ホルスタイン女子高生とトリあえず眠る霧

愛田 猛

ホルスタイン女子高生とトリあえず眠る霧 KAC20246



「トリあえず午前の授業終わったね。お昼どうする?」ホルスタイン柄のセーラー服を着たホルスタイン女子高生のホル美が、茶色のブレザーを着た親友のミノタウロス女子高生のミノ子に尋ねる



「うーん、トリあえず学食に行こうか。」ミノ子が答える。


「トリあえず今日はお弁当持ってこなかったからちょうどいいや。」ホル美も同意する。


トリあえず二人は、学校の食堂に向かった。


食堂は、学生でごった返していた。グレイウルフのグフがステーキを食べていたり、ドラキュラムササビのドムがトマトジュースを飲んでいたりする。

「トリあえずどこかに座ろうよ。」ミノ子が言い、二人分の空席を確保して座る。


すると突然、食堂の中に白い霧が立ち込めてきた。ホル美があれ?と見ると、廊下も、外も真っ白だ。


え?どうなってるの?と思い、あたりを見回すホル美。

そこで見たものは、霧の中で眠りに落ちた皆の姿だった。


「みんな寝ちゃった?どぷなってるの?」ホル美が声をあげたが、誰も答えない。

向かいに座ったミノ子も眠っている。


サラダを食べていたペガサスのペガや、スープを飲んでいたケンタウロスのケンタも眠っている。


「トリあえず、ヤギ先生に相談しよう。」ホル美はそう独り言を言うと、職員室へ急いだ。


ヤギ先生は本当はヤギではない魔物なのだが、皆がヤギ先生と呼ぶので、トリあえず本人もそれでいいと思っているようだ。


トリあえずホル美が職員室に行くと、ほとんどの先生たちも眠っていた。

その中で、ヤギ先生と一人の人族の女性が起きていた。


「ヤギ先生、いったい何が起こったんですか?」ホル美がアホ毛を揺らしながら聞く。 もちろんトレードマークの巨乳も揺れる。


ふと視線を落とすと、ヤギ先生の机の上には何とかDとかZとかの栄養ドリンク、エナドリや缶コーヒー、唐辛子やコーラ、黒いガムや眠眠撃破など、いろいろな寝ないための品が並んでいる。


「あれは、『トリあえず眠る霧』じゃよ。」ヤギ先生は眠そうに言う。


「え?『トリあえず眠る霧』って、何ですか」ホル美が驚いて尋ねる。



「トリあえず、名前の通りじゃな。あの霧に囲まれた者は、大部分がトリあえず眠ってしまう。魔力のひずみから生まれるという説もあるが、はっきりしたことはわかっていないんじゃ。」ヤギ先生がエナドリを飲みながら言う。



「ホル美は、いつも寝てばかりいるから、耐性があるのじゃよ。逆に元気になるくらいじゃの。ワシはこの通り、トリあえず何とか抗っているが、かなりつらい。」



「トリあえず、この『トリあえず眠る霧』に対処する方法はあるんでしょうか?」ホル美がトリあえず尋ねる。


「トリあえず、方法はあるぞい。」エナドリと缶コーヒーを双剣のように上にかざしながらヤギ先生が言う。


」トリあえず教えてくださいよ。」ホル美がトリあえず尋ねる。



「トリあえず、彼女の力を使えばいい。」ヤギ先生が、隣に立つ人族の小柄な少女を指さした。

魔法学園には、少数ながら人族もいるのだ。


「トリあえず自己紹介するね。私は桐原 伊代っていいます。退魔師の家系の人族よ。私の術を使えば、霧を払える。でも、それにはトリあえず準備がいるの。」


桐原 伊代が言う。小柄で、おかっぱの黒髪に丸い眼鏡を掛けている。小柄だけに、全体的につつましやかな体形になっている。


ヤギ先生が黒いガムのボトルから中身を口に流し込みながら付け加える。

「そう。それには、光の羽が必要じゃ。ホル美くん、彼女をトリあえず助けてやってくれるかな?」


「助けるってどういうことか、トリあえず教えてください。」トリあえずホル美が尋ねる。


「トリあえず、迷いの森に行って、光の羽と呼ばれる、光る羽を拾ってきてほしいんじゃ。トリあえず人族の彼女一人では、あの森は無理じゃ。じゃが、ホルスタインのホル美が一緒なら、あの森も踏破できるじゃろう。:



「トリあえずやってみます。」トリあえずホル美はうなずいた。

トリあえず伊代も嬉しそうにだ。



「そうか、ホル美くん、頼むぞい」そういうと、ヤギ先生は机の下に崩れ落ちた。そのまま床に転がって爆睡している。あれだけ眠気覚ましをキメても足りなかったようだ。まあ、トリあえずは大丈夫そうだ。



