第12話
前の話を2024年6/30に編集しました。
もしよろしければ、先にそっちをお読みください。
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翌日。
昨日の一件が広まったせいか、誰も目を合わせなくなった。
(あの後、しっかりと解放してあげたのに...これじゃあ意味ないよ...)
実は、5分くらいしたら解放してあげようと思ってたんだけど、結構fpsが良い所まで行っちゃった結果、「おい!早く解放しろ!!」「ごめん!痛いのはわかってるんだ!僕だって良心が痛むよ...」といった会話があった。
それから1時間後、しっかりと解放してあげた。
あ、ちなみに解放してあげようとする時に『縄結び』の技能でケーブルタイを解こうと
(さてと、とりあえず
その瞬間、ケーブルタイが逆にきつく締まってしまったのはご愛嬌だ。
(そういや、サイコロの音が結構鳴ってたのにコイツらなんにも反応しなかったなぁ...まぁ、そういう事もあるだろう。)
そんなこともあったせいか、転校二日目から教室の空気は重く、歪んだ曇りのような生温い空気が漂っていた。
「やっほーちょっといい...」
ガタンッと、声をかけた瞬間に教室から出て行った。
(なんか、そんなにヤバいことしたっけ?)
頭の中で考えてみるが、答えは見つからなかった。
やった事と言えば、昨日FPSでチーター殺せた事と例の件。
(まさか、それなのか?)
侵入者を撃退したしただけなんだぞ?
みんなだって、自分の家や部屋にいきなり知らない人が複数人入ってきたら応戦するか逃げるだろ?そうだろ?
だが、そんな心中に関係なく、厄介ごとは次から次へと舞い込んでくる。
突然、教室のドアがバコンッ!と開けられると、教室に昨日の3人が入ってきた。
(昨日ので懲りとけよ...カスがよぉ...)
3人のうち、2人は昨日の1件のせいか、腕や指に包帯を巻いていた。
「...おい。ツラ貸せ。」
「え、やだ。」
沈黙がクラスの中に駆け巡る。
いつの間にか、自分たち以外誰もいなかった...いや、一人だけ隣にいるね。
隣の席のテンマさん。
普段から周りに無関心なのか、今もこっちに見向きすらしていない。
なんなら、携帯で中国語か韓国語のニュースを見ている始末だ。
「...いいから、来い。」
「なんで?」
両者どちらとも引かない中、少しの違和感を無常は感じた。
(違和感...違和感...ああ、なるほど。そういう感じね。)
もしかしたら、転校初日の教室のみんなのテンマさんへの反応と関係があるのか知れない。
教室の外から覗いている奴らの声でも聴いてみるか。
別に、サイコロを振らなくても『聞き耳』が90もあるお陰で耳と鼻がオンオフで冴えさせる事が出来る。
えっと、なになに~??
”あいつ、他の所に転校した方がよかったよな”
”ほんと、まじそれ”
”なぁなぁ、昼飯何にする?”
”来月の徴収金足りるかな...”
”あいつ、もし勝ったらどうする?”
”どうするもなにも、荒れるだろうなぁ...”
”集金に影響があるかも知れない...”
”負けてくんねぇかな...”
”けど、アイツの部屋の前であの二人の叫び声が聞こえたって聞いたぞ?”
”あの3人相手にして無傷でいられてるあの転校生何者?”
”まさか、テンマさんと同じくらい強いんじゃ...”
”テンマさんの近くで暴れる気か、あいつら?”
”さ、流石にそれはしないだろ”
”けど、もしそうなったらアイツら全員フルボッコだろ?”
”転校生、かわいそうにな”
”そういえば、名前なんだっけ?”
”えっと、確か”むじょう”とかって言ってたような...”
”もしかしてアイツ、まさかテンマグループを知らないんじゃ...”
(めっちゃ喋ってんじゃん。つか、テンマグループって...なんだっけ?)
どこかのCMでやっていた気がするが、どういう会社だったのかは覚えてねぇな。
つか、態々クラスメイトの親の企業とか把握しているコイツらおかしいだろ。
「...」
「...」
(で、どうするよ?なんか変な空気になっちゃったよ?ねぇねぇ、この空気どうするの?)
不良は不良で、テンマの前で暴れる事が出来ないために膠着状態。
無常は無常で、この教室から出る気がないために待機状態。
つまり、この場を制しているのは何も喋っていない天魔、ただ一人!
だが、そんな時間も終わりを迎えた。
「なぁ...騒ぐなら、向こうでやれ?な?」
彼女の冷ややかな声に、不良たちが縮こまる。
「あ、あ...わかったぜ、おい、テンマさんもこう言ってるんだ。早く移動するぞ。」
「えー仕方ないね...それじゃあ君たち、テンマさんもこう言ってるんだ。どっかいってよ。」
その言葉に、思わずあのテンマでさえもが振り向いた。
まさか、自分の事を言い訳に出して来るとは思っていなかったからだ。
「だってほら。君たちがいるから騒ぎが起こるんだろ?昨日だって、君たちが寮で僕の部屋に無理矢理入ろうとしたからそんな指になっているんだろ?あ、もしかして折れたの?ごめんねぇ~?やっぱり最後のケーブルタイでの締め上げたのが効いたのか?」
「お゙、お前ッ...」
「クソ野郎...!!!」
「.........す...」
そろそろ授業が始まるだろうと、筆箱を取り出してシャーペンにシャー芯を入れようとすると、隣から声がした。
「...本当か?」
「...あれ?僕に話しかけてるの?」
どうやら自分に声をかけてきたらしい。
教室の外いる人はもちろん、近くにいる不良ですら驚いている。
振り向いて彼女を見ると、すんげぇー不機嫌そうだった。
あえて、もう一度言おう。
すんげぇー不機嫌そうだった。
いや、まぁわかるよ?自分が言った言葉がちゃんと相手に繋がらなかったもんね?
「ごめんごめん。まさか自分に声をかけてるとは思わなかったんだよ。そういえば、話すの初めてだったね。僕の名前は無常仮寝。君の名前は?」
「.........テンマだ。それよりもさっきの話、本当なのか?」
ケーブルタイでの骨折の事だろうか?
「骨折に関してはコイツらに聞かないとわからないけど...ケーブルタイでやったのは指だけで、腕に関しては扉で折れたと思うよ。」
そういうと、彼女は片手でケーブルタイを検索して、もう片方の手で顔を隠しながらクスクスと笑ってしまった。
「お、お前ら、なんでこれで骨折なんかするんだ...!?」
「ハハッ!ホント、笑っちゃうよね!w」
お互いに、もう隠し笑いせずに腹を抱えて笑う。
その状況に、3人は困惑しながら2人から少しずつ離れていった。
人間とは、理解出来ないモノを
外で見ていた生徒達も含めて、共通した考えが浮かんでいた。
”あ、もうこの人達とは関わらないでいこう。”と。
とりあえず笑い終わると、無常は聞いてみる事にした。
「なぁテンマさん。なんでコイツら、君をこんなにも恐れてるの?」
「...一回わからせてやっただけだ。...自分達がどれだけ軟弱なのかを。」
「拳で?」
「ああ。わざわざこいつ等のために金を使ってやる必要もないだろ?」
「それもそうだな。」
「というか、ケーブルタイで骨折するような奴らには大人げなかったかな?」
後ろを見ると、例の3人はいつの間にか消えていた。
なんというか、本当にかませ犬みたいな奴らだったな。
「前の学校でもそんな感じだったのか?」
「いや?前の学校だとこんな事したことないよ。この学校がヤバすぎると思うんだ。」
「大阪の市内の学校だぞ?まさか、知らずに来たのか?」
「知ってはいるけど、実際に見たらもっと凄いって感じだな。百聞は一見に如かず、ってやつだ。」
さて、そろそろ授業のチャイムが鳴っても良いはずなんだが...みんなは教室に入らないんだろうか?
現実冒険譚~ナイアルラトホテプの理想郷~これからは生配信の時代 木原 無二 @bomb444
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