とある姉妹と金色の鶴の話

あげあげぱん

第1話

 私の妹は折り紙を折るのが好きだった。


 私もよく一緒に折り紙を折っていた。妹とは姉妹でよく一緒に行動していたのだが、私が小学校の高学年になると、そういう機会も減っていった。中学生になる頃には妹と折り紙を折ることは全くなくなってしまう。


 妹とは少し歳が離れていたから、私が中学校に入った頃、彼女は小学校の四年生だったはずだ。そのくらいになっても、彼女は相変わらず折り紙を折ることが好きなようだった。


 中学生の私は折り紙を折ることが嫌いになったわけではない。ただ、妹と一緒に何かをするということが恥ずかしくなっていき、別々で行動することが自然なことになったのだ。


 あの時は中学校に上がってから初めての冬休みのころだったろうか。私は風邪をひいて寝込むことになった。そのころの私は友達も少なかったから、見舞いが来ることもなく、寂しく過ごしていた。一応、親友や知り合いから数件のお見舞いのメールは届いていたが、寂しいことには変わらなかった。


 そんな私に妹が金色の折り紙で鶴を折ってくれた。金色の鶴ばかり、十か二十か。それは千羽鶴に比べると数を少なく感じはしたが、全ての鶴が金色なので、なかなか見ごたえというかインパクトがあった。


 妹はそれを手紙と一緒に、私の枕元へ置いてくれた。


 手紙を読んでみると。


「お姉ちゃん。いざという時のためにとっておいた金色の折り紙でツルを折ったよ。千羽には足りないけど、特別な金色の折り紙です。元気になってね」


 何がいざという時なのか。妹にとっては姉が風邪をひいた時がその、いざという時なのだろう。妹は折り紙のセットを買うたび、金色の紙をとっておいて、その時以外も、いざというときがあれば金色の折り紙を使っていた。


 妹にとって金色の折り紙は大切なものなのだ。


 そして姉である私も大切な存在なのだ。そのことを金色の折り鶴は思い出させてくれた。


 私は風邪から回復した。その後も妹と一緒に折り紙を折ることは恥ずかしくて、やらなかった。折り紙というものがどうしても子どもっぽく感じられたからだ。でも、彼女と過ごす時間は以前のように、また増えていった。


 大人になった今も、妹とは交流がある。彼女は私にとっても大切な存在だ。

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とある姉妹と金色の鶴の話 あげあげぱん @ageage2023

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