十九 一番槍

「う…ぁ…は、ふぁ…」


 十兵衛の口から舌を伝い唾液が注がれる。


「ゆき、飲め」

「ん、ぷ はぁ」


 少し笑いながら十兵衛は大きな体で篤実を押し潰すように覆い被さり続ける。唾液を注がれる行為の倒錯に、口の粘膜がむず痒く、篤実は涙を滲ませた。


「おぼれる、じゅうべぇ」

「すまねぇな」


 甲冑を着て走った後のように頭がくらくらする。いつの間にか十兵衛の手が手首から離れて、胸を撫でている。


「あ んぁ……」


 撫でるだけでなく、胸板の外側から肉を寄せ上げるように揉んで、指の腹で乳頭の位置を探っている。


「やら…」

「此処か」


 嫌だというのに十兵衛は篤実の乳首を探し当てて、口を寄せると尖った肉粒を含んだ。


「ひうっ…んひっ」


 十兵衛の頭を掴み、漏れ出る声に恥じ入りながら両脚がビクンと跳ねてしまう。斯様にはしたない声を上げて、頬は焚き火に顔を近づけたときのように熱くて仕方ない。十兵衛の指が胸の肉を優しく揉んで、それだけでもたまらない。

 ちゅっと音を立てて吸い上げられた乳頭を、滑らかな舌がチロチロと行き交う。後頭部を床に擦り付けるようにいやいやと首を横に振った。


「…他の、男の事など忘れさせてやる」

「ひ、ぅ♡ はっ」

「己の有り様で悩む時間が無くなりゃあいいじゃろ。なあ、ゆき」

「だ、が…じゅうべっ え…」


 十兵衛は再び篤実の乳首を吸い上げながら、今度は引き締まった下腹を、篤実の股座を磨り潰すように押し付け、体を揺さぶった。


「儂に出来ることは、話を聞くことと、槍を持つことと……お前を抱くことぐらいじゃ」


 ぐちゃぐちゃと股座が音を立てる。毛皮に覆われた十兵衛の下腹と、男の役目を果たせない篤実の柔らかな陽物が、糸を引くほどに濡れて擦れ合っている。

 十兵衛が、唇から熱い吐息を漏らしながら再び顔を上げた。


「食い千切っちまいてえ。あの、若君が……儂にこんな姿を晒しとるんじゃ」


 その間も手は胸の肉を解すように揉んで、篤実の下腹はいつの間にか硬く反り返り脈打つ雄の証を擦り付けられていた。


「ふあ…ぁ…」


 頭の中がふわふわとする。陽物の裏側がキュウと痛いほどに切なく、雌の衝動で自分が溶けていく。


「じゅう、べえ…」

「ゆき、四つん這いになれるか」


 十兵衛は穏やかに尋ねるが、既に体は抱きかかえられ篤実は体を捻るだけで良かった。最初は両手を突いたが、すぐに肘を折ってより尻を高く掲げる姿勢を自ら取る。


「は…はぁ……ぁ んあぁっ」


 首の付け根から背骨を、生暖かく濡れたものが這い下りる。


「じゅうべっ…じゅーべぇ…」


 何処も彼処も触れられると気持ちよくて仕方ない。成人した男が、ぐずぐずと泣きじゃくるほどに。


 涙を零すのは目元ばかりでなく、震える陽物も同じであった。

 十兵衛の手が、膝を突いて尻を上げる篤実の太腿を尻へ向かって撫で上げる。背中を舐める舌は、尻の谷間に差し掛かっていた。


「今日は、ゆっくりと解していこう」

「っ…やら…こあい…きもちよすぎるぅ」

「は…ゆき、怖くなどない。儂がおる」


 篤実の背が温かいものに包まれる。十兵衛が己が着ていた衣を脱いで、篤実の背を覆うように被せたのだ。


「じゅうべえ…」


