まず、このリアルさは現役高校生にしか書けないだろうなと感じました。もし私が同じ舞台で書いたとしても、あの頃を思い出しながら書いたものになってしまい、このリアル感は絶対に出せません。この作品に引き込まれたのは、丁寧に綴られた心理描写と巧みな構成力のせいでしょう。また、作者が言葉選びのセンスに溢れているので、無駄がありません。月並みな言葉になってしまいますが、完璧な作品、傑作だと思います。
この作品の作者は、現役高校生だと言うが、それが事実ならば……。それが事実ならば、敢えて言えば、「既に出来上がっている」かもです。実に、きめ細かい心理描写と、話す主体は、話毎に、変わって行きますが、それでいて、ストーリーに連続性があるので、思わず、引き込まれて行きます。多分、この話は、現役高校生でしかないと、書けない作品かもです。
高校生の高校生による高校生のためかどうかわからない物語。たぶん、「ため」ではないのだろう。共感性を慎重に避けた登場人物たちによるひとり語りは、上級者のビリヤードのように次々と運動エネルギーを受け渡していく。彼らのリアリティは、離れたところから俯瞰する僕ら読者をも浸食してくる。楽しいとか癒やされるとかの対極に揺さぶられる僕らの心は、その抜き型で、語られていない幸福や平穏を想像するのだろうか。問題作、といってもいい佳品。踏み込んだ物語を読みたい方には強くお奨めする。