未完の小説

龍川凡流

で、お前は物語を完成させたのか?

 あぁ、あれは受験前のこと。


丁度“なろう系”と称される小説群をバッシングすることがトレンドだった時期だ。


愚鈍な私はそれらの小説を直接読みもせず、過激なレビューを上げる動画投稿者の言


葉を真に受けていた。


そしてそんな作品の作者を、頭が悪いからそんな矛盾だらけでつまらない小説を書い


てしまうだろうと嘲笑した。


何とも悪趣味で、性格の悪い男だろうか?


そんなドス黒い感性を内に留め、インターネットという電子の海に放出しなかったこ


とだけは、過去の私に賞賛を送りたい。


……まぁ、たった今曝け出しているのだが。


ここまで来たら痛々しい文章全開でいかせてもらおう。


  

 そんな中、私の中にある考えが浮かんだ。


「あの程度の小説で書籍化・アニメ化されるのなら、自分の物語はもっと賞賛されるに違いない」


何とも傲慢で身の丈知らずな考えであろうか?


だが、その時の私はイキり全開。


本気で世界を驚かす名作を書けると思っていた。


自分で小説を書いた経験は無いくせに。



 小説を書くのは存外楽しいものだった。


他にさした娯楽は無かった為、暇さえあれば物語を書き綴っていた。


「あんな小説でも賞を取って何万部も売れてるんだ!俺はそれを超えられる!」


この時の私は本気でそう思っていた。



――読まれない


自分の小説は読まれなかった


どれだけ趣向を凝らした文章も、設定を凝ったキャラクターも


――読まれない、ブックマークも付かない、コメントも書かれない


更新したところで、数多の小説が自分の魂の作品を覆い潰す


これでは自分の小説は存在していないも同義ではないか?


私はここで漸く気づいたのだ。


世間で馬鹿にされていた小説たちは、各作者たちが厳しい現実を乗り越え、


頭角を現したものだったと


自分が散々見下した者達は、私より遥か上にいたことを


……というか、そもそもお前はその内の一つでも読んだことがあるのか?


 レビュアーが『つまらない』と称したら


 その作品は『つまらない』ものになるのか?


そもそもお前は物語を完結させたのか?


読まれないからと嫌になって、お前はもう三つも小説をエタらせた


そこには数は少なくとも、続きを楽しみにしていた読者がいた筈だ


お前はそんな読者を失望させ続けていないか?


――お前はいつだってそうだ


他者から多大な評価を得られないからと、好きだった筈のことを直ぐに投げ出す


何も成し遂げられない、今もダラダラと夢を追い続けている


だが、それが実を成したことがあったのか?



……もう分かるだろう?


お前は現在進行形で“黒歴史”を作り続けている


止めどない無様さを世界に垂れ流し続けている


そろそろ成長したらどうだ?


本気で“夢”を追いかけるのか、叶わない“夢”を投げ捨てるのかを


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