空の色

玄栖佳純

第1話 てんしのはしご

 天気の良い午後。

 海岸沿いの道路を自転車で走る。すんごい自転車ではなくままちゃり。時間がなくても無理なくのんびり。


 見慣れた景色。

 見慣れているけれど、太陽の光が驚くほど綺麗な時がある。


 時間があるときは自転車を停めて写真を撮る。

 ない時はただ眺めながら走る。


『空色』は淡い青を指すけれど、空の色はもっと多彩である。辞書で調べたら天気の良い昼の空の色とあった。確かに夏の日の青空は空色でいい。空はマットな空色スカイブルー。雲があるとしたら、それを避けて見ると目の覚める青が見える。ちょっと違うかもしれないけれど、青いペンキをプロの人が丁寧に塗ったかのよう。そうとしか言えない色。


「綺麗に塗れているなあ」と思う。

 素人ではこうはいかない。空を塗る専門の天使さんや精霊さんが塗ったと言えば、メルヘンに。もしも彼らが塗っているとしたら、朝焼けとか夕焼けのグラディエーションなどプロの仕事である。大胆に繊細に、空がムラなく少しずつ色が変わっている。スプレーとか使って塗っているのかもしれない。


 そこへ雲の職人だろうか。それとも、職人な天使さんか精霊さんが空に色を塗った後に現れるファンタジーな住人。雲が巨大な天使に見えたり龍に見えたりする。あとUFOとか魚の群れとかイルカとか鯨とか。

 空が大きく見えるためか気持ちの問題か、海で見る雲は特にそういうモノに見える。


 見ていて飽きないとか言うけれど、わりとすぐに飽きる。ただ、眺めながら自転車で走るのは悪くない。ペダルをこぐ足も軽くなる。長くこいでいると疲れるが。

 疲れないと言えばウソになる。

 でも悪くない。


 行きは空色を眺めながら走り、帰りは多彩な夕焼け空を見る。

 金色に輝く太陽も良い。周囲が明るく照らされる。昔映画で観たシーンを思い出す。曲もよみがえってきて涙が出そうになったりならなかったり。


 それも悪くないが、周囲がピンク色に染まる夕日は良い。薄い白い雲で空が覆われて、赤が薄まってピンクになるのか、優しい空気に包まれる。そこへ天使のはしごが見えたりすると、天から天使さんが降りてきているのかなあと思ったりする。


 空に雲がたくさんあって雲の切れ目から太陽が見えることがある。そういう時は、他の場所から見ると天使のはしごがかかっているような気がする。たぶん、かかっている。ということは、自分のいる場所に天使が降りてきていると思ってもよいのではないか。


 天使がいるとかいないとかは置いておいて、そう思うと

 気分は悪くない。


 そう思いながら自転車をこぐのはちょっとした楽しみ。


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空の色 玄栖佳純 @casumi_cross

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