トリあえず

樹 亜希 (いつき あき)

悩んでいる場合じゃない

 あのね、簡単に任せられても、どうにかなるという感じではない。

 とにかくあすの誕生日までに、誰かと結婚しないと死んでしまうと、急に

現れた疫病神に宣言された。そういえば、歳が明けてからは、冷蔵庫が何の前触れもなく、フェードアウトして壊れた。夕食に冷凍ピラフを食べようと、取り出したら、あろうことか、全部解凍されていた。

 朝はなんともなかったのに。

 うそでしょ。

 冷蔵庫の中の物は全部捨てないといけない。

 次は自転車を持ち上げた時に、肩にかけたリュックが隣の自転車のハンドルに

引っかかり、私は一人で倒れかけて足をくじいた。

 

 これで二つ目のトラブル。

 病院では亀裂骨折と言われてその日は入院して検査と点滴の痛み止めの処置をされて、次の日は一人松葉杖でマンションの部屋に帰ると、知らないおじさんが座っていた。


「不審者ですか」

「まあ、とりあえず、オートロックなんで、ここまで入れたら不審者というよりもそれ以外の存在というのが正しいと思いますよ。鍵は2本しかないし、管理人も管理会社も入れない。あなたの持つ鍵と、あなたのお父さんが持っている鍵の二本ですね」

「じゃあ、あんたはなんなの?」

「ただの貧乏神、というか、疫病神です」

「普通のおじさんじゃないですか」

「見た目はね」

「いかにも、アニメで見るような感じだと誰が見ても驚くじゃないですか」

「まあ、そうですね」

「藤原里依さん、トラブルがこれで2つ目ですよね。次のトラブルであなたは死にます」

「え? それ、やばい」

「はい、やばいです。疫病系の割に親切だと思います」

「で」

「はい、なのでとにかくこの厄災から逃れるには、結婚しないと」

「へ? 結婚」

「名前を変えるんです。字数が悪いから」

「あ、そんな簡単な。じゃあ、名前変えたらいいじゃないですか」

「でも裁判所に行って名前を変えるのは時間がかかります。その間に死んでしまうかも知れませんよ」

「ええ? それはイヤだから、あなたと結婚するしかない」

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トリあえず 樹 亜希 (いつき あき) @takoyan

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