トリハンター
山岡咲美
トリハンター
そのトリと呼ばれる生き物は古代に生きたまぼろしの生物で、二本足で歩き、卵を産み、赤いツノがあったとされている。
俺達はビルと呼ばれる渓谷をぬけ、化石の巨木が立ち並ぶ化石の森へと足を踏み入れていた。
俺達はハンター、常に冒険を求め、常にリスクと隣り合わせの生き方をしている。
「なあククリ、本当にトリなんて生き物が居ると思ってんのか?」
化石巨木の薄暗い森のなか、弓使いのアローが俺に話しかける。
「ああ、そいつはすごい勢いで走るらしいからお前の弓が頼りだ」
アローにはワイヤーとトリモチ付きの弓矢をも持たせた、素早いトリを生きたまま捕まえるためだ。
依頼者はトリを繁殖させて卵かけご飯とやらを復活させるらしい。
生卵をライスにかけて食う食べ物らしいが俺には頭がおかしいとしか思えなかった。
昔巨大昆虫の森で迷い生き残るために虫の卵を飲んだ事があったがそれの味を思い出して「ゲッ!」となった。
「でもさ、本当にそんなやつがいるの? 卵を産むって事は竜とか虫とかと同じだよね?」
槍使いのランサーが先端に網を取り付けた槍を片手に俺に聞いていた。
「ああ違う、トリって奴は、竜や虫みたいに空を飛んだりしないらしい、毎日のように卵を産んで馬鹿みたいに増える生き物らしいんだ」
俺は依頼者から聞いた特徴を話す。
すでに文献が失われてその姿は謎に包まれているが、竜や虫と違って人間の頭ほどの大きさらしい。
(竜か……)
竜には昔竜の渓谷で食われ掛けたがトリは小さいらしいからそこまで危ない事はないだろう。
バサバサバサ!
「何の音?」
ランサーが槍の網を外し、切っ先を頭上の化石巨木の枝葉へと向ける。
パラパラと石の葉が落ちてくる。
「おい、何かいるぞククリ!」
アローが矢じりの付いた矢をその背の矢筒から取り出す。
「大丈夫、ただの虫だ、たぶん小型の奴だ」
俺も両腰の肉厚の片刃当然、ククリ刀に手をかけるが化石巨木の枝の間を飛ぶ奇妙な羽の丸っこい虫を目で追ってそう言った。
よく見ると蛾のようにフサフサの毛で覆われている。
透明じゃない羽は折りたたまれるようだ。
天から化石巨木の葉とは違う奇妙な物がヒラヒラと舞い落ちる。
(なんだろう、化石の葉にも見えるが化石化していない……)
「なんだそれ?」
俺の持つ、なんだか色鮮やかな葉のような物にアローが興味を示す。
「たぶん化石化しなかった葉だろう……」
(珍しいな)
俺はそれを指先でつまみクルクルと回してみた。
「オー」
アローの目が輝く。
「アロー、欲しいならやるぞ」
「いいのか⁉」
アローは俺がそう言った瞬間その色鮮やかな葉をかっさらい、嬉しそうに眺めた。
(子供かこいつは……)
俺はそう思ったが、まあ危険な旅にもやすらぎは必要だ。
「いいなー、ボクもほしいな〜」
ランサーがアローが持つ葉のような物を目で追う。
(ランサー、お前もか……)
「わかった、次に見つけたらランサーにやるよ」
俺は子守でもしてる気分になった。
「ホント? ククリ、絶対だよ! 約束だからね‼」
何が嬉しいのかランサーがはしゃぐ。
(まあいいか……)
俺はこのパーティが気に入っている。
取り敢えずトリとやらには会えていないがきっとこのパーティならなんでもできる。
俺はそう思ってまた歩き出した。
そのトリと呼ばれる生き物は古代に生きたまぼろしの生物で、二本足で歩き、卵を産み、赤いツノがあったとされている。
トリハンター 山岡咲美 @sakumi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます