虹色の惑星
白兎
虹色の惑星
「あの虹色の惑星には何があるの?」
幼いポーラが聞くと、
「あの虹色は有毒ガスなんだって」
と兄が答えた。
「あんなに綺麗なのに?」
ポーラが言うと、
「綺麗だからこそ危険なんだ」
と兄が答えた。
それから何年も経ってポーラは虹色の惑星への探索チームのメンバーとなった。幼い頃の話を思い出す。兄があれは有毒ガスと言ったが、それは兄の想像だったということが、大人になってから知った。
虹色の惑星へ無人機での調査が始まったのは今から五年ほど前で、あの綺麗な虹色が出来る仕組みが水素とその他の元素に紫外線が当たって電離し、電子が再結合した時に出て来る波長に由来することが分かった。兄の想像とは全く違う、神秘的な現象だった。
兄は子供の頃に言った事は忘れていたが、幼い頃のポーラはよく兄に質問した。だから兄は何でも答えた。それが本当はただの知ったかぶりだったんだと、兄は笑って言った。
「本当に行くのか?」
兄はいつになく不安げな表情で聞く。
「うん。夢だったから」
ポーラは虹色の惑星に行きたかった。それは幼い頃からの憧れだった。
「誰も行った事がないんだろう?」
今にも泣きそうな顔で兄は言う。
「それでも、あたしは行きたいの」
ポーラの強い意志は決して曲げられるものではない事を兄は知っていた。
「必ず戻って来いよ」
と言葉をかけて、兄はポーラを見送った。
探索チームを乗せた小型宇宙船は、ぐんぐん進み、目標の虹色の惑星へと辿り着いた。惑星を覆う虹色のガスの成分分析が始まり、その結果を人工知能が乗組員に伝えた。無人機での調査と同じであることが確認できた。小型宇宙船はそのガスの層を抜けて、惑星の地表まで行くと、人工知能が気体の分析を開始した。
「人が住める環境ではないのね」
ポーラはがっかりしたように言った。
「虹色の惑星に降り立っても、まったく美しくなかった」
探索メンバーの一人もそう呟いた。彼もまた、この虹色の惑星に夢を描いていた一人だった。
虹色の惑星 白兎 @hakuto-i
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