こちと そら

串サカナ

続編「こちと そら」

続編「こちと そら」に来てくれてありがとう。私は刑事部捜査一課の小牧と言います。

これから私と一緒に事件の全貌を突き止めましょう。

まず、先ほど読んでいた容疑者の内容を聞かせてください。


なるほど、そんなことが書いてありましたか…気になる所が何個かあります。

最初に一人目から三人目と殺した。と書いていたのですよね?それはおかしいですね、殺されたのは一人だけです。しかも証券会社の男でもなければ、銀行員でもありません。35歳の普通のサラリーマンです。

私たちの手許にも一人目、二人目、三人目と書かれた紙はあります。我々も最初はこれが犯行に関係あると思ったのですが、実際に起こったこととは異なるので、参考材料から除きましたが、容疑者の証言を聞いて、改めて読み見直そうと思います。


もう一つ気になることがあります。容疑者は所々主語を『俺ら』と言っていましたよね?

『俺ら』ということは複数いることになります。そうなると複数人の犯行になります。

一人目、二人目、三人目…

何かわかりました?閃いたような表情をしていましたが、良ければ聞かせてください。


なるほど。二人目の所だけやけに短くて無駄のない書き方ですもんね。

よく見ると、一人目、二人目、三人目と書き方が異なりますね。これは“わざと”なのか

もしくは三人違う人が書いているのか。

一人目はとても細かい所まで書いています。二人目はとても端的です。三人目は一人目までとは言いませんが細かく書いています。

容疑者の証言で『俺ら』と言っているので複数人の犯行には間違えないでしょう。


最後に『今生きているお前の人生も、もしかしたら違う誰かの人生なのかもしれないよ』という所です。これは貴方に向けたメッセージなのでしょうか?それとも誰かの人生を生きたかったという願望なのでしょうか。


これは経験談。なるほどその考えはなかったです、流石です。もしこれが経験談だとすれば今も誰かに生かされているのですかね?そうなると今取り調べを受けている容疑者は、犯人ではなく、別の誰かが犯人で本当犯人から濡れ衣を着せられていることになりますね。

ここまでが真実ならば、先ほど貴方が読んでいたものは信用できなくなりますね。

あれから色々調べたのですが、特にこれといったものはありませんでした。

何か発見できましたか?


その見解は面白いですね。一人目と三人目は具体的で細かいことが書いてあったので、誰かの実際の生活である可能性は多分にありますね。それが本当なら一人目は、大手証券会社の課長。三人目は政治家です。二人目は実際の生活ではなく、他人の生活ですか?

先ほど出た見解では、濡れ衣を着せられているという事でした。二人目がその対象の人ですかね?


違いますか、二人目は被害者で一人目と三人目が犯人である。今そうおっしゃいましたね

ですが二人目が被害者ならば、サラリーマンでなければいけないのですが、これを見ると銀行員と書いてあります。

『二人目。

今年35歳になる銀行勤めの私は毎朝のルーティンであるランニングをしている。

会社には9時に出社するので家を8時半には出なければいけないので、7時から朝のランニングを20分ほど行った後会社に行く支度をして、8時半には車に乗り会社に向かう。

8時50分頃には駐車場に着くのでそのまま歩いて会社に向かう。次に銀行から外に出るのは退社時間の18時半で、朝の9時から18時半の9時間半銀行からは出ない。

私の平日はこんな具合だが、休日は家でのんびり過ごしている。』


35歳の銀行員…。あれこれ被害者の年齢と同じ35歳です。もしかしてここの銀行員の所をサラリーマンに変えれば、被害者の事なのかもしれません。そうなると、二人目が被害者。

一人目、三人目が加害者になるのであれば、犯人は『株式会社日当証券』の経理部課長と千葉県の地方政治家。早急に身元を特定します。

はい。まだ、何かありましたか?


実際に殺したのは一人目と三人目かもしれないが、もう一人共犯者がいるということですか?それはなぜですか?


一人目と三人目に書いてある、中華料理屋「華中」に入ったと書いてあるのに、外の看板前で財布を確認するシーンと『急に外出することがあるので計画的に行動をするのはやめた方が良い。』これは誰かに向けた伝言であるということですか、その伝言はもう一人の共犯者に向けのものだった。その共犯者というのは誰ですか?


その共犯者は、加害者である35歳のサラリーマンを調べる仕事を任された。

しかし、残りの二人は殺される所を誰かに見られてしまい、仕方なく誰も殺していない彼を濡れ衣として警察に突き出したということですか、確かに今取り調べを受けている彼は自首してきましたからね。ですが、その共犯者に向けた伝言というのはどういう意味なのでしょうか?


なるほど。加害者はよく中華料理屋「華中」行っていた。それを伝えるためにこのような変な書き方をすることで、そこに注目して欲しかった。それに計画的な行動はやめた方が良いというのも、共犯者に伝えたものだったのですね。てなると容疑者は三人で今取り調べを受けている彼が、被害者の調べ役ということですか。しかし他の二人も被害者の行動を知っている感じでしたね。一人目と三人目は被害者のことを少し調べていた、そこで分かった行動をもう一人の彼に伝えた。そして彼は詳しく被害者の行動パターンを調べ上げて、その行動パターンを元に残りの二人が犯行に及んだ。事件の真相が見えてきましたね。我々は容疑者と思われる、証券会社の男と政治家について調べてきます。後、これ今取り調べを受けている彼の情報です。

