第30話 陰る黄金

 何かが、扉を叩いている。

 かつての英雄はこのように言った。運命とは、苦痛を伴う快楽を模して人々の前に現れる、と。

 今までも、これからも、この音は耳元で鳴り続けるだろう。

 思い出されるのは、あの時の銃撃音。

 茂みに誰かが。いや、見知ったあの人が倒れ込んだ影の揺らめき。

 虚無感と憤怒は、常に彼女の背中を突き動かしてきた。

 大切なものを失ったのだ。

 そう複雑なことではない、誰だって宝物を失ったら意気消沈するはずだ。

 彼女の場合、その度合いが他者より少し過剰だったというだけ。

 夢はいつでも、過去の声を蘇らせてくれる。

 しかし、その非現実的な感傷は、目覚めと同時に大いなる喪失感だけを残していくのだった。

 それなら、寧ろ忘れてしまったら良かったのかもしれない。

 命に代えて、過去に戻ることができるとするなら。

 彼女に嫌われてでも、彼女が生きている未来を選択するだろう。

 それだけこの夢は甘く、蕩けるようで、理性ある人間にとっては毒過ぎた。

 血潮の天輪の光を浴びても、それは変わらない。

 深海に、新たな光が差し込む時が来た。


「——さ——、——くだ——」


 亀裂から、扉を叩く音が響く。

 誰かが、呼んでいるらしい。

 ならば、目覚めなくてはならないだろう。


「ヴィオ——ん、おき——ださい」


 それこそが生き残った者の定めであり、生きていく者の宿命なのだから。

 眠る理由を考えるなど、あまりに傲慢である。

 胡蝶の夢など詭弁に過ぎない。本質などという言葉は、現実を相対化するあまりに軟弱な概念だ。

 絶対的な現実の中で、意思を貫徹する為に人は再び目覚める。

 もし貫徹すべき意思も、目的も、夢もないのなら、それは死人も同じだと。


「ヴィオラさん、起きてください!」

「——は」


 錨が引き上げられるように、力づくで彼女の意識は浮上した。

 勢いに任せて瞼を開けると、そこにはヴィオラの両肩を持ったまま眼を丸くしているサリナが立っている。


「ヴィオラさん!」

「……」


 その後ろでは、明らかに異質な雰囲気を纏ったが、サリナの身長と同じくらいの高さのクローゼットに悠々と腰掛けていた。

 腕を組んで、眼を瞑っている。

 突然動きを止めたサリナに気がついたのだろうか、かれは綽々と立ち上がると、その不気味で無機質な笑顔を浮かべたまま口を開いた。


「眼を覚ましましたね。おはようございます、屈強な傭兵よ。泡沫の夢は楽しめましたか?」

「……あぁ、楽しめたさ。少なくとも、寝起きにアンタのしけたツラ拝むよりはずっとな」

「それは何より。さぞかし、美しい夢だったのでしょう」

「チッ。んなこたぁ、どうでもいいんだよ」


 ヴィオラは上半身を起き上がらせると、不意に脇腹の痛みを自覚した。

 触ってみれば、腹回りに包帯が巻かれている。

 そうか、妙に身体が重かった理由はこれか。

 いつだったか覚えていないが、大怪我を負っていたらしい。


「何が起きた?」

「いつまで覚えていますか?」

「オーラムが、“紅き血潮の天輪アクワルタ・クワルナフ”に接触したところまでだ。そこで強烈な光に飲み込まれて……あとは覚えてない」

「身共と同じですね」


 そういうサリナは、いつものように身体の輪郭ぴったりのインナー姿だ。

 ヴィオラと違って大きな怪我を負っている様子はない。


「ここは……病院か?」


 ふと見上げて天井に掛かったランプを眺めてから、彼女は日の翳り始めた外の景色に眼を遣った。

 いつも通り、大通りには多くの人々が行き交っている。楽しげだったり、鬱々としていたり、陽気だったり、彼らの表情は様々だ。

