トリあえず

チャーハン@カクヨムコン参加モード

お料理!

「さぁさぁ、ついにこの日がやってまいりました!!

 第一回鳥種族限定お料理対決!!

 主催は私、カラス太郎がお送りいたします!!」


 銀色に光るマイクを黒い体毛に覆われた顔に近づけながら、司会服姿のカラスが甲高い声で煽る。直後、会場の客席に座っていたギャラリーが鳴き声を出しながら共鳴反応を示した。


「ありがとうございます、みなさま、ありがとうございますっ!!

 それではさっそくお料理のほうを見ていくとしましょうっ!!

 

 エントリーナンバー1番! 流星のごとく現れたフクロウ界の新生!

 フクロウ丸のお寿司だ!」


「皆様、今日は私のお料理に舌鼓をうってくださいませ」


 フクロウが深々と頭を下げると同時、審査員たちが一斉に寿司を口にする。

 もぐもぐと味わった後、各々点数を出した。


「5点、5点、6点! 合計16点です! 30点満点の中だと少し不服か!?」

「な、なぜだ。私の寿司は完璧なはず……」


 フクロウがうろたえていると、審査員がおのおのコメントを出す。


「毛が多すぎて食えない」

「醤油使いにくいし」

「そもそも味が合わないねぇ」


 フクロウは肝心なことを忘れていた。けがはいる可能性を見落としていたのだ。


「そ、そんな……味じゃなくてそこで負けるなんて……」

「勝負ってのはそういうこともありますからね! さぁさぁ次に行きますよ!!」


 カラス太郎はそういいながら次々と司会進行を進めていく。出場者5人のうち、4人が拮抗している中、最後の1人となった。


「さぁ、物語もラストとなりました! ラストはこの人!

 種族不明のとりこと、トリあえず!」


 トリあえずと呼ばれた料理人はぺこりと頭を下げた後、観客席に手を振った。余裕があるような印象を抱かせる中、彼のお料理紹介が始まった。


「私が今回作ったのは、皆さんおなじみのから揚げでございます。仕入れたお肉を丁重に扱い、適正温度で油揚げを行う事でぱりぱり触感かつ中はトロリといった唐揚げを制作出来ました。ぜひともご賞味ください!」


「ほぅほぅ、それは楽しみだ。それではさっそく――」

「いただくと」

「しましょうか」


 審査員たちがそう言いながらから揚げを口にする。数秒間味わい飲み込んだ後、彼らは各々点数を入力した。


「さぁ、結果が出たようです!! 採点は!?」


 五月蠅いドラの音が響いた後、点数が表示された。そこにかかれていたのは、全員0点という数字だった。トリあえずは驚愕した。そんな点数になるとは思わなかったからだ。


「なんでですか!? 私の料理はそんなにまずかったんですか!?」


「なんでって言われてもねぇ」

「倫理観、っていうかねぇ」

「味じゃないんだよねぇ」


 それを聞いたトリあえずは肝心なことを忘れていたことに気が付いた。ここはトリが料理を品評する大会なのだ。いくら自分がうまくできるものを持っていたとて、相手に評価されるものでなければ意味がないのだ。


「くそっ……俺はなんて、未熟者なんだ……」


 トリあえずは床を見つめながら悔しそうな表情を浮かべていた。


 後日――彼はお料理をさらに極めるべく、武者修行に出ることになるのだが……


 それはまた、別のお話。

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