とりあえず付き合ってたという彼女に振られて出会った女の子と元カノが俺を取り合ってどうなる?

MERO

第1話 とりあえず付き合ってたといわれて振られた俺

「別れよ」


「急に何で?」


「急じゃないよ、誰かと付き合ってみたくて総一郎そういちろうととりあえず付き合ってただけだから」


 俺は彼女であった莉乃りのの言葉を聞いて、頭が真っ白になった。

 今、なんて言った?

 つまり、俺は彼女からそもそも好かれていなかった上に振られた、そういうことか……。


 ◇ ◇ ◇


 公園で彼女と話した後のことはあんまり覚えていない。

 いつの間にか家に帰ってきて俺はそのまま寝てしまったらしい。

 というのも、俺は朝起きるまでそれは夢か何かだと思っていた。

 スマホのSNSツールを確認するまでは。彼女とのトーク画面は会う約束をした昨日で止まっており、一切チャットは来ていない事実を確認し、やっと俺は彼女に振られたことを自覚した。


 その瞬間から鬱々とした気分で世界は黒くなった。

 部屋の中にあるぬいぐるみを見れば、彼女と一緒に取った思い出を思い出し、机には彼女からもらった写真立てとその中には彼女との写真が入っている。


 うわゎわわわわ


 俺は声にならない声を頭の中で上げた。

 この部屋にいたら発狂すると手元に見えた薄手のブルゾンを片手に外に出た。


 行く当てもなく、俺は電車に乗り、駅前をふらふらとしていたが3月なのに冬のような北風を浴びて、しょうがなく近くの商業ビルに入った。

 入口あたりでカップルを見かけて、彼女と別れたことを思い出してまたオカシクなりそうになった。


 やばい、このままでは考えてしまう。


 そう思った俺は久々にやってきたこのビルのフロア案内をみながら、変わりきったビル内を全部見て気分転換をしようと決めた。上からレストラン、貴金属品、食器・家具…と見ていき、隣接するホール会場でのイベントが目に入った。自分もよく見ていたアニメのミュージカルがそこでやっているらしい。俺は興味が出てきて、そのホールに向かった。


 ホール会場は入口から人の出入りが多く、グッズ売り場に長蛇の列が並んでいた。どうもこれから上演するらしく、今まさに人がホールの広場を行き来している状態で人で溢れてかえっていた。

 

 俺はその人だかりを避けてその先の通路に向かった。確かこのホールは一周回れたはずだ。途中にあるマップで場内を確認する。思った通り、裏側もぐるっと回れると思った所で足元に白いものが見えた。よくみると、それは布生地のキャップ型の白い帽子で、ちょこんとそこに落ちていた。俺は少しだけ近づいて様子をみた。帽子の右横に「Lilly Lilly」とオシャレなフォントで刺繍が入っていた。


 そのうち、誰か取りに来るだろ。


 そう思った矢先に、人がこの通路にも増えてきた。


「今日の出演者、カイト様らしいよ」「えーーーすごくない?」「それほんとの情報?」「ほんとだってば」

「ほらSNSで書いてある」「ほんと」「この先の部屋で出待ちしたら会えるかな?」


 黄色い女の子たちの声が方々から上がっている。

 俺はその様子をみて、スマホでSNSをチェックした。

 どうも今日は有名な2.5次元アイドルがここで主演として出るらしい。そういうことが書かれていた。俺はそれらの情報をスクロールしてみていくとその中に『すみません。今日、XXミュージカルの会場で白い帽子を落としました。誰か見かけたら教えてくれませんか』という書き込みをみつけた。


 もしかして……俺は目の前の帽子を見て、その投稿にリプをした。


『白い帽子、みつけたかもしれません』


 その数分後、DM《ダイレクトメール》がやってきた。


『あの白い帽子はどこにありますか?』


『A通路のマップがある場所です』


『ありがとうございます、そうなんですね。ただもうミュージカルが始まるので後で取りに行きます』


 俺はその相手の様子を受けてそうかと納得したが、このまま帽子を残したままでここにあるとは限らないのではと思い、相手に提案した。


 まぁ、どうせ時間あるしな、それに……家に帰っでもどうせろくなことを考えなさそうだからこのままここで時間を潰すか。


 相手のためというより自分のために――そんな気持ちで返信をした。

『よければ拾って持っておきましょうか、ミュージカル終わったら渡しますよ』


『いいんですか? そうしてもらえると助かります!』


 俺は思い返した。ミュージカル終わるまでって2時間あるなと。

 ま、いっか。ビル内をまた散策したら時間はすぐだろうし。

 そうして2時間後、俺はホールに戻ってきた。

 途中で帽子に入っていた刺繍名を検索すると、どうやらその帽子は有名なお店ものらしかった。


 終わってから相手から連絡があった。


『今、向かってます!』


『わかりました、帽子を手に持ってますね』

 

 現れたのは小柄で目が二重の鼻筋が通っているポニーテールの女の子。

 

「帽子を預かってくれた方ですよね? ありがとうございます!」


「いえいえ、よかったですね、帽子見つかって。はい、どうぞ」

 

 俺は彼女に帽子を渡した。


「すごく大切にしている帽子で。ほんとに助かりました!」

 

「そうなんですね、それはよかったです、じゃあ」


 そう言って立ち去ろうと俺はした。

 そこで彼女が「あの、ミュージカル見に来たんですよね?」と聞いてきた。

 

「いえ……通りすがっただけのもので……」


 俺はそう言って自分に対して”何でミュージカル見に行かない奴がここにいるんだよ!”と突っ込んだ。

 そんな奴が帽子を持って2時間いるって……キモくね?

 恥ずかしくなってどんな風な顔をすればいいだろうかと考えながら顔を上げると彼女は驚いた様子で言った。

 

「……もしかして、帽子を渡すためにミュージカル終わるまで待ってくれました?」


「あ……いや、そういう……」


 失恋して落ち込んでいたから、時間つぶしのためにここにいました、なんて言えるわけもなく、俺はしどろもどろに答えた。


「そんななんでそんなに親切なんですか……。ほんとにありがとうございます! すごく嬉しいです。あのよかったらお礼をさせていただけませんか?」


 それが帽子を落とした彼女、立花綾香たちばなあやかとの出逢いだった。


--------------------------------

1話目の投稿を書き終わってから全部消してしまって2回目を書きました(泣)

この先、総一郎はどうなっていくんでしょうかね、とりあえず投稿します! 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る