 しかしその多様性こそが、この都市の幸福と繁栄を物語っていた。


「ここはスピネル区にある大型病院です」

「スピネル区?ま、ペリドットの管轄地じゃねぇだけマシか。早く、起きねぇと……寝てる暇なんてねぇだろ」

「おっと、それより前に。私があらかたの事情を説明しましょう。彼らの元に合流するのはそれからでも遅くありません」

「私はどれだけ寝てたんだ」

「およそ半日です。あなたは生き残りの中でも特に怪我が酷かった……他の方々と比べ、回復に時間がかかるのは当然のこと。寧ろ、今日中に眼を覚ますなど私は思ってもみませんでした。最優の傭兵を名乗るだけありますね、流石です」

 

 アルカヘストは失礼、と口にしながらヴィオラのベットの脇に腰を下ろした。

 彼女の脚の長さを考えれば、このベッドは高さが足りず座りにくいだろう。

 そんなことよりも、天井の低さが気になるということだろうか。


「旦那。アンタは、今の今までどこで何をやってたんだ」

「事務仕事ですよ。これでも私は、ハダーシュ砂漠の実質的な長ですから。管理者として、やるべきことが山積みなんです。しかし、そのような建前を使って静観するのも難しい事態に陥ったと聞きまして」

「……まぁ、そうか」

「フフフ。まぁ、ご安心ください。私が加勢するからには、この作戦が失敗することなどありませんよ」


 その自信は、どこから湧いて出てくるのかよく分からない。

 大方、教会の中で見た能力を使ってここまでやって来たのだろう。

 アレでどうやって戦うのかは知らないが、少なくとも移動手段としては破格だ。


「どこまで知ってるんだ」

「まぁ、まぁ。そこまで質問攻めにされては、この私でも処理が追いつかないというものですよ、ヴィオラさん。1つずつ順繰りに説明致しましょう」

「……分かった。黙ってる」

「まず初めに、私はあなた方が体験したことの全てを知っています。ですから、あなた方から私に対して説明するべき事項は存在しません。ご安心ください」


 どうしてそう言える、と尋ねたいところだが。

 黙ってると言った手前、すぐに疑問を呈するわけにもいかなかった。


「さて、それでは手短に。ヴィオラさんが先程仰った通り、ジェムストーンマフィアの先代ボスであるオーラムは“紅き血潮の天輪アクワルタ・クワルナフ”に接触し、大いなる天輪を戴冠しました。この窓からザ・グレート・モンテドーロを伺うことはできませんが……沸々と、巨大なエネルギーがあちらに集約しているのを感じられるでしょう?」

「……まぁ、言いたいことは分かる」


 集約、という表現が正しいのかは定かでないが。

 少なくとも、何か目に見えない引力によって、自らの存在どころか魂までもが吸い付いていくような感触を、ヴィオラは意識していた。

 正直気味が悪い。神聖さの欠片もなかった。


「四獣に、神聖さなど求めてはなりませんよ。アレらは、この大陸に存在していてはいけない異物、人間の生活圏を脅かす侵略者ですから」

「……」

「さて、それでは想像してください。いっぱいに油が注がれたグラスがここにあるとしましょう。その中に火を落としたら……グラスはどうなりますか?」

「そりゃあ……燃えるだろ」

「燃えるだけですか?」


 いや、それだけではない。

 溶ける、割れる、破裂する。

 まぁ、表現は色々あるだろう。

 しかし結末は同じこと、炎を纏った油が解き放たれて、周囲を焼き尽くすまで止まらなくなるのだ。


「同じことが起きたのです。それは実に小規模なものであり、相対的には単なる初期症状に過ぎないものでしたが、天輪の目と鼻の先に居たあなた方を焼き尽くすには十分なものでした」

「私たちは、巻き込まれたのか……」


 記憶にない上、一瞬の出来事が過ぎて実感が湧かない。

 ヴィオラは手元に視線を落とし、グーパーと指を動かしてみせた。

 しっかり動く。何かしら欠損があるわけでもなかった。

 身体が資本の傭兵業だ、こんなことで大怪我を負っては困ってしまう。


「そういうことです。厳密に言えば、エネルギーの奔流を受ける前に私が安全な場所まで転送させたのですが」

「それは……そうか。ありがとう。どうやったんだ」

「覚えていませんか?“門”の能力です。あなた方を救い出すくらいは造作もないことですよ」

「そんなことまでできるのか……」

「送迎の馬車のようなものですよ。この能力があるからこそ、あなた方が金鉱に入るのを黙認した、というのも事実です」

「は?」


 つまり、奥底に眠るモノのことを知っていたのか?

 いや、もしかするとそれ以上かもしれない。

 一連の失踪事件の黒幕さえも、かれは……。


「旦那に責任転嫁をするつもりはない。ただ、それならどうして黙ってた?あの潜行とこれまでの失踪事件で何人もの命が失われた。私のように、メシ食う為に好き好んで命の取り合いを生業にしてる人間ならいくら死んだっていい。こういう泥臭い命の奪い合いは、適性のある人間だけに体良く押し付けるモンだろ?」

「あなた方が賢いからですよ」

「賢い?」

「賢人とは、得てして情報の中身よりもその根拠をこそ重要視するものです。私が懇切丁寧に“紅き血潮の天輪アクワルタ・クワルナフ”について説明したところで、あなたは無条件にその言葉を信じることができましたか?少なくとも、あなたが今程の理解を持てるまで根拠を並べ立てる自信が私にはありませんでした。あるいは、私の実力不足が故と考えることもできますね」

「……」


 良いように言いくるめられている気がして、どうにも癪に触る。

 ただ、言い返すのも無意味に感じられた。

 このひとに言葉で打ち勝つなど、夢のまた夢のように思えたのだ。


「話を戻しましょう。それから、私はかねてより面識のあったスピネル殿に面会し、このような療養の場を提供していただいたというわけです」

「……何人が戻って来れた?サリナは、まぁ無事そうで何よりだが」

「それでは、身共が。マーキュリーさんとは先程会ってお話ししました。今はマスターの命を受けて外出中です。アレキサンドライトさんやクリスタルさんもまた既に目覚められて、スピネルさんの元へ協力関係の打診に行かれました。最後に、もうお一方……」


 言葉を濁すサリナ。

 とはいえ、良くも悪くも、ヴィオラは察しが良い。


「まさか……」


 その「もうお一方」が誰なのか、何となく理解してしまった。

 同時に、憤怒にも似た濁流が脳組織を支配する。

 答えは既に出ていた。

 ヴィオラはアルカヘストを一瞥する。

 それから大きく息を吐くと、肌に擦り付く包帯を抑えながら彼女は立ち上がった。



 結果発表。

 果たして、その予想は当たっていた。

 既に包帯とガーゼだらけになっている彼の顔に新たな痣をこしらえてやりたくなる気持ちを抑え、どすんとベッド脇の椅子に座り込む。

 追って、サリナは冷たい瞳のままその隣で立ち止まった。

 存外、彼女は感情を表に出さなかった。

 或いは既に発露させた後で、残り滓すら出て来なかったのか。


「また来たのか。次はなんだ?俺を罵倒しに来たのか、蔑みに来たのか。どちらにしても、お前らはその庶民らしい自尊心を満たせるんだろうな」


 金髪翠眼の青年は、疲れ切った瞳でこちらを見た。

 どうやら彼は、随分と厚化粧をしていたらしい。

 化粧の剥がれた彼の表情は随分と見窄らしく、クマがあって、どうにもうだつの上がらないどこにでもいるような幸薄な青年のようにしか見えなかった。

 青年が口にしているのは、確かに耳に逆らう刺々しい言葉だ。

 しかしどうしてか、不思議とこれ以上彼に対して怒りの感情が湧いて来なかった。

 どちらかといえばそれは、憐憫、軽蔑、呆然……あの時、等活が嬉々としてペリドットにネタバラシしていた時に抱いた感情と同じだ。


「どうして、こいつもここに?」


 ヴィオラは、ドアの枠に寄りかかったアルカヘストに問いかけた。


「重要参考人、でしょう?感情面は兎も角、利益を鑑みるなら、彼に死なれては困るはずです」

「重要参考人?ハッ、俺からどんな情報を聞き出すんだ?光球のメカニズムか?等活とイブリースの恐るべき計画か?それとも、戴冠したオーラムがこれからどうなるのかについてか」

「そのどれでもありませんよ、ミスター。私はあなた様に対し、尊重を持って接します。あなた様には、あなた様にしか口にできないことを教えていただきたいのです」

「その喋り方……」


 ペリドットはぴくりと片眉を上げた。


「等活に似ている。わざとか?それとも、実力者というのはいつでもそういう凡人をくすぐるような喋り方をするものなのか。どちらにしても鼻につく。今すぐやめろ」

「オイ、お前な——」

「まぁまぁ、ヴィオラさん。難しいことを申し上げるつもりはありませんよ。ただ、あなたにはこのような凶行に至った理由について問いたいと考えているだけでなのです」

「凶行?凶行だと?俺が素直に答えたとして、お前のような庶民に何が分かる!ここは裁判所か?違うだろう、ここは病院だ!ならば俺のような取るに足らない人間のことなど放っておけと」


 男の声が、勢いよく開かれた扉の音で遮られる。

 振り返ればそこには、黒縁眼鏡の少女が今にも爆発しそうな様子で立っていた。


「……あ」


 二人の眼が合う。すると不思議なことに、彼女の眼付きが少し柔らいだような気がした。


「ヴィオラさん、お目覚めになられたんですね。良かったです」

「おう。ついさっきな。そんで、とんでもねぇ奴が同じ建物の中に居るってんで、会いに来たわけだ。ま、今のところは収穫ゼロだが」

「ほほう。そうとは限らんかもしれんぞ?」

「あ?」


 数日ぶりに聞く、特徴的で艶美な声。

 誰の声か、否、記憶を探れば自ずとその答えは明確になる。


「5日ぶりくらいかの?月牙泉の諸君。金鉱に潜ると聞いて、妾は心配であったぞ。妾が下した決断によって見知った者の命が失われたとあっては、妾も寝覚めが悪いからの。無論それは——」


 彼女の視線が、翠眼の彼に向けられた。


「敬愛すべき同僚にも適用されよう。そなたの命脈が保たれたこと、このスピネルは喜ばしく思おう」

「嫌味か」

「まさか。そなた、少し卑屈になったのではないか?以前顔を合わせた時は、鼻につく程尊大であったものだが。しかし、そのように萎びた姿も悪くはない」

「……」


 良い趣味をしている。

 ヴィオラは、鼻を鳴らした。


「それで?どうしてスピネルともあろう高官がここまで?」

「私が掛け合って、お願いしたんです」


 つまり、事情を全て話したのか。

 まぁ、物分かりの良い人ではある。


「妾は我が君の言葉を信じてここまで足を運んだだけじゃ。代わりにアルカヘスト殿、そなたが詳しく説明してくれるのであろ?」

「説明という程ではありません。このままでは、モンテドーロが近い内に地図上から消え去るというだけのことですからね」

「……昨夜、金鉱の奥底で遭遇したことについては既に聞き及んでおる。俄かには信じ難いおとぎ話だが、妾は事実と受け入れよう。そこに寝ている男が演技に協力するとは思えないからのう」


 スピネルは立てかけられた椅子を引き出すと、その上に腰を下ろして脚を組んだ。


「だが、なぜその“紅き血潮の天輪アクワルタ・クワルナフ”とやらがこの都市の脅威となるのだ?失踪事件は、そこの愚か者が画策したことなのだろう?数十年、数百年と害悪を齎すことのなかった存在が今になって脅威となる理由は何だ」

「ある意味、あなたが仰ったその愚か者が全ての発端と言えるでしょう。厳密には協力者が存在したわけですから、全ての罪を彼の肩に乗せるのは憚られますが……誘拐した民衆を天輪に捧げ、覚醒の後押しをしたのは他でもない彼です」

「覚醒すれば何が起きるというのだ」


 スピネルの瞳は、いつも以上に真っ直ぐで真剣だ。

 ハイライトの裏に、少しばかりの揺らぎが見える。


「天輪は言わば、純粋なエネルギーの塊であって自ら駆動するだけの意思を持ちません。卵から孵ろうとする時、正しい方向に導くだけの理性が必要となるのです」

「理性……」

「コントローラーのようなものですよ。そしてそれは、純粋な力の支配者も同義であり、選ばれた者はかつて四獣と呼ばれた偉大にして害悪な途方もない存在と同等のものに昇華できるのです」

「故に戴冠、か」

「しかし、まだオーラムさんと天輪は完全に融合していません。戴冠に際して、人体には大きな負担がかかります。今は、それに少しずつ順応している頃合いでしょう。完全に力を掌握し、覚醒を果たす時がタイムリミットです」

「仮に覚醒したとして。具体的には何が起こる?」


 スピネルにとって、それは最大の質問だった。

 究極的なところ、その答えの如何によって全てが決まるのだ。


「これは、予想し得る限り最小規模の展開ですが。覚醒に際したエネルギー収縮の余波によって、ザ・グレート・モンテドーロは大規模な噴火に見舞われ、またその山体は爆発的な堆積の膨張に耐えられず崩壊するでしょう」

「山体崩壊……最小規模の予想でも、山に直接面しているモンテドーロの被害は免れんというわけだな?」

「それだけではありません。陽の光は吹き上がる灰色の煙に閉ざされ、向こう数年大規模な飢饉と寒冷化が周辺地域を襲うことになります。これは、主産業を鉱業から農業と工業に移行したモンテドーロにとって最悪の状態です。離散が確定的になるばかりか、他国からの侵攻も充分起こり得るでしょう」

「この場所は、大陸の東部と西部を陸続きで結んでいる唯一の要所です。だからこそ、モンテドーロはあらゆる国にとって目の上のたんこぶであり、同時に敵対勢力の防波堤でもあり続けました。その二重の性質によって、我々はこれまで中立を保つことができたのです。我々は、中立であることで他国に恩恵を与える唯一無二の地位を確立することができました」


 アレキサンドライトはいつの間にか、湯気立つ紅茶を片手に一息吐いていた。

 ……まぁ、それで精神が落ち着くのであれば良いだろう。

 彼女は今、モンテドーロ史上でも有数の分岐点で決断を強いられているのだから。


「この問題は、我々の生存だけではありません。大陸全体のパワーバランスの為にも、ジェムストーンマフィアはこの都市を存続させなくてはならないんです。現状はアルカヘストさんが仰った通りです。タイムリミットはあとどれくらいですか?」

「大体2日といったところでしょう。長くはありませんが、多少の準備を整えて再び金鉱に潜るくらいの時間はありますよ」

「分かりました、それでは——」

「まぁ待て。そう焦るな」


 ふと、全員の顔が上がる。

 嗄れた男の声だった。


「言ったろ。金鉱の扉を開けてはならねぇって。尤も、そこのお坊ちゃんが既にやらかしてたってんなら、その忠告も意味ねぇがな」

「アンドレアさん……どうしてここへ?」

「ボス。そりゃあ、決まってんだろ」


 手を組む為さ。

 老獪で、誰よりも面の皮が厚い男は平然とそう言い放つ。

 ペリドットは依然として、一人布団を見つめていた。

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