仲良し?兄妹漂流記Ⅷ

舞波風季 まいなみふうき

第1話 色はどうする?

「じゃあ、お兄ちゃんは黄色ね」

「なんでだよ」

「だってお兄ちゃん、カレー好きじゃん」

「璃々香だってカレー好きだろ」

「女の子が黄色とかヘンだしっ!」

「別にヘンじゃないだろ、てか桃色以外は全部男だろが」

 などと俺と璃々香が小学生の兄妹喧嘩みたいなことをしている一方では、

「それじゃあ、私が桃色にしようかしら」

 と、ルミるんさんが言い、

「あ、お姉ちゃんズルい、私も桃色がいいのに」

 とユリりんさんが対抗するという、小学生の姉妹喧嘩の様相を呈している。

 少し離れたところでは、

「やれやれ……」

 と、泉の精霊が呆れている。


 そもそも、なぜこのような状況になったのか?

 それは先日この島に漂着した箱の中に入っていた物に起因する。

 最初に開けた箱には主に衣類が詰められていた。

 多くは女性の衣服だったのだが、箱の奥にコスプレ衣装が入っていたのだ。

 それは赤、青、黄、桃、緑の五色の衣装だった。


「これって……」

 璃々香が手にとって広げると、

「戦隊モノの衣装かしらね」

 と、ユリりんさんが言った。

「みたいね」

 ルミるんさんも手にとって見ながら言った。

 そして、面白そうだからという理由で、

「早速着てみようよ!」

 と、璃々香が言い出したというわけだ。


「じゃあ、俺が黄なら璃々香は何色なんだよ」

 俺が聞くと、

「決まってるじゃん、桃だよ!」

 腰に手を当てて何故かドヤ顔で言う璃々香。

「待って、璃々香ちゃん、私も桃がいいわ」

「私だって」

 ルミるんさんとユリりんさんも黙ってはいない。

「それじゃ、誰が桃になるかジャンケンで決めよう!」

 璃々香が拳を振り上げて言った。


「てか、着る必要あるのか?」

 俺が素直な感想を言うと、

「何言ってるの、お兄ちゃん!」

「え?」

「そうですよ!」

「ええ?」

「せっかくの機会ですよ!」

「えええ?」


 と、なんだかんだ、ああでもないこうでもないと、すったもんだした後で決まったのが……。


 赤 璃々香

 青 泉の精霊

 黄 俺

 桃 ルミるん

 緑 ユリりん


「それじゃ、決めのポーズよ!」

 赤い戦隊衣装を着てノリノリの璃々香が言うと、

「「おおーーーー!」」

 ルミるんさんとユリりんさんも、結構乗り気である。

「ふむ、仕方ないのう」 

 と、いやいや付き合ってやるという雰囲気を振りまいている泉の精霊だったが、その表情は青の戦隊衣装を気に入っているのが見え見えだった。


「それじゃ、いくよ!」

 璃々香が五人の真ん中で、天に向かって腕を伸ばし、

「五人揃ってぇええーー!」


 ビシッ!


「「「◯レンジャー!」」」

 璃々香、ルミるんさん、ユリりんさんの三人が声を揃えポーズを決めた。

 精霊さんも声は出さなかったものの、それっぽく構えている。


「ちょっとぉーーお兄ちゃんもやってよ!」

 璃々香が腰に手を当ててプンスカしている。

「ふむ、ゴリラ兄よ、これも中々面白いものじゃぞ」

 と、完全にその気になってしまっている精霊さんにも言われてしまった。


「それじゃ、もう一度。五人揃ってぇええーー!」


 ビシッ!


「「「「「◯レンジャー!」」」」」


「よし、決まったね!」

 璃々香はご満悦だ。

「じゃあ、お兄ちゃん」

「なんだよ」

「今日はカレー作って」

「はあぁ?」 

「いいですねぇ、カレー!」

「カレー大好きです!」

 璃々香の気まぐれ思い付き発言にルミるんさんとユリりんさんまで乗っかってきた。


「カレーって、そもそもカレールーがないだろ」

 俺はもっともな抗議をした。

「カレールーなら、あるよ」

「え?」

「さっき、残りの箱を見てみたら、カレールーが入ってたの」

「まじか……」

「ふむ、食材も似たものなら、この島でも見つかるぞ」

 と、精霊さん。


 というわけで、俺は黄色い戦隊衣装を着てカレー作りに精を出すことになったのであった。

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