前日譚6 終【そして。】
"4日後"。
集落から逃げ出した、僕。
姉ちゃんに言われて逃げた僕は、今______
「てぇいまぁ〜!!お下がりのスカート見つけたんだけど似合いそうだから着てみて〜!!」
「……ししょ〜…ぼく、まだうごけない……」
__女装趣味の男、師匠に拾われめ、ふかふかのベッドで寝てる。
___________
あの後。
もう、走れなくなった僕は、小さな洞穴の中でずっと小さくなって、動けなかった。
疲れてるはずなのに、ずっと気が立ってて。ちょっとした音ですら反応しちゃって眠れないし、ずっと警戒した状態が続いた。
___しんじゃうのかな。生きて、って、言われたのに。
そのまま、昨日まで…だから3日間、飲まず食わずで。…いや嘘、途中で雨が降ったから、洞穴に入り込んできた雨水をちょっとだけ飲んだだけ。(泥の味がした、不味かった)
…まぁ、ほんともう、死にかけ。
でも昨日、足音が聞こえて、彼奴等の仲間かな、なんて思ってたら、迷うような足音じゃなくて、まっすぐこっちに近づくような足音が聞こえた後に
『___おーい、いるんでしょー。』
『僕はあの軍の奴らじゃないよ〜、いや信じれないだろうけど。でーておいでーーー』
女の人か、男の人の声かわかんなくて。
でも絶対、あの集落を襲った奴らとは違う人の声がした。
『…もしかして死んでる…??え、困る困る…血痕的に近くと思うんだけどなぁ…雨ほんと嫌い…血痕流すなよ、大事な痕跡なのに…。』
ぶつぶつ呟きながら洞穴に近づいてきたと思ったら、耳がキーンとするような声を出した。
『うっわぁぁぁ!!?!?!びっくりした!中にいるなら言ってよ!!も〜!心臓飛び出るかと思った〜!!!!!』
『……〜…。』
『ねぇ、うんとかすんとか言って〜。………あれまって、大分やばそうだね?え〜………まぁ、いっか。ちょっと失礼。』
____来たのは、黒い長い髪に、トロっとした蜂蜜みたいな色の目を持った人だった。
リボンとか、レースとかついたスカートとかシャツを着てて、甘い香りがしたその人は、僕を抱き上げた。
『うっわ軽い……なにこれ…。とりあえず今から君のこと連れてくね。あ、家に連れてくだけだから、君のこと殺すつもりはないよ。雑魚のこと殺す趣味ないし。』
僕もう、その時声も出せなくて。
まぁ、もう、なるようになれ…なんて殆ど諦めてたけど、師匠のお家についてからはもう、ほんと、ご飯とかお風呂とか凄かった。なにもかも良い匂いした。
いろいろ終わったらもう、警戒心とか抱くだけ無駄かなーって思った。
そしたら満足そうに笑ったあとに、ベッドに連れて行かれて、そのとき初めてお家をよくみた。
別に特別なとこなんてないお家だった。ただなんか、甘い匂いが凄くして、お腹がぐぅぐぅ鳴りっぱなし。
師匠が大爆笑したから、恥ずかしくなった。
『ひ〜!!おもしろ!さっきまで死にかけてたくせにすっごい腹鳴らすね〜!!最高だよ兎ちゃん!!』
『ぅ…』
『恥ずかしがんなくていいよ〜…っふふ、いやでも面白…あ、色々話すことあったの忘れてた。ごめん寝る前に色々お話して良い?』
そう言って、この後、師匠と色んなお話をした。
長くなるから、覚えてるとこだけあげると
・師匠の名前はハーシュ。理由があって僕のこと探してた。
(僕の名前はなんでかわかんないけど知ってた。)
・理由は言えないけど、あの襲った奴らと師匠は関係無い。
(むしろ師匠は多分、あいつらのこと嫌ってる?)
・このまま僕のことを弟子として育てたい。
・生きていけるだけの力と知識を僕につけてくれる。
ここらへんまでまず話してくれて、その後に師匠に色々僕が逆に聞いた。
『でしに、なるのは、いいです。でも、さきにおしえて、ほしいんです。』
『いいよ〜?何が知りたい?』
『えっと、あのくろいひと、は、なんですか。』
『いい質問だね〜!
