トリあえず

藤泉都理

トリあえず




「トリを和えますか?和えませんか?」


 人工知能を備えた自律機械、二手腕二足歩行の家事型ドロイド、POC3は、同じく人工知能を備えた自律機械、二手腕二足歩行でありながら、戦闘型であるドロイド、BTL9に話しかけた。


 食用クラゲときゅうりの中華サラダに、トリは和えますか、和えませんか。


 こいつは何を言っているのだろうか。

 BTL9は疑問を抱く。常に。

 ドロイドの中には人間の食べ物をエネルギー源としているものもあるが、自分もPOC3もそうではない。

 地面の中に流れる電気をエネルギー源としているのだ。


 家事型ドロイドであるPOC3は確かに、食材、料理のデータが順次更新される形で、インプット、蓄積されているのは理解できる。

 が。

 戦闘型ドロイドである自分にもそのように装備されているのは、甚だ理解できない。


 POC3も自分も軍から捨てられた身である故、当てのない旅への同行は許したが、同じく食材、料理のデータがインプットされていると知ってから、このように実際に作りもせず、また、食べもしないのに時折、料理名を告げては、食材を入れるかどうするか二者択一で尋ねてくるのには、辟易していた。

 けれども、答えない事には永遠と尋ねてくるので、適当にいつも言っていた。

 今日もまた。




「トリは和えない」

「そうですか。BTL9さんは和えないのですね。ではまずは食用クラゲときゅうりの中華サラダを作ったのち、別々の容器に盛り合わせて、BTL9さんはトリ和えず、私はトリ和えに致します」

「勝手にしろ」

「ええ。ありがとうございます。BTL9さん。答えてくださるので、俄然創作意欲が増します!」

「そうかい」


 やはり、家事型ドロイドなので、誰かに料理を作って食べてもらいたい欲求があるのだろうか。


(軍以外に人間はいないとの情報だったが。もしかすると)


 トリあえず、当てのない旅に一つ目的ができたな。

 BTL9はPOC3に尋ねてみた。

 人間を探してみないか。と。












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トリあえず 藤泉都理 @fujitori

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