第2話 とりあえず付き合ってほしい、と言われても
『ねぇねぇ、これは使いやすそうだし、こっちは取り出しやすそうだし、どっちがいいかな?』
お店で
『あぁ、うん、どっちでもいいよ』
人に何かを買ってもらう行為というのは何でこんなにも気恥ずかしいだろう。
自分は物を買う時に部屋でじっくり選んで買うタイプ。お店で商品を比較しながら買うことも苦手だし、そもそも彼女からのプレゼントなら何でもいいかなって思ってたからそう言った。
『ちゃんと見て決めてよ』
『(選んでくれたものなら)何でもいいよ』
『そうちゃんの誕生日プレゼント選んでるのに、何でもいいって……』
俺は今、久々に女性物の買い物に付き合ってお店にいる。
アクセサリーとして売られている財布をみて、
ちょうど試着室の扉が開いた。
「総一郎君、これ、どうかな?」
そう言ってフリルがふんだんにあしらわれている白いブラウスに短めのスカートを履いた
「えっ……」
俺は言葉に詰まった。
素足の範囲が広くてちょっとドキドキしてしまう。
あまり足を見てはいけないと、そのせいで彼女の姿をろくに目に入れることができなかった。
「似合うかな?」
洋服に興味がないし、流行もわからない。
自分の洋服も似合うのかどうかも意識したことが無くて、俺は動揺した。
何か言わなければならない。そこで先ほどの
「……俺はその恰好、いいと思うよ。どこがどんな感じで良いは説明できないけど」
「じゃあ、コレ買おうかな。総一郎君が責任取ってくれそうだし」
せ、責任!?
どういうことだ?
俺は目線を泳がせていると、試着室のカーテンを閉める前に少し笑って言った。
「総一郎くん、冗談だよ」
さきほど試着した洋服を片手に
「ありがとう。総一郎君はもしさっきの服を彼女が着てたらどう思う?」
難問の質問ばかり送ってくるなぁ。
基本的に女性の服は褒めたほうがいいと思ってる。何でも褒めすぎるとみてないって怒られることもあるから取り扱いは必要だが……また苦い思い出が出てきた。褒めるをパスして俺は一般論的な感想を述べた。
「女の子の服ってよくわからないんだけど、基本的に彼女は何着てても可愛いって思うかな」
「……えっ、総一郎君、彼女いるの?」
「……いないよ……振られた」
自分で言葉を発しておいて、ぐりっと精神的な古傷が
「そう。あ、……総一郎君の彼女は何着てても可愛いって思ってもらえるんだ? ちょっと想像しちゃった」
買い物も終わって2人で公園に移動した。
俺はペットボトルに口をつけながら、
そう、彼女とは友達になってと言われてから連絡先を交換し、何度か誘われて今日は3回目の交流になる。
結局、振られたことを考えたくない俺は彼女とのやりとりすることで時間をやり過ごしていたんだ。
「あの漫画がねー」
ベンチに隣同士で座っていた俺たちは顔を見合わせて話す。
彼女の話に合わせて相槌を打つ俺に
「どうしたの?」
俺は静かになった彼女に聞いた。彼女はじっと俺の顔を見て言った。
「総一郎君のことが好きです、付き合ってください」
す、き?
俺のことが??
固まったままの俺に
「優しくて思いやりがあって……、総一郎君の彼女にしてほしいの」
優しい?
思いやり?
そんなつもりが一切なかった俺は自分の行動を思い返した。
もしかして彼女は俺の帽子を渡すために待ってたとか、元カノを思い出して地雷を踏まないようにしていた俺の発言を聞いて思いやりと思っていたのではないのか?
それは……振られたことを考えたくない俺の行動から起きた副産物というか、俺が考えたことなのか?
「あのね、嫌いじゃなければ、とりあえず付き合わない?」
とりあえずか。
「……
「今は……?」
「うん、今は。振られたっていったでしょ? ちょっと考えたいんだ」
「わかった。遊びにはまた誘ってもいいかな?」
それは……俺はいいけども。
「あ、うん。それは問題ないよ」
でも俺はやっぱり『とりあえず』付き合うのはちょっと……。
偶然にも俺たち二人を
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読んでくださり、ありがとうございます!
今後の作品を書く上で参考にさせていただきたく、どんなことでもいいのでよかったらコメントで読んだ感想を教えてもらえると嬉しいです。
とりあえず付き合ってたという彼女に振られて出会った女の子と元カノが俺を取り合ってどうなる? MERO @heroheromero
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