第4話 エルフは戦士でありたい
思いっきり現実逃避をして、大量の香辛料を手に冒険者ギルドに戻る。
オーガの討伐報酬と香辛料の納品で今回の報酬で手持ちに多少余裕が出来た。
んでちょびっとそこから出費して、ギルドの1等個室を借りる。
無論、眼の前でちょこんと申し訳無さそうに座っているエンシェントエルフの件だ。
どうせ、聖女はパーティーに入れましょう!とか言う可能性が高いので口封じのテープで叫べなくしておいた。
エルフ「あの…先ほどはありがとうございました…」
俺「別にぃ?…聖女は救済するのが使命らしいんでな……んでそれよりも、なぜエルフが、エンシェントエルフが戦士なんかやってる?」
俺は礼をきちんと受け取らず、当たり前の疑問を口にする。
戦士適正が一番ない種族といっても過言ではないエンシェントエルフ。
オーガに対しても剣一本で戦っていたらしい…魔法の傷もなかったことから本当に剣しか振っていないのだろう。
その言葉を聞き、一瞬で悔しそうな顔になり、涙をこらえながら必死に声を振り絞って俺に告げた。
エルフ「僕には魔法適性がないんです…」
なるほど…魔法適性が全く無い。つまり基本魔法すらロクに使えないのか。
これで合点がいった。
エルフはせきを切ったように泣き叫びながら言葉を紡ぐ。
エルフ「だからッ!僕は村の皆からバカにされてッ!!でもお父さんとお母さんはそれでも優しくしてくれて……でも役立たずは嫌だったからッ!戦士になるしかなかった!でも!!こんな力が弱いんじゃ……僕はぁ…僕はァァァァァ!!」
そんな中、俺は冷静に『鑑定』する。
…確かに魔法適性は全くの0。
ただし、魔力だけは一級品の量と質。
どうすっかと頭をかきむしりながら、俺は告げる。
俺「確かに、君の魔力適性は0だ。今のままじゃなんの役にも立たんな」
エルフは絶望により言葉を失う。
聖女は横でむーむーうるさい!!
あー!黙っててよ!いいところだからさぁ!
俺「…確かにこのままなら、役に立たない…が道がない訳じゃない。君が望むのなら2つ活躍の道はある。一つは君の魔力の量と質を活かして生体魔力電池として強力な魔法使いのバックアップをすること…そしてもう一つは」
まず俺は、先にエンシェントエルフである強みを活かした活躍方法を提示する。
上級魔法使いですら魔力切れや強敵に対して魔法が通じない事がある。
そこで、彼女の出番だ。
上級魔法使いに過剰な魔力を供給することで威力を底上げたり、魔力が尽きていても魔法を唱えられるようになる…
だが俺はもう一つを提示する。
俺「プライド、その身すら全て投げ捨て最強の戦士となることだ」
彼女は別の意味で言葉を失った。
聖女「ほえ?…そんなコトできるの?」
俺「出来なくもないってことさ」
口封じのテープを剥がした聖女が尋ねる。
まぁ…この方法は全ての可能性を潰す、ルートなんだけどねぇ。と軽くいいながらエルフの顔をみる
エルフは深呼吸して決意を固める。
涙は飲み込んだ。そして心から叫ぶ。
エルフ「…僕はさっき死にました。死ぬ寸前で助けてもらいました…プライドなんて捨てます…だから僕は活躍したいッ!お父さんとお母さんに胸を張れるようにッ!!…だからっ!教えて下さい…!!」
聖女にそでを引っ張られ、やれやれと俺は頷く。
まぁ…厄ネタなんて1つ2つ抱えても一緒かぁ…
俺「まずはその身に『身体強化』の魔術刻印を刻む。そうすることで魔力を流すだけで身体強化され、戦士ぐらいの立ち回りが出来るようにはなる。強弱はなんども試して身体で覚えろ…んで、必ず覚えなきゃいけないスキルだが…吸血鬼のスキルを使う」
聖女「吸血鬼!?なんでなの!?吸血鬼化させようってこと!?」
俺「まぁ落ち着け。んでとりあえず話を聞け。吸血鬼のような魔人には特殊な魔力…所謂『妖力』があるんだが、こいつを膂力などに変換出来るのは吸血鬼だけ。…細身のやつらがバカのような力を出せるカラクリはそういう事」
エルフ「吸血鬼のスキル…」
俺「吸血鬼は変質した魔力操作のエキスパート…そのスキルを利用して妖力で身体を満たしてやることで身体機能が化け物並みになる。さらに『身体機能』の魔術刻印は別のスキル郡だから相乗効果で効果が伸びる。しかも魔力消費量も至極少ないってわーけ……ここに丁度『劣化した吸血鬼のスキルブック』がある『妖力操作』も取れるようになるが…エンシェントエルフとしての高潔さは死ぬことになるぜ?それでも?」
俺は全て説明して、覚悟を問う。
エルフ「構いません…それで、前を向けるようになるならッ!!」
スキルブックが光り輝き、他のスキル適性を犠牲にエルフは『妖力操作』を習得する。
悪魔との取引が完了する。ってか?
俺「…じゃぁこれ選別。ちょっとした金と…一級彫師にツテがある、紹介状書いとくから後で行きな。…あと素人剣術じゃダメだな。騎士団にもツテがある。剣術ならうには丁度いいだろ?」
エルフ「え…うそ…なんで…?」
俺「…ただのお節介だよ」
偽りなき本音。
俺みたいに上を目指せなくなったやつよりも、
高みに目指せるやつを応援したいだけさ。
隣で聖女が満足げにむふー。しておられる…
なんだぁ?こいつ?
ほっぺでもつねったろかな?
と思った瞬間
鍵がかかっていたはずの個室のドアが開いた。
?「…私を、魔法少女にしてくださいッ!」
小さきものはそう叫んだ。
追放されたバックパッカーは受難の時代を迎える 日々、猫。 @hibineko
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