あれはロスター王国…えっと、今僕らがいる国の、ちょーーっと特別な人たち。
軍ってわかる?戦う専門…っていっちゃ語弊あるけど、そんな感じの人達の中でも、特に強いやつら。
たぶん、ダンデスとかいう奴がいたと思うんだよね。知ってる?』
『…しっ、て、ます。』
『…その反応見るに、かなり怖い思いしたかな?ごめんね。でも彼奴が一番えらい人でね。それ以外のやつらは、まぁ…半分人間じゃない。ダンデスだけは人間なんだけどね。』
『…にんげん』
『…あ、人間もわかんないよね、ごめんごめん。君達と違って耳が頭の上じゃなくて横にある人たちだよ。僕とかね。』
『…復讐、したい?…あ、やり返したいかってことね。』
『…人にいやなことされてやり返すのは、おねーちゃんが、だめって…。』
『…うーん、でもね。酷なこと言うかもしれないけどさ、多分お姉ちゃん、そいつらに殺されてるんだよね。』
『…え?』
『お兄ちゃんもだと思うよ。…お母さんは知らないけど。まぁ確定じゃないけど、90%以上の確率で殺されてる。』
『___……』
『あはっ、信じたくないって顔してるね。…でも信じなきゃいけないことだからちゃんとしようね〜。』
『ま、それ以外に聞きたいことは?』
『……な、んで……。なんで、おねーちゃん、とか、みんな、ころされ、たん、ですか』
『うーん、存在自体が罪だからかな!』
『…え?』
『…まぁ理解できないよね!今はそれでいいよ。
でも実際これは、君が悪いわけじゃないってことは覚えておいて。。"僕ら"…間違えた、君のおばあちゃんとか、ひいおじいちゃんとかを生み出した人間が悪い。』
『…???』
『……難しいか!わかりやすく言おうね。
君達は悪くないけど気分とかの問題で殺された。』
『……うそ。』
『嘘じゃないよ。難しい話だけど、聞いてね。
君達は人間が死にたくないから"人外"の為の餌として生まれたし、時間が経って人間にとって君達がいらなくなった、邪魔になったから、君達は殺される。
君達は他の奴らの問題で殺された、ただの被害者。君達に問題は無かった。強いて問題を挙げるなら、"生まれてきた事が問題であり罪"なんだよね。』
『…………。』
『…で、やり返したい?突然のことだし、今結論出しにくいと『します。』……お?』
『やり返し、します。復讐します。』
『…はやいね〜、ちなみになんで?』
『きらい、だから。』
『にんげんも、その、じんがい?も、みんな、じぶんのつごう。』
『ぼくも、みんなも、ただいきてた、だけなのに。』
『それが、だめっていわれるなら、ぼくは、そのだめっていうやつらに、やりかえしたい。』
『____あっちが、じぶんかってにするなら、ぼくもする。』
『____さ〜いこう!!そういうの好きだよ僕、いいね〜、テイマー。…よし、じゃあそうと決まれば明日からやることが沢山ある。今日はもう寝よっか。』
『……うん。……おやすみ、ししょー。』
__________
___てなわけで、晴れて師匠に弟子入りしましたとさ。
いや色々突っ込みたくなるけどそこはまぁ、我慢。
「……ねー、それより、ししょー。」
「お洋服は大事なのに師匠悲しい…なぁに〜。」
「_____復讐、って、どうやればいいの。」
そう聞けば、部屋の外から呼びかけてきていた師匠がひょっこりと顔を出す。
「方法自体はいっぱいあるよ?でもそれを知る前に、テイマーは知恵をつけなきゃなんない。」
「…なんで〜?」
「頭が悪いやつは、足元を掬われる。足元を掬われちゃったら復讐どころじゃない。なんだって知ってて損は無いし、テイマーの助けに絶対なるものだよ。」
「……そーなの?」
「そーだよ〜。でも安心してよ、テイマー。
僕がいるから、君のことちゃぁんと育ててあげる。
ちゃあんと育てて、君の夢を叶えよう。」
「僕のこと頼って、強くなりな。」
「……うん。」
「_____じゃあ早速スカート履こうか!!!!!」
「やだ!!!!!!!!!」
白兎の夢物語、前日譚 終
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