色・単なる識別

京極 道真  

第1話 識別

『どの色のTシャツ買おうかな。』僕は下北沢のショップで悩んていた。普通は即決だが、なぜか今日は悩んでいる。自分で自分が?だ。

『色は単なる識別番号と同じさ。』僕の頭の中で誰かの声。

僕は思わず答える。「しかしどれか1枚だけ買うとなると悩む。」

また頭の中に声が『青いTシャツは、空のように広い心で爽やか系。緑は自然を愛するECO系。白は誰にでも優しい博愛系。黄色とオレンジは元気系。黒は自分を隠す忍者系。まあ色によって人は変れる。化けれる。平たく言うと一時的に変身できる。

色は便利なものだ。だが僕の究極の結論は色は単なる識別する道具に過ぎない。』

僕は1枚3900円のTシャツでこんなに誰かに論破されるとは?いやまだ僕は何も言っていないぞ。誰だ。僕の頭の中で勝手に話す奴は。

『僕は君さ。』

『おい待て、いくら僕が人間嫌いで自分しか信用していない高校生だとしても

この昼間の人混みのイケてる下北沢のショップで妄想、白昼夢を見るのは勘弁してほしい。冗談だろう。』

『残念ながら冗談ではなく白昼夢でもなく、これは現実だ。』

『嘘だろう。』「お客様、どうかなさいましたか?」笑顔のいいお兄さんが僕に声をかける。「大丈夫です。」「そのTシャツいいですよね。色がたくさんあって悩みますよね。よかったら奥の鏡使ってください。」「ありがとうございます。」

僕はこのままショップを出ようと思った。が小心者の僕は、さーっと3枚Tシャツを手に取り奥の鏡へ向かう。

『お前は買う気あるのか?3枚も手に取って。』

『僕はTシャツを買いに来たんだ。』『そっか。どうぞご自由に。』

『頭の中の僕、君に言われなくても勝手に決める。黙っていてくれ。』

僕は鏡の前に立った。はじめは青、黄色、白。どの色もさっきの変な色の解説がついてきて変な感じだ。どれを選んでいいか、分からなくなった。

『どの色を選んでも同じさ。色は単なる識別さ。中身のお前は変わらないだろう。』

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