第11話 始まりと終わり


2024年6/30に編集


伏線のために一部変更します。

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「転校生を紹介します!入って!」


あれから一月が経った。


転校の手続きは勿論のこと、“この際、折角だし一人暮らしをさせて”とお願いしたところ、寮生活が始まる事になった。


パソコンが爆発したこともバレずに、色々と準備をしていたら、いつの間にか、一か月が経過していた。

元々、放任主義だった事もあり、バレなかったんだと思う。

まぁ、そうじゃなかったら今までのクエストなんてクリア出来ていないだろうしな。



そして、現在。


先生に呼ばれ、中に入るとクラスメイトがこちらをジロジロと見ていた。


なんていうか、先月の沢山のお礼もそうだけど、あんまりこういった事って慣れてないんだよね。

『無貌様』をやっている時だったら、大胆に動けたりするんだけど。


「神孕町から来ました、無常仮寝です。漢字は黒板に書いている通り、無意識の無に日常の日、そして、仮免許の仮に睡眠の寝るです。みなさんよろしくお願いします!」


(いけたかな…?)

ドキドキと鼓動が耳元で跳ねるのもつかの間、拍手が僕を包んでくれた。


どうやら、掴みはそこそこ行けたらしい。


「ではそうね…一番後ろの空いてる席に座って。隣の席はテンマさんって言う方よ。」


その瞬間、全員が後ろに振り返った。


振り向いた方向を見ると、そこに銀髪でショートの女の子が一人、座っていた。


(…大丈夫、かな…?)

綺麗なものにこそ、硫酸のような毒があると学んでいる身としては、思わず身構えてしまう。


APP18の化け物を見てみろよ、ロクな事がないだろ?そうだろ?


実際に、人魚を見た時に『めっっちゃ可愛くて、綺麗だ…抱きしめたいし、ぺろぺろしたい…!』って考えてしまった結果、いつの間にか首の頸動脈が食いちぎられたりした事があった。


(っていうか、あんなにも目立つ子、教室入った時におったっけ?)


どこか儚く見える、目がちょっとだけ鋭く怖い感じの銀髪の少女。

何故だか彼女がいるあそこだけ清んでいる気がした。


「…前を向いたらどうだ?」


低い、男性の様な声で小さく呟かれる。

刹那、全員の顔がブレて元いた位置に戻った。


うん、やっぱりやばそうだ。


「あ、ちなみにウチの学校は染めたりするのは禁止だけど、テンマさんの髪は地毛だからね!それじゃあ授業を始めますよ!」


全員がいそいそと教科書の準備をしている間、後ろまで歩いていく。

チラチラとこちらに視線が向いているが、すぐに視線を外す。


(まぁ、退屈しないですみそうな学校生活だといいな。)


そう考えると、元の学校も面白かった方だ。なにせダンジョンが出たのだから。


まぁ、あのあとの町の人々から『無貌様』にたいして感謝された事もあってか、町に居づらくなったわけだが。



あの後、あそこで取材をしていた報道陣により、『無貌様』は都市伝説ではなくなった。


今までは、写真や映像などで、生放送の類はなかったが、今回の事で全国各地に『無貌様』は実在するという事実が知れ渡ってしまった。


元々、『無貌様』は自分の素性を隠すために作った一つのキャラだったが、もう使えない。


「あの...よろしくお願いします。」


「.........」


天魔は、何もしゃべらないどころか、見向きもしなかった。

(...ま、こんな感じの人もいるだろう!)


「それでは、授業を始めます。教科書25ページを開いて...」


...

..

.


普通に授業を受けて、寮に帰ってきた。


休み時間、自分の机の周りにはたくさんの人が詰め寄ってきた。

「〇〇ってしってる?」や「▽▽って▼▼だよね!」とかと、他愛もない会話をしていたが、この調子で学校生活を楽しめば、『友達』も出来るだろう。


(で、どうするかな...)


考えないようにしていた事が再度浮かび上がる。

家について、何もすることがなかったためだ。案外、一人暮らしというやつも暇だったりするのかも知れない。


(『無貌様』の代替案...なんかねぇかなぁ。)


ここ、大阪市内では沢山の厄介ごとが起きる。

迷子の猫から迷子のロケットランチャーまで様々だ。


かつて、”修羅の国”と呼ばれた福岡から来た組の人たちはもちろん、海外からのスパイやシンジケート。そして世界各国の有名大企業が参入している、ここ大阪では大量の金と資源、人が目まぐるしい速度で動いている。


そんな大阪は勿論、事故や事件が多い。


ちなみに、東京だと一日に3回殺人事件が起こったりする。


今更だが、よく転校先を大阪市内にしてくれたと思う。

いや、お願いはしたんだよ?

けど、「「うん、いいよ」」って即決で決めるかな?普通。


(このさい、自分が『無貌様』だって事をばらすのも...いや、ダメだな。絶対にダメだな。)


いつも、戦闘が起こる度に何かを壊しているので、バレてしまった場合の損害が計り知れない。それに殺人として立件されるかもしれない。まぁ、どうやって立証するかは分からないが。


(けど、そうか...そうだよな。もう『無貌様』はいないって事にしないとな。)


『無貌様』は、もういない。そう認識して再スタートするほうがいいだろう。


コンコン


そんな考え事をしていると、誰かがノックしてきた。


(誰だ?管理人さんか?)


