僕は今、ラーメンが食べたい

滝川 海老郎

僕は今、ラーメンが食べたい 本編(1000文字)

 僕は今、ラーメンが食べたい。


 特に好きなのは出汁が利いた醤油ラーメンだろうか。

 かつお出汁をベースに、旨味が凝縮して、しょっぱくて美味い醤油ラーメン。


 ハマグリのラーメンもかなり好みだ。

 日本の出汁、醤油文化は素晴らしいものがある。旨味を理解している。


 硬すぎず柔らかすぎず、ほどよい弾力の張りのあるしっかりした麺。

 ストレート麺も捨てがたいが、適度にくねくねしている縮れ麺もスープによく絡んで美味い。


 僕は今、ラーメンが食べたい。


 メンマ。そうメンマ。支那竹とも呼ばれていたが今の若者は知らないかもしれない。

 ラーメンもそういえば、支那そばだった。

 ほどよい歯ごたえ。濃いめの味付けで、ラーメンを彩ってくれる。


 チャーシュー。漢字で書くと叉焼。僕は素では読み書きできないのはご愛敬だ。

 豚のチャーシューはボリュームがあり、単純に肉は美味い。

 ラーメンの満足感をさらにプラスしてくれる。

 食べ応えがあるものも好きだし、口の中でほろほろに溶けるタイプも最高に美味しい。


 タマネギ。あればだが、みじん切りの新タマが載せてあるものも、かなりいける。


 ネギ。ネギのシャキシャキとした歯ごたえ。それから香味野菜の風味が口をさっぱりさせる効果がある。


 それから、表面に浮いている油。

 ラーメンの温度を保ち、またスープに旨味を加える効果もある。


 最後に、背油。油は単純に美味い。

 体にはよくないことくらいは知っている。しかし、この背油の旨味は冒涜的なのだ。


 あとは、色々な具材。

 あってもよいし、なくてもよい。

 鳥肉のチャーシューもよいし、きくらげも、それから、なんだろう。

 いろいろだよ。いろいろ。ラーメンごとに趣向を凝らした具材も捨てがたい。


 これらが混然一体となって、僕を襲う。

 僕はラーメンの具材連合軍に完敗し、「とても美味しかった」と言う。



  ◇


 しかしここははるか遠く、異世界の地。


「ねぇねぇ、マスターなに唐揚げ食べながら物思いにふけってるにゃ?」

「私にも、分かるように説明してにゃ」


 この子たちはこの国で出会ったパートナーの猫獣人の女の子だった。


 そうだ、サイドメニューである唐揚げ、餃子、炒飯も捨てがたい。

 その唐揚げを食べたから、思い出してしまったのだ。


「僕は今、ラーメンが食べたい」


 残念ながら醤油がないのだ。

 似ているものはあるようだが、全然違うとしかいえない。

 半ば完成されたラーメンを食べることはあきらめかけているが、この世界は広い。

 どこかに、ラーメンとそっくりの料理があることを祈っている。ラーメン。


□◇□◇□──────


挿絵のラーメンです。お祈りください。

https://kakuyomu.jp/users/syuribox/news/16818093074125481350

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