20240327 自分の身は自分で守ろう
昨晩、近所のバーに行った。
一人で行くのは2回目。そのバーに行くのも、ヒトリでバーに行くのも。つまりバー初心者である。
マスターに連絡を入れ、店に向かう。店の前に着いたら、中から多人数会話の盛り上がり・笑い声が聞こえてきて、一瞬身構えた。バーなら当たり前なのに、知らない人たちがワイワイしているところに入る可能性を全然考えていなかった。こんな輪には自分は入れない。たとえどんなにウェルカムしてもらえても、見知らぬ人間をウェルカムして盛り上がれるほどの人々のお眼鏡にかなう会話ができる自信など全くない。
やっぱり今日は帰ろうか、いやでも行くって言ったしな、でもこの空気に溶け込めるかな、いっそ空気のような存在になろうか、そうだそうすればいいんだ。
体感で5分くらい店の前で迷って、入ることにした。
盛り上がる人たちの会話をBGMにして、時々笑いをこらえながら、その人たちが帰るまでヒトリでゆっくり飲んだ。
マスターと二人で会話をしていると、一人の男性客が入ってきた。会話を中断して、一人の世界に入る。テレビで流されているMVに視線を向け、フィズを一口飲み、たばこを吸い、軽く上を向いてたばこの煙を吐く。「一人を楽しんでいますよ」というメッセージを発する。同時に、体は男性客の方にも少し開いておき、男性客が視界には入っているという状態を作り、「一人を楽しんではいますが話しかけられても断固拒否というわけではありませんよ」というメッセージも発する。
男性は、席に着いて酒を注文すると、しばらくマスターに話しかけていたが、マスターの反応は薄く、すぐに会話が終了していた。「ボク、めんどくさいですよね、めんどくさくてすみません」などと言っていた。気持ちは分かる。自分が思っていることを話したときに相手の反応が悪いと、自分が相手に迷惑をかけているような気がしてくる。自分に自信がないと尚更そうなる。一言終えて反応が悪かったときに、さらに言葉を重ねて挽回を図るも、さらに事態が悪化する、それも分かる。そしてさらに、自分は事態が悪化していることに自覚がありますよ(自覚できない迷惑野郎よりはマシですよね)、と自己イメージの修復に努める。分かる。経験がある。
ただ、反応の薄さが自分のせいではない可能性もある。体調が悪いとか歯が痛いとかその時たまたまそうなだけってことは多い。仮にそうではないとしても、人によって関心事が違うのは当たり前だし、反応できる話もあれば反応できない話もあるし、全部が全部相手に食いついてもらえるわけではない。そしてそれは誰が悪いという問題ではない。
だから、別に会話が盛り上がらなくたって気にしなくていいんじゃないかと思うんだけど、自分の言葉に対する相手の反応のなさを受け入れられないと、ぐちゃぐちゃになってしまうんだろうと思う。
あるいは、あの人は妥協しない人なのかもしれない。自分の言いたいことで相手と盛り上がるということを諦めない。相手の言うことに自分なりの本気をぶつける。本音をぶつける。
あの人との会話で、私はまさに本気でこられたのだった。
いまの目標は何かという質問をきっかけに、向こうからの質問に対してシナリオがどうとかコミュニケーションがどうとか、自分でも何を言っているのか分からないなりにグダグダと返していたら、最後に「全然ちゃんと考えてないんだと思う」と言われた。なんも言えねー。他にも、プライドがどうとか人に聞くとかなんとか、一番好きなものは何か考えてそこで集大成をまずは出し切るんだとか、まさに正論って感じのことを言われた。ほんとに正論。
一言で言えば、プライドを捨てて素直に吸収しながらちゃんと考えてやれってことなんだけど、言葉にはできてもそれが実践できなかったのが、自分が前にいた畑だし、それをやろうとしているのが今という認識をしていた。
が、改めて人から遠慮のない表現で言われると、今でもまだ全然甘かったなと自分でも思った。形や媒体に気をとられ(たふりをし)て、自分が何をしたいのかを考えることから逃げていた。というか考えても分からんのだけど。でも分からんからといって考えないのと、考えるたびに分からんという結論が出るのとは雲泥の差で。
自分がコミュニケーションについて言いたいことってなんだったっけ。
それがあってこっちに来たんだけど、なんか書いたり作品に触れたり、目先のことにとらわれているうちに忘れてしまったな。
誰に、何を伝えたいのか。自分は何がしたいのか。
人に伝わる、かつ自分にもしっくりくる表現で、まずはそれを伝えられるようになろう。
短期的に、何か書くこと、練習すること、作品に触れること、
長期的に、自分が伝えたいこと・やりたいことを自覚・更新していくこと、
両方やっていこう。素直に。
********************
と、さわやかな前向きさを獲得したのはいいが、最初はこんなふうに筆が進んでいくとは思っていなかったので、書こうと思っていたことを最後に書いておく。
今はこうして、後から書いて、書きながら考えて、結果的に前向きになれたものの、バーで話しているときは、耳が痛くて胸も苦くて、素直になれずに不快感まで覚えてしまって、受け止めるのに精一杯で言葉が返せなくなって、会話が終わってしまったのだった。あまり後味の良い終わりではなかった。
それで、こちらがこれだけ話したのだから向こうにも同じことを要求する権利はあるだろうと思って、向こうに「なんで今の仕事に辿り着いたんですか」と尋ねたら、「わかんない」と返されて終わった。
「わかんない」って選択肢としてアリだったのかーーーーー!
いや、もちろん、言いたくないことは言わなくていいんだけど、こちらとしては、言いたくないことを言うのと同じくらいのダメージを負っていたので、衝撃的だった。
こんな不均衡なコミュニケーションもあるのか。
今回は前向きな方向に進めたので結果オーライだが、次からは、私もちゃんと自分の身は自分で守ることにしよう、と思った。おわり
ある考えすぎな男の日記 やながせじんた @yanagase_jinta
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