黄金の鳥【KAC20246トリあえず】
深川我無
金運ブチ上げ黄金鳥を探せ!
「はぁ…どっかに大金落ちてないかしら…」
無精髭に紫のアイシャドウ、筋骨隆々の逞しい躰とカモシカのようなスラリとした脚に生えるスネ毛。
そのどれもが今日はいささか頼りない。
流石のオカマザムライも、先般寄って集って皆に言われた貧乏ザムライが少々堪えていると見える。
「ならさ、探してみる? 黄金鳥!」
さくらの言葉に金ちゃんの耳がピクピクと反応した。
「何よ? その黄金鳥って?」
さくらはあぐらを組んだまま、ラップトップの画面を金ちゃんに見せて言った。
「なんかNEO歌舞伎町で話題になってるらしいよ。捕まえたら金運がブチ上げるラッキーバードなんだって。とりあえず探してみる?」
その言葉に金ちゃんはガバリと立ち上がり、さくらに顔面をググイと近付けた。
あまりの勢いと、濃いオカマ顔にさくらは思わず後ろにのけぞった。
「な、何!? 近いんだけど!?」
「あんた…二度とその言葉を口にするんじゃないわよ!?」
「はぁ!?」
さくらは意味不明の言動に戸惑いながらも金ちゃんの言わんとすることを考えた。
そして一つの答えに行き当たる。
「そうだよね……。武士は楽してお金稼いだりしちゃ駄目なんだよね……。……ごめん……なさい……」
「ちがーう!!」
金ちゃんはそう叫ぶと立ち上がり拳を握って天を仰いだ。
「へ?」
「いい? 言葉が成ると書いて誠。言った言葉は誠になるの!! あんた…間違っても二度とトリあえずなんて言うんじゃないわよ!? それすなわち鳥逢えず……黄金鳥に逢えなくなったらどうしてくれんのよ!?」
予想外の叱責にあ然とするさくらを残して侍は玄関に立つ。
「行くわよさくら!! 金運ブチ上げ鳥……それがしが討ち取ってくれるわぁあああ……!!」
「ちょ、ちょっと!! 待ってよ!? そっちなの!?」
血眼の侍が少女を背負ってNEO歌舞伎町の街を飛び回る。
花街、露店街、果ては怪しい裏路地まで……
血眼のオカマが空を舞う。
やがて太陽は西に傾き、黄金色の黄昏が訪れたが、黄金鳥の影すら見つからず、二人はとぼとぼと家路に付いた。
「そんなに落ち込まないでよ……たかだか眉唾ものの噂じゃん」
肩を落とす侍の背中をさすりながらさくらが言う。
しかし侍は肩を震わせ呟くのだった。
「面目ござらん……欲に目が眩んだ挙げ句、なんの成果も無しに一日を棒に振るなど武士の名折れ……かくなる上は……それがし、身体を売ってお足を稼ぐ所存……!!」
「誰も買ってくれないよ」
「なんですってぇえ!?」
目をひん剥いて叫ぶオカマを無視してさくらは思わず声を漏らした。
「あれ」
そう言ってさくらが指差す先に、金ちゃんも渋々視線を移すと思わず口をあんぐり開けた。
「うそ……?」
そこにあるのはオカマバー『ミッドナイト・ルージュ』の看板と、看板の横に吊るされた鳥籠。
その鳥籠の中ではブサイクな顔をした黄金の鳥がグエグエと不気味な歌声を披露していた。
二人があ然としていると、カラン……とドアベルが鳴り、中からママが姿を現す。
「なんだい? 二人とも変な顔をして?」
怪訝な顔で言うママに金ちゃんが詰め寄った。
「ママ!? この鳥どうしたの!?」
「近所の爺がくれたんだよ!! 金運がブチ上がるラッキーバードだとか何とか言ってね!! 厄介者を押し付けやがって……穀潰しが増えただけだよ!!」
「グエグエ」
さくらと金ちゃんは思わずその場にへたり込み、顔を見合わせた。
二人は力無く笑ってから、声を上げて大笑いした。
なんてことはない。
幸せの青い鳥も、金運ブチ上げ黄金鳥も、直ぐ目の前にいたのだ。
いつだって幸せは、気付いていないだけで、手の届く所にある。
大笑いする二人にママは目を細めながら、黄金鳥に餌をやった。
「グエ〜グエ〜」と、嬉しそうに鳴く鳥が、二人の金運をブチ上げたかどうかは、また別の機会に……
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ここまでお読み頂き、誠に感謝仕り候…!
これは黄金魂の中で巻き起こる、激しい戦いの一幕にて御座候。
黄金魂〜ゴールデン・スピリッツ〜
本編が気になったそこ御仁…!!
べっぴんさんに色男…!!
是非ともリンクをクリック下さり
黄金色の魂の輝き、その目にしかと焼き付けて…おくんなまし〜!!
https://kakuyomu.jp/works/16818023212771832265
黄金の鳥【KAC20246トリあえず】 深川我無 @mumusha
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