩象徴による意味。個人の体験と結びつく色の記憶による意味のことだったかな。
いずれにしても私はあの日以来、心の「色」が見えるようになったんだ。
全身じゃなく、心があるとされている胸の辺りがぼーっと薄く光るって説明すればいいいのかな。とにかくそんなふうに見える。
例えば――仲の良い幼馴染の明るくて活発な薫は、黄色。
いつも陽気で前向きな美穂ちゃんは少し違って、オレンジ。
ちょっと大人っぽくて、セクシーな感じの志乃さんは紫――ってね。
でもそれは普段の色。
怒ったり、悲しんだりしている時は赤だったり青に変化する。
そしてその感情が強ければ強いほど、心の色は濃くなり胸だけではなく全身を覆うんだ。
その能力のことを一度母に話したことがあったんだ。
母は悲しみからか、全身が真っ青になりあの日と同じにしばらく口をきいてくれなかった。
何でこんなことを思い出しているかというと――。
中間テストの試験勉強を口実に、今日も私の部屋に上がり込んできた薫。
いつも何だかんだ口実を作って家に来る。
トイレ貸して〜といって来たこともあった……三軒先なのに。
「ね、しのぶ!
そろそろいい加減あたしがあんたのこと好きだってのに気づいてよ!
あたしはあんたのことが子供の頃から好きだったの!」
いつもは黄色なのに全身を赤くして。
身長も体重も薫に負けている私は――ベッドに押し倒されたんだ。
「う、うわ、莫迦やめて〜! いくら幼馴染っていっても〜!」
「好きなものは好きなの!」
「私、今は女の子だからそういったことはだめ〜」
今は女の子――あの日、高熱を出した翌朝目が覚めたら女の子の身体になったんだ――心の色が見える能力まで備わって。
Fin.
心の色… 中島しのぶ @Shinobu_Nakajima
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