トリあえず、どこに行く?

蔵樹紗和

第1話

 私は、机の上に広げた地図を見つめながら、今日の予定を考えていた。


今日は、「とりあえず」という言葉にちなんで、「トリ」に関連する場所に行ってみようと思う。


トリのたくさんいるところに行こうか。そうすると、野鳥園や公園などの場所か?


それとも、トリ肉料理が美味しい店に行こうか。そういえば、近くに焼き鳥屋さんがあった。


撮りトリ」ということで景色の綺麗な所に行って写真を撮るのも良いかもしれない。


「う〜ん、どれも迷うなぁ」


私は、腕組みを始めた。


もしかしたら、どこにも行かず家でゆっくりするのも良いのかもしれない。


「どうしたの?」

「あ、お父さん」


目をこすりながら、父が二階から降りてくる。


地図とにらめっこ中の私を見て、悩み中だと察したらしい。


「今日はどこに出かけようか迷っているの」

「ふ〜ん。場所の案はあるの?」


私の隣にやってきたお父さんは、私と一緒に地図をのぞき込む。


私は、今の自分の考えを余すこと無くお父さんに伝えた。するとお父さんは、小刻みに頷きながら自分の考えを話す。


「僕は……夏に行く鳥トリ県での予定を考えるのも良いと思うけど」

「あぁ、今度の旅行のこと?」

「うん」


話が微妙にそれたにもかかわらず、私は何も考えずに返事をしてしまう。しかし、数秒考えてみると冷静になれたようで……。


「って、それじゃあ何の解決にもなってないじゃん!!」

「あれ、そういうことじゃなくて?」

「そう、私が悩んでるのは今日の予定!! 旅行の準備は進めてるから今日やらなくてもいいの!!」


私の一生懸命な叫びに圧されている様子のお父さん。


と、そのとき。私の叫びによって起こされたお母さんがやってくる。


「どうしたの? 朝から」

「あのね、今日どこに行こうか迷ってて……」


お母さんは理解したように頷くと、ニコッと微笑んでから言う。


「行きたいところ全部行けば良いじゃない」

「「……あ」」


的を射た母の一言により、私たちは全ての場所を回ることになったのだった。

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トリあえず、どこに行く? 蔵樹紗和 @kuraki_sawa

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