パン
雨の日にふわふわの半斤を購入。パン屋の少し頼りないビニールに入って、赤子のほっぺたみたいな不安な気配で自転車のかごへ入れた。となりでトマトがくらくらよろめき、きゅうりがぼうっと手提げからはみでたまま、慣れた道を帰る。
もうすぐ梅雨どきで、ごはんには少し気候が重い。そろそろ首が下がってきた田んぼの泥道が細いタイヤを汚した。
「ただいま」
同居猫二匹が顔を出し、なんだ無事かと言った顔でブランケットへ潜り込んだ。「ちゃはち、くろぶち、ただいま」声をかけたら黒しっぽだけがぴくりと返事をした。買い物袋をシンクに上げ、手洗いうがいを先ず。「さて」お腹はそんなに空いてないから、先ずラジオをつけて、名前も知らない歌手を聞く。次にシンク前の窓を開く。しめったくちなしの香りが少し邪魔っけだ。パンのビニールを開いた。いい食パンは緊張感がある。まっしろな気泡に指の跡がつくから。トースターへ入れる。バターを冷蔵庫から取り出し、トマトときゅうりはスライス。トースターから薄く蒸気が上がると、小麦が鼻先で生き返る。
もう一度冷蔵庫を開ける。ちゃはちが足元まで駆け寄ってきた。「だめ」ハム欲しさですりすり濡れた足にすりついて、少し邪魔っけだ。
猫を構いながらトーストにバターと酸っぱいマスタードをぬり、ハムときゅうりとトマト。非常にシンプルに仕上げました。
布団をあげたこたつでかじりついた。少し濃いきつね色、歯ざわりは軽快。厚切りの内側からゆたかに蒸気と甘い香り。舌に焼色がつく頃、マスタードがきりっと効いた。トマトの味、きゅうりの歯ざわり、少しがたがたぽんこつじみていたけれど、週に一度の贅沢トーストです。
味わう 「まつくまかな」 @kumanaka2023
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