【KAC20247】私の色を塗り替えたの、ぜんぶ君

尾岡れき@猫部

エピローグまであと2話

 君は悪い人です。

 私が知らなかった世界を教えたの、君ですからね?


 ルールは、守るためにあるんですからね?


 それなのに、貴方ときたら。本来、ルールを遵守する側なのに、あっさりとそれを無視をして。立場のあるヒトがすべき行動じゃありません。


 あ、こら。

 ちゃんと、話を聞いてください。都合が悪くなると、そうやってすぐに誤魔化す。君の悪いクセです。


 キライか――?

 その言葉、ちょっとズルくないですか?


 好きか嫌いかで問われたら、そんな人は嫌いです。好きなワケがありません。


 ん……。

 だから、覗きこまないでください。

 き、君以外はという注釈がつきます。


 ……い、イヤじゃありません。


 ただ――意地悪です。

 確信犯です。


 ズルです。

 だって、酷いじゃないですか?


 私は、産まれてから今日まで、貴族の生き方しか知りません。いえ、貴族としても落第でしょう。ただ、文官として生きる道を選びましたから。


 貴族としての務めを放棄した。それは自覚しています。でも優秀な兄と妹がいる。我が家はもう安泰ですから――。


 だから、そういうことは言わないでください。分かっています、分かっているつもりです。私は、家族からしっかりと愛されて――。


(え?)


 そ、そんなことを言う人は知りません!

 聞こえません。


 だから、聞こえ――こ、ここで王族令ですか?


 酷いです。鬼です。悪魔の所業で……そ、そうですね。不敬罪と言われたら、確かにそうですが……わ、分かりました。


「――俺以上に、お前を愛しているヤツはいな……い……」


 こ、これで良いですか?

 え?


 私の気持ち……?

 そ、そんなの! 君は知って――。


 不義密通?


 私が婚約者にそんな不義理をするワケないでしょう! どれだけ私は君を愛して――。


 待って、王子?

 それは――。


 やめ、政務室ココじゃ。ダメ。今は――。



(ずるい――)




 君はズルイ人です。理論武装で固めた私を、こんなに甘美な色で塗り替えるのだから。















 ――そんなキスで、満足できるワケないじゃないですか?

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