 使い込まれた着物は目は粗いが柔らかく、十兵衛のにおいが染みついていた。それをたぐり寄せ、においを嗅ぐ。


「まだ怖いか、ゆき」


 その上から、十兵衛の太い腕でもう一度抱き締められた。

 肩越しに振り返りながら、篤実はゆるゆると首を横に振って答えたのだった。


「あ、あっ ふ く、んっ♡」


 ちゅ、ぴちゃ、と音を立てたかと思うとぬるぬると内側に入り込む十兵衛の舌。篤実は十兵衛の衣を握り締めながら、その端を噛んで尻の孔をキュンキュンと蠢かせる。

 舌は肉孔だけでなく、蟻の門渡りや陰嚢もねぶる。さらには太腿の付け根や尻の谷間を行き来して、篤実の奥まった所は今やすっかり濡れそぼってしまった。


「ふ――ん」


 かと思うと、十兵衛は不意に篤実の尻や太腿を軽く噛んでじっと動かなくなる。それが切なくなって焦れた声を溢すと、再び下肢を唾液塗れにされる。


「じゅうべ…おれ…とけて……しまう…とけてしまう♡」

「は…そうじゃ。溶けたお主を、儂が啜っている」


 喉奥で十兵衛が笑った。


「じゅ、うべ…」

「どうした」


 十兵衛は篤実の仕上がり具合を確かめるかのように、陽物の付け根から臍の下へ掛けて掌を這わせた。


「はぁ♡ は ぁお♡ お♡」


 撫でられた腹の裏で何かがキュンと疼いて、また篤実の股座は熱い潮を噴き出してしまう。きっと十兵衛は音とにおいで察しているのだろう。


「儂には、お前が孕みたがっているように見える、ゆき」

「は はぇ…は♡ はりゃみ ぅ あ♡」

「びゅうびゅうと小便を噴いて、ここに孕みたい雌がいるぞと示す獣と似ている」


 篤実の背に十兵衛の体温と重みが掛かる。同時に尻の谷間に熱い塊が当たり、火照り濡れた肌を削るように前後に揺れる。


「おれ…は…めすじゃ…にゃ、い」

「ああ。雌じゃあない。ゆきは立派な武士じゃ」


 首筋に鼻息が触れてぞくぞくと背筋が甘く痺れた。次に十兵衛の唇が肩に触れ、先刻掛けられた衣を避けて甘く歯を立てられる。


「んぁ…あ…ひゃあ♡」


 熱い口中に覆われた皮膚に、痛みを与えながらも傷を作らない程度の力が加えられた。その痛みに対して篤実が返したのは、腰を反らして尻を擦り付けることであった。


「儂ゃ、餓鬼がきに手を出す鬼畜じゃねえ。――お主が男として…儂と対等じゃから、抱いて……壊したいと、思っちまう」


 強請ねだる篤実を宥めるように、十兵衛の片腕が腰を抱いた。はぁ、と零れた十兵衛の吐息から、飲んだ唾液と同じにおいを感じる。


「それじゃ…ゆきの矜持を守ることにはならんか?」


 十兵衛の声が耳元から、脳へと染みる。低く、少し掠れていて、股座の昂ぶりなど嘘のように穏やかだった。


「じゅうべえ…――十兵衛」


 胸が苦しい。如何どうしてか。


「こわれたら…おれは……どう、なって…しまう」


 腹の奥が切ない。雄が欲しい。


 十兵衛が欲しい。


「治るまで、儂が、傍に」


 そして、ぷっくりと火照った粘膜の肉壺が押し拓かれた。


「んぁ、はぁ…ああぁ♡」

「息をッ…吐け、くぅ」


 それは己と同じように熱くて、しかしずっと硬い。中へぐぷりと潜り込んで、馴染み一つになったかと思うとまた一段と奥へ進む。その度に腹の裏からふくはぎまでぞわぞわと冷たいのだか熱いのだかわからない感覚が広がって、目の前が白黒にちかちかする。


