第2話 自己紹介と謎の光、なぜなのかスラスラ自己紹介


中学二年。クラス替えという事もあって最初に自己紹介があった。


僕はパニックになった。


一体何を自己紹介すればいいのだろう。


というか自分の名前を言うだけでも噛む自信がある。


その悩んでいる最中だった。


どこからともなく光みたいなのが差し込んできた。


その光は語り掛けてくる。


「そのままでいいんだよ。自分が緊張して心臓バクバクな事も名前噛んだら噛んだ事も陰キャという事も言っていいんだよ」


本当に心臓バクバクだった僕は半信半疑だったが、


とりあえずその言葉を信じることにした。


これが僕の、人生の転換期だとはまだ、知らない。





自己紹介で心臓がバクバクする。


もうすぐ自分の番が近い。というか、次だ。


そして、自分の番になった時、緊張からなのか意識がちょっと飛んだ。


目の前が真っ白になって。







「ねえ、最初の出会いって覚えてる?」


どこからか声がする。


知らない声だ。柔らかな女の子というか女性の声だ。






「そうだね、あれは自己紹介の時だったね」


こっちは僕のようで僕じゃない声。


だって僕はまだ声変わりしていない。


でも、この安心する感じは何だろう?






意識は戻る。


緊張は何故か溶けていた。


椅子から立ち上がり


「坂口拓也です。今、めーっちゃ心臓バクバクしていて、意識とか飛びそうなんだけど、いわゆる僕は陰キャでインターネットとか好きです。でもSNSはあんま人と繋がってないってか、これから繋がりたいなーって。趣味はVtuber…って知ってる?youtuberのアニメ版みたいな感じ。運動も勉強もあんまできないけどよろしくお願いしゃす」


言葉がスラスラ出てきた。


何故か笑い声も聞こえてくる。


その時、斜め後ろの方から強い視線を感じて僕はちょっと横顔だけ振り向いた。


髪を三つ編みにしてる、メガネの女の子だった。


その女の子は僕の視線に気付いてパッと目を反らし教科書に顔を埋めた。


なんだろう?


僕は、あの子は僕と同じ陰キャなのかな? としか思わなかった。


自己紹介も終わり、休憩時間。


いきなり


「坂口ー、だっけ? お前、ぜーんぜん陰キャじゃ無えじゃん!」


困惑する僕。


「えと、誰?」


「俺、木市。木市翔。きいち、って読んでもいいけど小学生の時は『かき』って呼ばれてた。だって俺の名字、並べると『柿』だもん」


「へあー」


「坂口はなんて呼ばれてたん?」


「いや、僕、マジで友達いなくて」


「うっそだろ? それであの自己紹介なん? めっちゃ慣れてるように聞こえた。とりあえずよろしくな。次の授業とかで組む事あったら誘うわ」


「草」


「なん? 草って」


「今のネットで笑う事を『草』って表現するんだよ」


「そうなん? って草」


「早速使ってて草なんだけど」


またしても斜め後ろの方から視線。


まさかと思いきや、三つ編みメガネのあの子だった。


なんだか殺気も感じる。


この感じは…も、もしや、…オタ?

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正しい女の子の扱い方 樫木佐帆 ks @ayam

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