800文字クッキング

星来 香文子

トリあえず


 なんて難しいお題だろう。

 お題が発表されて、もう三時間も経つというのに、全くネタが思い浮かばない。


 トリあえず。

 このトリの部分がカタカナなのが余計に我々を混乱させた。

 誰だ。

 こんなお題を選んだのは。

 一体、我々に何を望んでいるというのだ。


 一回目の「書き出しが『○○には三分以内にやらなければならないことがあった』」とてもやりやすかった。

 二回目の「住宅の内見」はどう考えても最近話題の間取り図ホラーのようなものを書いて書かせようと狙っているのが見え見えだった。

 三回目の「箱」だって、シンプルであるからこそ色々な捉え方ができただろう。

 四回目の「ささくれ」はおそらく、ちょっとしんみりするような、心のささくれというか、黒歴史を意識していたに違いない。

 五回目の「はなさいで」も、あえて平仮名で表記されていたため、作者としてはそこを「話さないで」「離さないで」「放さないで」と、使い方を変えることができる。


 しかし、この六回目の「トリあえず」は、どう調理すべきか全くわからない。

 まるで、見たことのない食材を用意されて、これで一品作ってみてくださいと料理のしたことのない人間に無茶振りされた料理人になった気分だ。

 トリあえず……鳥会えず……

 鶏和え酢……?


 そうか!

 鶏肉と何か野菜を酢であえた料理の事か!

 っと、そんな意味不明な答えまで出してしまった。


 完全に煮詰まっている。

 どうしようもない。

 けれど、このお題で何か800文字以上書かなければ、せっかくここまで皆勤賞を目指してやってきた意味がなくなってしまうじゃないか!


 考えるのが面倒になって、つい思考を止め、「まぁ、皆勤賞とか別にもらっても意味ないか」とまでなってしまった!!

 今年は八回書けばいいだけ。

 あと三回。

 頑張れ私!!

 諦めるな!!!


 っと、今も必死に考えているが、結局何一つ思い浮かばない。

 そうこうしているうちに、800文字のエッセイが出来上がった。

 トリあえず、これでいこう。





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800文字クッキング 星来 香文子 @eru_melon

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