トリさんに会えると思っていたのに……

丸子稔

第1話 なにー! 完走してないだと?

(よし! これで完走したぞ!)


 俺は小説投稿サイト【ヨムカク】にて開催中の『YAC』通称ヤックのお題8個を書き切ったことで、大いに満足していた。


 このヤックでは、すべてのお題をクリアすると皆勤賞としてトリのぬいぐるみをもらえるため、俺はそれ欲しさに難題続きだったお題に果敢に挑み、クオリティは別として何とかすべてのお題で物語を作ることができた。


(とりあえず、やれることはすべてやった。後はぬいぐるみが送られてくるのを待つばかりだ)


 俺は二週間後に発送されるトリのぬいぐるみを心待ちにしながら、日々を過ごしていた。



 しかし、その後二週間が経過しても、ぬいぐるみは送られてこなかった。

 まあ、少しくらいは遅れることもあるだろうと、あまり気にしていなかったのだが、あるