十三 雪を喰らう

「あ、ぅ……はっ!」


 待ち侘びて、気が狂いそうだったゆきの中へ、埋める。


「お主を殺すのは儂じゃ、ゆき」

「ふ、あ… ぁ、 あ じゅうべッ え」


 男色の作法に従うなら、十兵衞のような特に凶悪な逸物を、ならしもせずに咥えさせて良いはずがない。


「ゔるッ…ゔ――」


 喉の奥から獣の唸り声が漏れ出す。


 良いはずがない、壊れてしまう。


 しかし十兵衞の逸物は仰向けに脚を開く篤実の中で、肉襞を引き延ばし、己の形へと拡げて、奥を拓くことを止めぬ。


「ふ……うっ」


 張り出した括れまで呑み込ませると、きゅんと窄まる肉管にまるでしゃぶるかのように搾られた。篤実のか細い声が断続的に漏れ出て、十兵衞の征服欲を煽る。口の中には唾液が溢れ、何度もそれを飲み込まなくてはならなかった。


「儂も……まともじゃねえ、ゆき……」

「あ あっ おお、きっ! ふぁ――は じゅうべ、 じゅうべえ――」

「美味いか」


 更に腰を沈めて、柔らかくなった肉道を拓かせる。


「ゆきの、ここは……まるで女の孔のようじゃ。疎い儂でもわかる」

「あ、ああ ごめん な ひゃい おれ…おれの」


 隘路は熱く、なにか塗り込めたかのように潤んで、吾妻形あづまがたがひとりでに蠢くかのような具合であった。


 篤実が、肉壺をはしたなく濡らして、ヒクつかせて、十兵衞を求めている。


「……何を、謝るのじゃ」


 十兵衞が腰から手を離し、篤実の肩を抱き寄せると彼は白い毛皮に顔を埋めながらヒクヒクと肉壺を収縮させた。


「儂の子種で……毎晩此処を、濡らしたい」

「ふ、ふぁ あっ」


 まだ十兵衞の分身は収まりきっていない。更に身体を寄せて、ひとりでに脈打つ砲身を先に進ませる。


 肉襞を押し分けながら媚肉管を引き延ばし、ある程度進めては腰を止めて馴染ませる。


「健気じゃ……ゆきのここは、儂のものを頬張っておる」

「う……あ…は」

「じゃが」


 ずんっ!


「お、ほごぉっ♡ お゙ッ♡」


 十兵衞は一息に篤実の中を突き上げる。薄い胸がビクンと飛び跳ねるように痙攣し、二人の身体の間で少量の飛沫が散った。


「あ゙! とぶ むりっ、とぶぅ♡」

「存分に」


 篤実は声を上げ、太腿を痙攣させ快楽に悲鳴を上げるが十兵衞はまだ手を緩めない。まだ雄の全てを飲み込ませていなかった。


「儂はまだ、これからじゃ。ゆき……ゆき」

「ほ……ぉ じゅ、うべっ ぉほ…おッ」

「はぁ…ぐうぅ」


 篤実の肉壺の奥をズンッ!どちゅっ!と叩く。


「ひ、あっ ころひて…じゅうべ――おれを…」

「ああ……」


 出入りと共に体液が泡立ち、徐々に尻孔から溢れ出す。腰と尻がぶつかり、揺れる重たい双嚢が白い尻を叩いた。


「苦しいか、ゆき」

「ひっ、ほ……おッ!」


 十兵衞は口を開けて喘ぐ篤実の頬を掴み、べろりと顔を舐め上げた。口中へも舌を差し入れて、篤実が涎を垂らしながら伸ばすそれと絡ませる。

 ぬろぬろと軟体が蛇のように絡まり合い、二人の唾液が混ざり合う。十兵衞は篤実の鼻も、涙の味のする頬もべろべろと舐め回し、においを上書きし続けた。


「ッ…はぁ……ゆき、ここを……ひらけ」


 十兵衞は完全に女を抱くのと変わらぬ腰使いで篤実の肉壺を穿ち、拡げた。


「あっ ひゃ♡ ふあ あ゙ー……♡」


 そして、 ぎゅぷっ と括れを越えて十兵衞の切っ先が雄の奥肉部屋へと辿り着いた。

 熱く、うるみ、限界まで引き伸ばされた媚肉管の括れが雁首を締め付ける。菊座も同様に十兵衞の肉茎に吸い付いて根元を離さない。


 昂ぶり、熱い身体から白い湯気が淡く立ち上る様が見えただろうが、生憎と庵にはめくらとその身体の下に覆い隠された男が一人。十兵衞は戦場以上に身体の隅々まで気が巡るような感覚を覚えていた。


「ゆき」


 身体の下へ抱き込んだ、愛しい者の肩から胸を伝い腹まで撫でていく。ここは骨、此処は肉、と、手つきは撫でるというよりも按摩の時のような探るものになる。


 手は下へ、下へ。


「は…んあ♡ はぁ…」


 やがて、肉の下に骨とは違う、ぎっちりと詰め込まれた様な固さを探り当て十兵衞は口角が上がるのを抑えられなかった。


「ここが、おぬしの子袋こぶくろになるんだな……」

「へ…は……」

「何を言うかと思うか。儂もだ。……だが、稚児ややこがならずとも、儂にとってゆきの此処は……子袋じゃ。いや……子種袋こだねぶくろか」

「こだね……ぶく、ろ……♡」


 十兵衞は篤実へ語りかける間、砲身を動かさなかった。息を吐き、先刻腹を探った手で汗ばんだ篤実の額を撫でる。絹糸けんしのような髪だ。強く引っ張れば千切れてしまいそうな。都から己の元への旅路で、この髪が無事であったことを思うと、十兵衞の股座はさらに苛立った。


「じゅう、べ、え」


 篤実が声を震わせながら、もぞもぞと身体を捩る。十兵衞の固い下腹に、しとどに濡れた、芯の入らない篤実の陽物ようもつが押し付けられる。


「どうした、ゆき」

「ん、ぅ♡ は♡」


 態と。態と分からぬふりをする。腹を一杯に十兵衞の分身で満たされ、浅く速い呼吸を繰り返し、涙や涎を溢す度に舐め取られるだけでは満たされないと分からぬ己ではない。


「言うてくれ。ゆきの声で聞かせろ」

「あぅ、あ♡」


 媚肉壁がきゅんきゅんと蠢いてしゃぶられる。このまま動いて思う存分突いてやりたい衝動を、奥歯を噛んでやり過ごしながら十兵衞は大きな舌で篤実の頬を舐め上げた。


「若君に斯様な無礼、腹を切っても足りん。だが……ゆき、ゆき」


 篤実が大きく胸を喘がせ、十兵衞の首に縋り頬へと顔を寄せる。その唇から漏れる吐息は甘く、こぼれる傍から十兵衞の白い毛皮を焦がした。


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