扉の前まで行き、ドアスコープから外の様子を確認する。

確認すると、外には3人の知らない男たちが立っていた。


背格好からして、恐らく同じ学校の人間だと思うが、服は乱れておりしっかりと着ていない感じだ。

ズボンの方をよく見ると、チェーンとかもつけており、”The.不良”と言わんばかりの格好だった。


不貞寝しようと一瞬考えるが、もしかしたら隣に挨拶しに来ただけかも知らない。

見た目に囚われてはならない。


そう考え、チェーンでロックをつけてからドアを開けた。


「はーい、誰で「お邪魔しまーす...って開けられねぇじゃん。開けろや、おい。」は?」


さっそくトラブルかよ、めんどくせえな。


ガタガタガタガタッ!


ドアを無理やり開けるように手を入れてくる。


「おい、態々来てやったんだぞ?おもてなしくらいしろよ。後輩だろ?」

「そうだぞ?お前、転校生だからって調子のってんの?お?」


だ、怠い...

こういうやつ、この学校にいないと思っていたのにいたんだ。

周りにも聞いとかないとな、こういった奴の情報。


「なにしにきたんですか?」

一応、聞いてみる事にした。こういう歓迎なのかもしれない。


「何って...お前、ここにで住んでるんだろ?寂しいと思って来てやったんだよ!」

「そうだぜ?先輩のありがたい好意なんだからぁ!感謝しろよ!」

「だから!早く開けろよ!なぁ!」


(絶対にちげーだろ。)

こいつらからはカスの匂いがする。生き物として薄っぺらい匂い

だ。


「いや、結構です。僕これから用事があるんで。では。」


ドアを閉めようとすると、三人のうち、二人の腕が入り込んで来た。


「あ゙あ゙?!何閉めようとしてんだよ!今なら痛い目にあわねぇからよ...」

「つか、転校してきたっていう理由で一人だけ部屋丸ごと使えるんだからよぉー少しぐらい部屋貸せよ!」

「なぁ転校生くぅーん?この学校にはこの学校なりのルールがあるんだよぉ?元々いた所がどんな所か知らねぇけどよ、ここでは俺たちがルールなんだよ。無事に学校生活送りたいんだったら言うこと聞いとけや。」


(はぁ、ここが大阪市内か...)


そんな事を考えながら、思いっ切りドアを閉める。


「あ、ちょま、いたたたtttったたtったあああああ!!!」

「たんまたんまたんまあ!おま、ちょ!まてや!」


別に、魔力による肉体強化などの類はしていない。

なんなら、腕だけの力でやってあげてるので感謝してもらいたいぐらいだ。


「おい、お前。そのあたりにしとかないと、マジで潰すぞ?」

「弱いやつが言ってもなんも響かねぇよ。強い言葉ってのは強い奴が言ってこそ意味が含まれるんだぜ?」


肩の部分にもほんの少しだけ力を入れると、二人は更に声を上げた。


「ああああああ゙ あ゙ ああ嗚呼ああああ!!」

「ゆ、ゆびがあ嗚呼ああああ゙ あ゙ あ゙ あ゙ !!!」


うるさいって。近所迷惑...って考えたけど、よくよく考えたらここ建物の中だから周りに聞こえねぇわな。

あ、でもあれか。他の生徒がいるんだったら迷惑だわ。

まぁ、挟まってない一人はなんかプルプル震えてて静かだからいいんだけどさ。

なんか小鹿というか攻撃する前のスライムに見えるねw


「おい、五月蠅いぞ?まだ夕方だけど、少しは静かにしろよ。」

「おま、お前がやってんだろぉがよおおおおおおお!?!?」


(ツッコミが鋭いな...流石は大阪市内。やはり、市外と市内ではこんなにもレベルが違うのか...)


思わず、力を更に入れてしまったが気にしない。

そう、骨がゴォリゴォリ!!と鳴っている気がするが、気のせいにする。

都会ではスルー技術が大事なんだって幼馴染の青ちゃんも言ってたし、この対応で間違いない。


「や、やめろ、やめてくれ!!」

「それって振り?」


幼馴染の青ちゃん曰く、大阪市内では、”やるなよ?絶対にやるなよ?”って言われたらやるのがお決まりらしい。


この不良一号が言っているとは少しだけ違うが、まぁ誤差だろう。


さて、縄のロープは陰にあったっけ?とりあえず、玄関に置いてあるケーブルタイでこの状態をキープする事にするか。


あ、この際だし、技能増やしてみようかな。前から欲しかった技能があるんだよね。


(〔GM、新しい技能が欲しいです。僕自身の『縄結び』の初期値はいくらですか?〕)


僕のステータスは、いつでも対価さえあったら技能を増やす事が出来る。

このGMというのは、ナイアルラトホテップの加護である『上級探索者の加護』の一つの機能で、『心理学』による描写や、技能値のスキルポイントが増える時に色々とアナウンスをしてくれるのだ。

え?『心理学』持ってないだろって?大丈夫大丈夫、10もある。


ちなみに声は女の人だが、性別は無性で、AIみたいなものだと認識した方がいい。


〔無常仮寝の記録を洗います...今までの経験から、初期値は9です。〕


なるほど、一旦それで振ってみるか。

では、転校初日からのダイスロール!


コロコロっと鳴り響く音にあわせて出てきた数字は...『8』。


なんと成功。次々と体が動いていき、最終的に完ぺきに固定できた。

放置しておけば、痛みなどはあまり感じれないだろうが、ここから離れるために苦痛を要するだろう。


そういえば、今の時間帯は中学の時の友達がfpsやってるんだっけ?

パソコンは壊れたからゲーム機で遊ぼうかな。


ヘッドフォンを取り出して身に着ける。よし、これで後ろのうるさい声は遮断できたぞ。さて、何人倒せるかな?








『P.S.』

久しぶりに書いたけど、出目が僅差過ぎるぜ...


















































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