「じゃあ、トリあえず一緒に行きましょう。伊代ちゃん、よろしくね。」

ホル美は、トリあえず伊代と森へいくことにした。


二人で並ぶと、大きさの違いが際立つ。

まあ、トリあえず詳細は控えよう。



トリあえず二人は、迷いの森にやってきた。


「トリあえず着いたけど、入っても戻れなかったらどうしよう。」伊代が心配する。



「トリあえず大丈夫よ。」ホル美が言う。


ホル美は、少し入ったところの木々に対して、彼女の独自の魔法、乳魔法でミルクを撒く。


「帰りは、このミルクをたどってくればトリあえず大丈夫よ。」ホル美は言う。


伊代もトリあえず安心したようだ。


足取り軽く、森の奥に入っていく。ところどころでホル美がミルクを撒いて目印にする。

ただ適当に撒くのではなく、方向性とかを微妙に調整し、どの方向から来たかわかるようになっているらしい。


その後森の奥に進んでいって、いろいろな障害が現れるが、 伊代の退魔術とホル美の乳魔法でトリあえず乗り切ることができた。



森の最奥に着くと、切り株の上に、金色に光る羽が一枚載っていた。


「トリあえず、あれですね。」伊代が言う。


ホル美が近づくと、羽がひとりでに逃げるように飛んでいく。


「伊代、トリあえず何とかして!」ホル美が叫ぶ。


伊代がトリあえず何やら呪文を唱える。そると羽が地面に落ちた。伊代はそれを拾って、大事そうに袋に入れた。


「この金の羽は、何の羽なの?」ホル美が尋ねる。


「これは、フェニックスの羽です。」

伊代が答える。


「トリあえず、フェニックスを見てみたいなあ」

ホル美が憧れを込めて言う。


「フェニックスは高貴な存在ですから、なかなか見ることはできませんよ。」伊代が言う。


「そっか。トリあえず帰ろうよ。」ホル美が言う。


二人は、来た道を帰っていく。迷いそうになると、ホル美がアホ毛を動かす。実は、ホル美のアホ毛には魔力感知の機能があり、行きにつけたホル美のミルクの魔力を感知できるのだ。


二人は、トリあえず学園に戻ってきた。まだ白い霧が立ち込めたままである。


「トリあえず、この『とりあえず眠る霧』を除去しますね。」


伊代は金の羽を手に持ち、十字に印を切ると、叫んだ。


「トリあえず行きます!アノクタラサンミャクサンボダイ外道照身!」

光の羽が、七色の輝く光を放つ。すると、白い霧は徐々に消えていった。


「これでトリあえず大丈夫だと思います。 トリあえずみんなの状態を見に行きましょう。」

伊代がほっとした顔でホル美に言う。



二人は連れだって学食に行った。


ちょうど、皆が眠りからさめ始めたところだった。「わー」と叫んでいるのは、スープに顔を突っ込んで寝ていたケンタウロスのケンタだろう。


ミノタウロス女子高生のミノ子も起き、不思議そうにホル美を見た。


「ホル美、何があったの?」

「いろいろ冒険したのよ。最後は、この人族の伊代ちゃんが、霧を払ってくれたの。」


「へー、すごいのね。」ミノ子が感心する。


「私だけの力じゃありません。ホル美さんが居なければ、無理でした。本当にありがとうございました。」

伊代はそう言ってホル美に頭を下げる。


「いや~それほどでも。」ホル美は嬉しそうに頭をかく。ちょっと偉そうである。


「ホル美、あんたはおまけなんだから、とりあえずそんなに偉そうにするんじゃないyわよ!」事情を聞いたミノ子が突っ込む。


「一つ心残りがあるとすれば、フェニックスに会えなかったことね。」ホル美が残念そうにいう。



「それは仕方ないです。トリあえず、フェニックスは高貴な存在だから、そう簡単には会えないわよ。」


「そっか~ま、トリあえずこれにて一件落着ね。」ホル美がほっとしおたように言った。


トリあえず、魔法学園に、平和が戻ったのである。


なお、職員室では、腹がががぼになったヤギ先生が床に倒れているが、それに気づいた者はいなかったという。

(完)






===

アノクタラサンミャクサンボダイがわからないあなたは正常です。

外道照身のあとに何が続くかわかっている人は変な人です。


トリあえずてんこもりの作品になりました。


お読みいただき、ありがとうございました。

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特に短編の場合、大体が一期一会です。


袖すりあうも他生の縁。

情けは人のためならず。


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…もちろん私が最初に幸せになるんですけどね(笑)。















トリあえず一言。

多くの人が使っているのを確認しています。

なのであえて本文中には書きませんでした。


「鳥、会えず。」

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