第2話 ギャル絡み

 あの出来事から数日。また俺の日常は何の変哲もない物へとなっていた。

 正直、あの瞬間何かが始まるかもとか思ってたが、全然そんなこともなく今日も机に顔を伏せる。

 いつものことだ。今日だって何ら変わらない―――――。


「ふー…。」


「いっ!?」


 耳を直撃する生暖かな風。


「わお、良い反応。」


「紡木…さん?」


 キョトンとした顔で彼女はこちらを見つめている。


「今日も寝てるから。」


「え?」


「言うこと聞かずにずっと無理してたんでしょ?」


「そりゃあ………そうしないと追い付けないし。」


「だからって昼夜逆転はヤバイって。学校って勉強するところじゃん?先生からの評判も悪くなるよ?」


「そりゃあまぁ、解ってるけど…。」


「だったらなおさら、生活習慣は見直しなさい。」


 と、そんな説教をされる。


「あの………。」


「何?」


「なんでそんなに突っかかってくるの?」


「何でって、そりゃあ隣の席で毎日毎日寝られたら心配だよ。」


 なんとも紡木さんらしい回答であった。


「心配はありがたいけど、こればっかりはどうにも出来ないかな。」


「訳アリなのは解ってるけど、そこまでなの?」


「まぁ、うん。実は、母さんが病気で入院してて家、父さんも居ないから家事とか俺1人でやっててさ。妹も居るから結構大変で………。」


「あ、ごめん。ちょっとデリカシー無さすぎた………。」


「そんな申し訳なさそうにしないで。母さんもそんな重い病気って訳でもないから。大丈夫。」


「………差し支えなければだけどさ、家事とか手伝いに行ってもいい?」


「………はい?」


 時間は流れ、俺も話しに流されるまま流れ気がつけば一緒に帰る流れになっていた。


「本当に良かったの?」


「何が?」


「いや、いつものメンバーについていかなくて。」


「いいのいいの。これは私がやりたいことだから。」


 なんとなく疑問をぶつける


「解らないんだけどさ、どうしてここまでしてくれるの?特に今まで接点があったわけでもないのに。それにさ、俺、男だよ?何て言うか、抵抗感とか無いの…?」


「うーん、お人好しなのが私だからかな。それに、城戸くんってなんかちっちゃくて可愛いし。」


「なっ!?」


「あ、気にしてた?」


「いや、いいさ。別にもう慣れっこだし………。」


 チラッと紡木さんのほうを向く。目を見ようとすると少し目線が上がる。正直悔しさはある。


「強がってるねぇ。」


「強がってないし…。」


 久しぶりに、賑やかな下校を経験した。たまにはこう言う絡みも悪くは無いな。そう思いながらその道を歩く。

 十分と経たない内に家が見えてくる。


「ついたよ。」


「え?めっちゃ近!?遅刻とか絶対無いじゃん!羨ましい!!」


「まぁ、そうだね。」


 扉を明けながら「ただいま」と、恐らく帰ってきているであろう妹に呼び掛ける。と、ちょうど自室から出るところだったようで目があった。


「ども。」


 紡木さんが軽く手を振る。何も知らない妹の表情は段々と驚愕のそれに変わっていく。


「兄貴が…彼女連れてきおった………。」


 そう呟くのであった。

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皆に優しいギャルは俺にも優しい 烏の人 @kyoutikutou

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