鳥逢えず・・・

アほリ

鳥逢えず・・・

 あんなに居た鳥達は何処へ行ってしまったのだろうか?


 僕がバードウォッチングを趣味でやっていて、これ程鳥達を出逢えなくなる事は起きなかった。


 鳥の姿は疎か、囀りや鳴き声さえも聞こえなくなってしまった。


 朝のスズメやヒヨドリの鳴き声が聞こえない。


 公園のカラス達も見掛けなくなった。


 皆何処へ消えてしまったのか?


 僕には憧れの探鳥地があった。


 北の大地の湿地のタンチョウが恋のダンスをしたり優雅に飛んでいるのを、ひと目でも観たかったのに・・・


 ショックだった。


 あの広大な湿地の上にソーラーパネルが敷かれていた事を。


 ここは特定自然保護区だった筈だった。

 何でメガソーラーパネルが1面に貼られるのか?

 オカシイ!!これは絶対にオカシイ!!


 僕がよく行く探鳥地、

 1面の干潟が拡がり、湿地にはシギやチドリ達が群がってチョコチョコ歩いている。

    

 しかし、ここに今度は高速道路が建設される計画があり、やがて埋め立てられるのは時間の問題だろう。


 都会の公園も僕の探鳥場所だ。


 いろんな小鳥を観るのが愉しかったのに・・・


 何で公園の木々が大量に伐採して、公園内にハコモノのビルが建てられるのか?


 身近な野鳥だけでなく、人々の憩いの場を消してどうするんだ?


 僕は山歩きをして、オオタカやキジ達に逢いに行くのも愉しみだが、

 最近になって山林が無惨に切り開かれて、そこにメガソーラーや風力発電の巨大な風車が建てられるのが目立つ。


 その風力発電の風車で、ワシやタカ等の野鳥が巻き込まれて命を落とした死骸をみつけてが激しいショックを受けている。


 そして、近年の鳥インフルエンザの蔓延だ。


 鳥インフルエンザに感染して命を落とす鳥達が増加して畏怖している。


 そして、鳥インフルエンザが人間に伝染ると言われると、鳥達に嫌悪する人々が増えて鳥達に危害を加えて殺そうとしたり軋轢も・・・


 こんな時代だ。鳥達の受難の時代だ。


 この鳥達には無慈悲な世界だからこそ、鳥達に逢いたくなる。


 無性に逢いたくなる。


 無性に・・・


 しかし、鳥逢えず・・・ 


 鳥に逢いたい・・・


 鳥に逢いたい・・・


 鳥に逢いたい・・・


 鳥に逢いたい・・・


 禁断症状が出る。


 鳥が飛ばない空を見上げる。


 近所の公園に立つ。ハト達が群がらないアスファルトの地面。ムクドリが群がらない枝の斬られた木々。


 ここには人間しか見掛けない。


 スズメが居た・・・しかし・・・野良猫にやられている。

 ショックだ。僕は猫を家で飼っている。

 しかし、外に生きる猫達は鳥達を狩る。

 

 ノネコ達が貴重な鳥の種を滅ぼすと聞いた。

 猫と鳥は共存共栄が出来ない。僕はどっちの味方だろうか? 


 

 じゃあ、僕にとって『鳥』とは?


 

 『癒やし』の存在?




 それとも・・・



 僕は野山や海辺を駆けた。


 僕は探した。


 鳥達を探しに。


 カモ達の泳いでいた池はもう埋め立てられて、宅地になっていた。


 小鳥達の囀る雑木林も悉く伐られて、ここも宅地になっていた。


 ここに住む人々は、此処に鳥達の住む場所を奪って住んでいる自覚はあるのだろうか?


 此処に住んでいた鳥達は、何処へ消えたのだろうか・・・?


 鳥達よ、何処へ行く・・・


 生きる場所を人間達に奪われて、皆何処へ行ったのだろうか・・・?


 寂しい・・・


 寂しい・・・


 寂しい・・・


 寂しい・・・


 僕は空を見上げる。


 鳥は飛ぶ姿が無い。


 


 また改めて、僕にとって『鳥』とは?


 

 『友』である存在?



 それとも・・・



 『仲間』である存在?



 失ってからやっと知る『鳥』というかけがえのない存在。


 『癒やし』であり、『友』であり、『仲間』。


 逢いたい・・・


 『鳥』に逢いたい・・・


 『友』に逢いたい・・・


 『仲間』に逢いたい・・・


  しかし、それを阻むものは『鳥』という存在をぞんざいに扱う人間達のエゴであり、

  

 身の回りさえ良ければ、


 己さえ良ければ、


 『事なかれ』が、この空から『鳥』を消したんだ。きっと。


 悔しい・・・悔しい・・・!!


 『鳥』よ、何処へ行ったんだ!!


 僕の『友』よ!!


 僕の『仲間』よ!!


 自分を置いて!何処へ飛んでいったんだ?!


 尚も僕は『鳥』を探した。


 空を探すだけでなく、建物の隙間の巣を探し、地面や緑地に鳥の羽根や羽毛を探し、


 『鳥』が居た在り処を探した。


 しかし、鳥に逢えず、


 鳥に逢えず、


 鳥逢えず、


 とりあえず・・・


 もう諦めよう。

 

 もう『鳥』はこの世から消えたんだ。


 きっとこれも、淘汰だ。


 人間が生きやすいように、生態系を書き換えたんだ。

 

 丁度、人間がニホンオオカミやニホンカワウソを人間が生きやすいように滅ぼしたように、鳥達も人間が生きやすい世界の構築で犠牲になったに違いない。


 こんな時代だ。共存を求めず、排除を求めた結果の時代に生きる。


 でも、


 逢いたい・・・


とりあえずでもなく、本当に『鳥』に逢いたい・・・


『鳥』に・・・



 一夜明けた。


 僕は窓を開ける。


 やっぱり、鳥の姿も声もしない。


 今日も寂しい朝を迎える。


 ゴミ出しの日だ生ゴミの日。

 僕は生ゴミの袋を抱えて、ゴミ捨て場に。




 バサバサバサバサバサバサ!バサバサ!!



 一瞬、羽音が聞こえてきた。


 目の前に、黒いシルエットが飛び交っているのを見かけた。




 かあかあかあかあかあかあ!!




 この声は!!




 かあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあ!!



 カラスだ!!


 カラスの群れが、生ゴミの山に群がってる!!


 『鳥』が居る!!ここに、確かに『鳥』は居るんだ!!


 やっと『鳥』に逢えた!!


 良かった!!僕は『鳥』に出逢えた!!


 俺は生ゴミの袋を持ったまま、目頭が熱くなり涙を流して立ち竦んだ。

  

 電線にはスズメが!!


 今まで何処に居たんだよ・・・


 ずっと探してたんだ!!君達を!!


 鳥に逢いたい!!もっと僕は何時までも君達の『友』であり『仲間』なんだ!!






 〜鳥逢えず・・・〜


 〜fin〜

 

 



 

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鳥逢えず・・・ アほリ @ahori1970

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