(シリーズ8本通読した上でのレビューです)
あなたはご存知だろうか? あの、KACの8つのお題をひとつひとつクリアしながら、1本のミステリーに仕上げるという、壮大な偉業を成し遂げた方がおられることを。
実際問題、こんなのどうやって書けるの、と思ってしまうのは、当レビュー筆者がミステリー書けない人間だからなのか。今ならもう8本仕上がってしまっているのでつい気軽に拝読してしまうが、これ、KACの期間中に、次のお題を待ちながら順次執筆されたものなのだ。たとえ事件のおおまかな構想があったとしても、次のお題によっては根こそぎボツになる危険と隣り合わせ。猟奇的な殺人事件の真相は、謎を追う主人公の安否は、当の作者様が一番わからない、という事態の連続だったと思われる。KACはもう終わってしまっているので、これから読む人は、そんなハラハラ感と「今回のお題は何だったか」を念頭に置いて読むと、より一層のスリルが楽しめます。本作は本来、8回にわたるお題小説だったのですよ(大事なことなので2回書きました)。そしてきっちり、ミステリーに仕上がっている(つまり本作だけでなく1から順番に読まないと意味が通らない)。ミステリーってことは、ちらちら伏線を張りながら進める必要があるはずなのに、進路は次の未発表お題だけが知っている…本当に、どうやったら書けるのか、説明されても実践できる気がしない。あらゆる意味で、最初から最後まで圧倒されっぱなしだった。スゴイ。