第3話 エルフの迷い子

聖女とパーティーになってから早3日。


貯まらない金。減らない聖女の借金に頭を抱える日々…

いや、あいつめっちゃ喰うねん…奇跡を使った分と等価交換レベルで爆食いするからこっちの手持ちも増えんし、聖女のツケも減ってかないってコトさ…


金が貯まらないのならドラゴンとか狩ればいいじゃない?って誰かがいいそうだけど、そういった魔物は個体数が少なくてめちゃくちゃ強いから莫大な賞金がかけられてるので、日頃の金策には向いてないんだよなぁ…


てな訳で大型専門の戦略兵器を連れて、フィールドワークに出る。

狙いは森林奥部の香辛料…とそこら辺の道中で出る魔物。

ここいら基本レベルが2。一般人のレベルは0なので立ち入る事が出来ないし、立ち入っても魔物に瞬殺されるだろう…

だから、冒険者が代わりに香辛料をとってくる必要があるんですね。

まぁ。そもそも俺が強くねぇからな……ふふ…


道中のうさぎやモグラなどの魔物を暗殺しながら最小限の負担で進んでいく。


聖女「おぶぇ!!(ずっこけた時に出た声)」


前言撤回。

聖女のお守りという最大限の負担を軽減する為にその他は最小限の負担で進んでいく…


聖女「お腹すいたー!!もう3時間も歩いてるぅ!!…お腹がすいたんだよ!!」

こうやってお腹がすいたとか、甘味が欲しいって駄々をこねる…これでも元聖女か!?


ちょっとした頭痛に悩まされながら、インベントリから『乾いた木』『マッチ』『フライパン』『下処理された魔物の肉』『塩』を取り出す。


俺「魔物の避けの結界はお前がやれよ?」

聖女「もちろんです!それが私のしごとですからー!!」


もうこいつここにおいていっていいかな!?


聖女は手を組んで、魔物の避けの『結界の奇跡』を発現させる傍ら、

俺はフライパンに軽く油をひいて、魔物の肉を焼き始める。味付けは塩のみ。

冒険者といえば、この食事って感じの『魔物肉の焼肉』が出来上がる。


聖女「むぅ…味は塩のみですかぁ………むぅ?」

俺「じゃかましいわ!!嫌なら食うな!!」

聖女「嫌じゃないので食べます!!頂きます!!…オイシー!」


不満げな聖女に思わず突っ込む。

たぶんおそらくどうせ食べる量足りないから不満なんだろうなぁ………てかこいつ、どうしたらもっと旨くなるか考えてねぇか???

まぁインベントリは無限だから、やろうと思えばもっとちゃんとした料理が出来るが、こんな森の中で凝った料理なんて出来るかぁ!?


ため息一つ付きながら。陽気な音楽が流れてきそうな焼肉セットで『魔兎の丸焼き(ハーブ仕込み)』を作る。


ふふ、上手に焼けましたってなぁ!


『魔兎の丸焼き』を聖女に投げ渡し、俺はインベントリからパンと水を取り出す。

ボソボソな安いパンを水で流し込む……この素朴な味わいがなんか冒険してるって感じがして好きなんだよなぁ…と思いつつ聖女に目をやる。


聖女「(ムシャァッ!)」

思わず吹き出しかける。一心不乱に肉をかぶり付いている聖女の図に。


おいおいおい。ヒロイン?がしていい行動じゃねぇぞ???


はぁ…パーティー組んだの失敗だったかぁ?

そう思った瞬間。森に木霊する声。


俺は聖女の目を見る。

聖女は頷く。


聖女は肉を投げ捨て、火を消した。

俺は聖女をおぶり、使えるスキルをすべて並行使用して急行する。


3分。かかった。


今まさに瀕死の人影に振り下ろされる巨大な拳。

オーガ種。

巨大な身体を持ち、怪力が特徴な魔物。レベル4。

数多の冒険者を葬ってきた魔物は今まさにもう一つの命を奪おうとしていたのだ…




だが、もういなくなった。


聖女の『攻撃の奇跡』。

それは、極太ビーム。

それは、オーガの上半身を消し飛ばしたのだった…


おいおいおい…追加報酬はゴミになったなぁ、といった感想は後回し。

瀕死の人影に寄る。


四肢の一部は欠損し、骨は見え、一部内蔵も外に出ていた。


聖女は『全治療の奇跡』を施そうとする。

しかし、奇跡は起こらなかった。

光さえ、もたされなかった…つまり、手遅れだったということ。


聖女は半狂乱に陥る。


もう助からない。


…そう悟った瀕死の人影は潰れた肺で遺言を託そうとする。


だが俺は…

俺「悪いな、俺は粗悪なハッピーエンド派なんだ…」

わっるい顔つきで腰にぶら下げていたマジックバックからアンプルを取り出し、中の虹色に光る液体を瀕死の人影にぶちまける。直後目を背ける俺。


「おっごっ…がっ!」

一瞬で身体が【もとに戻った】。

変な息の吸い方をしたのか咽ていた…これだから治され慣れてないやつは…


ついでに適当な布をかけておく。鎧もボロボロで色々みえちまうからな…

「ぼっ…僕は生きているの…???」

俺「さぁな?ここは死後の世界かもよ?…それか、追い返されたのかもな?」


驚く彼女に、ふざけた回答をする。


彼女は生きている事を確認し、俺達に礼を告げる。

そして、彼女はポツリポツリと呟く。

エルフ「僕は…『エンシェントエルフ』……職業は…戦士」


うぅぅぅぅぅぅん????

エンシェントエルフはエルフ族の古代種…

特に魔法に秀でており、逆に体格は良くなく力が弱い………

んで、戦士…と…


あ、このコも厄ネタやwww

ふっふー!なぜここでバラしたんだよ!?


頭痛のタネが増えたと頭を抱えながら

俺「とりあえず、メシにしようぜ?」

とエルフに告げながら『魔兎の丸焼き』を手渡す。


聖女は喜び、この場で結界をはる。

エルフは困惑しながら受け渡された肉をじっと見つめる。


そして俺はインベントリからキッチンを取り出し、料理に没頭する。

これ、まさしく思考放棄。

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