刑事から二枚の紙が渡された。そこにはこのようなことが書いてあった。

一枚目『千葉県出身の小笠原 亮。

    無職の35歳 3回の取り調べの内すべて黙秘している。

    これといった有益な情報はなし』


二枚目『被害者 大原 大輔。

    千葉県出身の35歳 千葉県でサラリーマンとして働いていて、千葉の実家で

奥さんと三歳の娘と暮らしている。何者かに首を絞められて死亡。』


翌日。

二人の身元が分かりました。一人目は千葉県出身の加藤 健太。年齢は35歳で証券会社に勤めていましたが、1か月前から行方不明です。実家のある千葉県に行き、色んな話が聞けましたが、特に事件に関係あるようなことはありませんでした。20歳を超えた頃から東京の方で一人暮らしをしていたらしく、東京の家からはこんなものが出てきました。


『決行日。

今日はいつもと違いトートバックを持っている。彼はいつも通り家を出て最寄り駅に向かう道を歩んでいる。その瞬間横から猛スピードの車が飛び込んで来た。ものすごい音と人が倒れている事を確認した私は、急いでトートバックを持ちその場を後にした。


今日は売り上げの集計を行う日である。いつも通り7時に家を出て、朝のランニングに出かける。外は少し曇っていて辺りが暗めではあるが雨は降っていないので普段通り走ることができる。彼の前を歩いていた私は、人にぶつかり倒れてしまう。

痛そうにしていた私に彼は近づいてきたので、手に持っていたナイフで彼を刺した。


地方銀行員のはずなのに、高い時計と高いアクセサリーも着けて、フラフラと警戒心0で外を歩いている。後ろを付けていき、人気の少ない森の近くで後ろから襲い掛かり、二人掛りで首を絞め、殺した。』


もう一人の政治家の人も特定できました。千葉県出身の35歳 田淵 翔太。千葉県の地方政治家をやっていて。地域の方との交流を大切にしていて、周りの評判はとても良かった。

これといった有益な情報はなし。以上です。何かわかりますか?


四人には共通点がある?詳しく教えてください。


確かに、四人とも千葉県出身の35歳ですね。それがどうかしましたか?


確かに、偶然とは考えにくいですね。もう少し調べてみます。もう一つあります?


なるほど。この決行日と書かれていたことが事実かどうか調べて欲しいということですね。

分かりました。任せてください。もし事実ならば四人の内の誰かが被害者になるということですね。


二日後。

色々分かりました。まずこの四人は同じ千葉県の高校出身でした。

そして、10年前に千葉県で人と車の衝突事故がありました。そこで被害にあったのは今回殺された、大原大輔でした。救急搬送されましたが一命を取り留めています。


二つ目の刺殺事件と思われるものは見つかりませんでしたが、大原大輔を解剖した所、腹部に傷があったことが判明しました。


三つ目の絞殺事件は今回の事件の事でしょう。前にも大原大輔を銀行員に見立てていたので、今回もその類で間違いないでしょう。

一旦これらの情報を元に、取り調べを受けている小笠原亮に問い詰めてきます。


翌日。

小笠原亮、ついに自白しました。やはり犯人は加藤健太、田淵翔太、小笠原亮の三人でした。そして、貴方が言っていた通り、大原を殺したのは、加藤と田淵だそうです。小笠原は大原の尾行役でした。そこで彼らの過去について聞いてきました。今回の犯行の動機について、書いてあるかもしれません。良ければどうぞ。

小牧から紙が渡された。


『 ~容疑者達の過去~

 私たちは同じ高校に入学した。千葉県では二番目の偏差値を誇る高校である。

 入学式で大原大輔、田淵翔太、小笠原亮と三人と出会う。全員同じバスケ部に入り、

部活帰りの放課後ではよく田淵家の近くの公園でよく遊んでいた。

高校二年になると、学校にも慣れ始めて、大原には彼女ができた。大原はよく女の子から好かれていた。高2の夏頃には俺も彼女ができた。

そして高2の冬、女癖が悪くなった大原は、クラスの複数の女子たちを股にかけていた。その標的になったのが俺の彼女の璃子だった。大原は友達だったから最初は軽く見ていたけれど、璃子がボロボロになって下校している所を見かけたときは、すぐに大原を疑った。しかし璃子は転んだだけと言っているし、大原も手を出すような奴ではないことは知っていたから、転んだと思っていたが、今思えばあれは確実に暴行されていた。


それから璃子と会う回数が減っていき、高3の春璃子から別れ話を持ち掛けてきた時はすぐに「大原のことが好きなのか?」と聞いていた。璃子は黙っていたので、あいつはやめた方が良いと、すぐさま言ったが聞かなかった。璃子は大原と付き合い出したのだ。

それでも大原の女癖が悪く、見る見る璃子の体は細くなっていた。流石に我慢できずに俺は大原に怒った、「その女癖いい加減にしろよ!璃子がかわいそうだろう!」

大原は反省していた。形だけの反省はもう飽き飽きだ。手が出そうになったが田淵と亮が止めてくれた。「お前が手を出したら、大原と同罪になっちまう。それだけは避けるべきだ。」どうしたらいいのか分からなくなった。田淵と亮は大原と縁を切って、璃子ちゃんを無理やりにでも連れ出そうと言っていたが、俺にはそんなことはできない。

高3の夏休み前から受験があるからと言って、璃子と大原は別れた。大原が振ったらしい、受験があるからなんて嘘だ。大原は璃子に対して本気じゃなかった。だから振った。

璃子はそれに気づいている。


音楽室で泣いていた璃子は最後にこんなことを言っていた。

「これは全部私が悪いから。大原君を好きになってしまった私が悪い。健太には申し訳ないことをした。ごめんなさい。こんな私を好きになってくれてありがとう。こんなに好きでいてくれる健太の側にいたら、幸せだろうな。でも、私は大原君が大好きなの。だからさようなら。」

璃子は泣き震えながら、四階に位置する音楽室の窓から飛び降りた。 』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

こちと そら 串サカナ @kkawa3128

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