「ぉ、お゙♡ は♡ へぁ♡」

「ん、そうだ。は…ッ…くそっ」


 十兵衛がぶるりと全身を震わせた。


「こんな、いなんて」


 篤実の腰を抱いた十兵衛の腕が、おもむろにがしっと強張った。ふっと短く息を吐くと、彼は一息に己の雄根を尻肉壺へ打ち込んだ。


「ひっ ぉほっ♡ お゙ぉお♡♡♡」


「は…はっ、くっ」

「らめ ひっ じゅうべ お゙♡ お゙ッ♡」

「駄目な、わけがッ…ふうっ うっ」

「お、おくまで ぅ あ゙♡ おまえの、あれが きちゃ う♡」


 息が苦しい。一生懸命に呼吸しているのに頭がクラクラして、酸素が足りない。


「おまえの…尻孔が、食い絞めてくるんじゃ」

「ほ、ぉっ…じゅーべ♡ へぅ…え♡ は♡」


 毛皮越しに汗の熱気がむわりと伝って、ぐちゃぐちゃに濡れた肌の上で擦れる。それに、弾むように胸が動いている様子が背中に押し当てられた分厚い胸筋から伝わる。


「しゅ、き、ひっ♡ あっ、しゅきぃ♡」

「それは、儂をか、それとも」


 尋ねながらも十兵衛の腰はガツガツと揺れ、篤実の中を一際深く突き上げた。


「んひいぅっ!」

「まぐわいが、か。ゆき」

「おっ、おぉ――ほ」


 頭の中が真っ赤に燃えて、手も足もガクガク震える。びゅうびゅう潮を吹き、一人で訳のわからない強すぎる刺激に涎も涙も垂らしていた。

 腹の中にはまるでこの腹の主人であるかのように腹の中に居座る十兵衛の剛直。


「……ゆき」


 ぐるるる…と獣のように喉を鳴らす彼に、篤実は四つん這いから胸を抱き支えて体を起こされた。自らの汗や体液で肌が滑る。それをいともせず十兵衛の大きな掌と太い腕が捕らえていた。


「はぁ…ゆき。…口吸いを――して、くれねえか」

「ふぁ…は…ぁ? う?」


 抱き起こされた篤実は、十兵衛に背を向けたまま胡座を掻いた彼の膝の上に引き寄せられている。

 体に力が入らず、ぐずぐずに爛れた媚肉管にさっきまでとは異なる方向に力が加わる。

 すると薄い腹のなかで太く熱い雄肉棒がずぬぬぬ…と更に深く肉壺を押し上げるのだ。


 そんな最中に、十兵衛はもう一度己の主に控えめに請うた。


「篤実殿の一番槍に…口吸いの褒美を頂けませぬか」

「くち…す…い……? ふぁ……あ……」


 十兵衛の腕の中は温かい。

 大きな十兵衛が、体を丸め小さくするようにして、四肢で篤実を腕の中に大切に抱えていた。


「よ……の……いちばんやり……」


 体を捻ると、中でまた雄杭の当たり方が変わる。ぎゅぷっ♡と恥ずかしい音を立ててひとりでに媚肉管がうねって魔羅をしゃぶってしまう。


 ぶるッと全身が震えて、手も覚束ない。


 顔のすぐ傍で息を吐く十兵衛の頬にどうにか触れて――。


「そなたが すき、だ」


 大きな唇に口付けた。


「ッ――――!」

「ひうあああっ」


 ビクンッ! と腹の中で大きく魔羅が肉壁を抉った。


「い、く……」

「んぅ、ひ♡ ぁ、あ゙♡ い、いかないれ♡ おれをおいていかないでぇ♡」

「ああ、行くわけないじゃろ、ゆき。お前の中に儂の――ッ」



 ぴったりと吸い付いた腹の中から感じる、男の熱が駆け上がる前触れ。そして続け様に齎される奔流。



「んうううっ♡ ふうぅ♡ ううううう♡」


 またそこから、十兵衛の射精が終わるまでたっぷりと一時間はかかっただろうか。


「は……ふぁ……あ……」


 十兵衛の種汁で腹を膨らませた篤実は、全身を汁という汁で汚して力尽きていた。








 翌日二人揃って風邪を引き、天目屋に白い目で見られたのは当然のことだった。

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