第参話 交わされた約束と道の行く先  〈十四

 1節 —オトギバナシ—



 あの後、家に帰ってからネットでこの都市伝説の話をかき集めてみた。



 どうやら、都市伝説の中では割と有名な話らしい。少なくとも、動画投稿サイトでこれをまとめた動画が公開されてそこそこ伸びているくらいには。



 でも、どれも“この場所に謎の時計塔がある”というところまでしか紹介されていない。友人から聞いた話もそこまでしかない。



 死ぬというのはどういうことだ?



 あの時聞こえた幼い声の正体は?



 なぜ声が消えた後時計塔は見えなくなった?



 疑問は止まらない。



 でも、その疑問はどうやっても解決できない。



 ふと携帯を手に持つと、偶然か必然か、空から電話がかかってきた。




 2節 —電話—



「ねぇ、何か情報は掴めた?」



 第一声はそんな言葉だった。



「いや、特に手がかりになりそうな情報はなかった。そっちは?」


「割といい情報を手に入れたよ」


「聞かせて」


「了解」



 そう言い空は詳細を語り始めた。昨日のような声ではなく、淡々と。



「と言ってもそんないいものじゃないけど、あんな感じで幼い声が聞こえたら。そしてそれを解除する方法は、時計塔の爆破」


「余命二週間に塔の爆破ってどういうことだ?」


「いや、そのまんまだよ。私たちはあと二週間で死ぬけど、塔を爆破すればその二週間の余命は元に戻るってこと」


「マジか……」


「残念だけどマジ。それと、声が消えたら時計塔はなくなってたでしょ?」


「そうだな」



 続く言葉は衝撃的だった。




「時計塔はどこかに行ったんだって」




「…………は?もう一回言ってくれ」


「だから、どっか行ったんだよ」


「なんでだよ……」


「知らないよ。ともかく、そのどこかにワープした時計塔を探し出して、爆破しない

といけない。あと2週間以内に」


「……」



 たった数分で難しすぎる目標と突然の余命宣告を受けてしまった。



 とりあえず、誰かにこのことを言ってしまうとその人まで死ぬことになるので、絶対に俺と空だけの秘密にすることとなった。



 今の時刻はちょうど12時00分。俺も空も出かけると連絡しておけば時間は7時まで良いと許されているので、軽食だけカゴに積み込んで自転車で探索することにした。



 3節 —準備—



「来たよー」


「じゃあ探しに行くか」


「まずはどこ?」


「前に時計塔を見つけたところじゃないか?」


「え、あそこ割と遠かった……」


「命が惜しいなら来い」


「悪役?」



 とりあえず昨日の夜に時計塔を見つけた場所を探しに行くことにした。


 多分ここからなら30分ぐらい走らせれば着く、だろうか?恐らくそれくらいの距離。まあまあ長いからまた足が死にそうだ。



「母さんが電動自転車を持っているからさ、それを借りられないか聞いてくるわ」


「了解」


「母さん」


「どうしたの?」


「ちょっと遠いとこ自転車で外行ってくるんだけどさ、母さんの電動自転車貸してく

れない?」


「大丈夫よ。傷だけ気をつけてね」


「わかった」


「オッケーみたいだから空の自転車は一旦ここに置いといたら?」


「わかった」



 というわけで、俺が運転、空は後ろの荷物を積むところに両足を片側に寄せる形で二人乗りで乗ることになった。



 運動は苦手だが一応自転車の運転は得意なので大丈夫だ。重量バランス対策で反対にサイドバッグをつけてそこに荷物を入れている。普通に自転車にまたがるような乗り方をしないのは空の要望だ。アホである。



「じゃあ早速出発するぞ」


「了解」



 自転車の電動モーターの出力を上昇させ、俺たちは出発した。









〔現実では自転車の二人乗りは違法なので絶対にやらないでください〕

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空雪の双眸、望むはただの一日で。 ロクボシ @yuatan

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