とあるバウンティハンターの苦悩
かげのひと
とあるバウンティハンターの苦悩
俺は一流の
つまるところ、逃亡者を捕まえて金を稼ぐのが仕事だ。
もちろん非公式・非合法のものではない。
なにせ、俺は政府公認の腕利き賞金稼ぎなのだ。
そして、今日もボスから指令が下る。
「トリを持ってこい」
「トリ、ですか?」
トリ──とはなにかの隠語だろうか?
俺の頭にクエスチョンマークが飛び交う。真面目な顔をしたボスが「このトリだ」と一枚の紙を俺の前に差し出した。
それは【3/21 11:59締切】KAC2024 第6回お題「トリあえず」と書かれ、大福に鳥の着ぐるみを着せたようなキャラクターの写真が添えられている。
ザッと資料に目を通した俺は、戸惑いの目を向ける。
「なんですか、これ」
「このストラップが今回のターゲットだ」
「いや、ターゲットだ……って。そんな良い声で言われても」
「頑張れ」
「いや、頑張れって……え?」
「くれぐれも他の作家さん達に迷惑をかけないように、公式のルールを守ってだな」
「いやいや、これ抽選じゃないですか。しかも100名ですよ。もらえるの完全に運じゃないですか」
「運も実力の内だ。お前には期待している」
「良いこと言ったぜ! みたいな顔でこっち見るの止めてもらえません?」
ツボに入ったのか、机の上で両肘を立て、口元を両手で隠しながらしゃべるボスの肩は小さく震えている。
「ほら、お前。昔は物書きになりたかったんだろう? ちょうどいい腕試しだとは思わんかね?」
「は? なんで、それを……!?」
「部下の黒歴史……もとい素性は洗いざらい調査済みだ」
「いま、黒歴史って言った? 人の過去を調べといて黒歴史って言った?」
「辺境スローライフ×ハーレム×無自覚最強……ふむ。今、若い子にこういうの流行ってるんだろう? いいじゃないか」
「コロス!!」
口と同時にナイフを投げる。しかし、ボスは少し首をずらしただけでナイフは壁に飾ってあった絵画にサックリと刺さった。
「まぁまぁ、この件もお前の腕を見込んで頼んでるんだ。まぁ、一つ頑張ってくれないか」
にこやかな笑みを浮かべるボスだったが、この時まだ俺達は気付きもしていなかった。
『皆勤賞』『第1~8回のお題すべてに参加したユーザー』に『抽選』。
第6回だけ参加しても意味がないと言うことに。
トリあえず。
トリ、会えず。
──おあとがよろしいようで──
とあるバウンティハンターの苦悩 かげのひと @ayanakakanaya
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