多忙な日々はトラウマになりそうの巻

柴田 恭太朗

第1話

「風が吹くと……何がどうなるんだっけ」

「桶屋がもうかる。だろ?」


「ところが違うんだ、ウチの物置が半壊する」

「コトワザじゃないのか。そりゃ相当強い風だな」


「うん。しかも壊れた物置の中から巨大生物の巣が見つかった」

「なにそれ巨大生物って。ラドンの巣か?」


「巨大生物じゃなくて、危険生物の巨大な巣だ」

「言い間違い禁止。まぎらわしいだろ」


「危険生物を退治するために科学特捜隊を呼んだ」

「話を盛るのも禁止」


「ただでさえKACの締め切りが今日の昼だというのに。何も考えていない」

「まるでそれが仕事のようなこと言うな(笑)」


「しかも三題噺のお題である『誕生』『花粉』『防災』を入れなければならない」

「あー、それでお題をこなしたつもりか、ズルいことこの上なし」


「自主企画的には文字を出せばいいから、これでルールはクリアだ。さらに、KACのお題である『トリあえず』だが」

「うん」


「とりあえずエッセイを書いてしまおうと」

「エッセイ? これエッセイなのか? 会話劇に見えるけど」


「話し相手であるキミは、私が召喚した『イマジナリー相方』なのさ」

「架空の存在だったの、オレ? ちょっとショック」


「気を落とすなよ。キミはメジャーな存在じゃないか。ほら、書籍やマンガでもよくあるだろ、博士と助手が会話形式で解説を進める入門編みたいなヤツ」

「あるな」


「あれ、なぜあんな形式を採っていると思う」

「読者が読みやすいからだろ」


「それも多少ある。でも実はね……」

「うん」


「書き手のためなのさ。筆力がないライターとか、短時間に文字数をかせぎたいときとか、そんなときに便利なのが会話のやり取りで進行する解説文」

「なるほど、それでイマジナリー相方はちょっとボケていて、進行に都合のいい疑問を次々と提示したり、適度にまとめを入れてくるわけか。ちょうどこんな具合に」


「まったくその通り。素直な理解はストーリー進行にとって大きな助けになるよ。今、790」

「790? あ、コイツ文字数カウントしているな。メタ発言禁止!」


「ご協力ありがとう、規定文字数を超えました。今日は危険生物退治のほかに、オンラインミーティングが2件入っていたり、なんやかんやマジで忙しいのよ。ってことで、トリあえず」

「危険生物の正体を不明なままに放置しておいて、来たなトリあえず」


「トリあえず、公開ボタンぽち~っ」


おしまい

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多忙な日々はトラウマになりそうの巻 柴田 恭太朗 @sofia_2020

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