第27話 もう一つの世界

僕らはサカモトさんをかばいながら、別の空間に移動した。

足を踏み入れた瞬間、明らかに違う世界だと分かった。

「シャ、ここはどこだ?」

「ここは・・・」

「あっ、サカモトさんがいない!

さっきまで一緒にいたのに。あれー?」

「サカモトはあそこだ。」

シャが指指した先にたくさんの人がいる。

「えっ?あの人、織田信長?あっちはアインシュタイン?ベートーヴェン?

シャ、ここは?」

「ここは知恵の世界だ。すべての生命体の知恵がこの世界から生まれる。

選ばれしものだけで構成されている世界だ。」

僕は周りを注意深く、見直した。

「知恵の世界ね。もちろん歴史上の知っている人物もいれば、全く知らない顔もある。

結構ごちゃごちゃだな。サカモトさん、もう輪の中にいるようだ。」

「スバル、この世界の住人は基準がある。

生命体の根源だからだ。

AIロボのK・M・Iがサカモトをねらっていたのは、ここの住人になる脳だと知って狙っていたようだ。K・M・Iは完全なる人間になることを望んでいる。」

「そうなんだ。しかしシャ、不思議だ。ここは年代も国も違う人達がいる。時間の観念はないのか。」

「ここは無の世界。もちろん時間など存在しない。死も存在しない。それに時々、亡くなってもカラダが出て来ないことがあるだろう。織田もそうだが、基本こちらの世界に来ていることが多い。もちろん、偉人などの場合が多いがな。

それに偉人が消えた場合、歴史が動く。

時を動かす俺様、黒い影Xがかならず、絡む。

世界は広い。時間は帯のように長い。

どの時代に飛んでも偉人は必ずいる。

そこにいる。

生命体の根源を守るために俺様がいるんだ。

少しは理解したか、助手、スバル。」

「目の前のこの光景を見せられたら、うん、としか言えないよ。

正直、凄すぎて言葉がでない。」

「スバル、驚いてばかりいても、困る。

お前の運命はあの日、オランダ坂で俺様と目が合った時点で決まっていたのさ。

スバル、よく見ておくんだ。知恵の根源は多種多様から生まれる。

時間は関係ない。時間はそこに存在しないのだから。」

「シャ、ここは新しいことを生むための世界なんだよな。

僕らの仕事は世界の知恵の根源を守ることなんだよな。

責任重大だな。」

「スバル、今頃気づいたのか。遅いぞ。すべては、つながっている。

今はAIロボのK・M・Iは敵だ。奴は生身の生命体の根源をねらっている。

しかし、そう、遠くない未来にK・M・Iも、もしかすればこちら側の知恵の根源の世界の輪のな中にいるかもしれない。」

「スバル、スバル、集合時間だぞ。行くぞ。」山内の声。

気づくとオランダ坂のカステラ店にいた。

白昼夢?を見たのか。黒猫が僕の前を横切る。「シャ!」

「またな。スバル。」黒猫は振り向かず石段を登って行った。

教会の鐘が鳴った。   完





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とりあえず・異世界へ飛ぶ・オランダ坂 京極 道真   @mmmmm11111

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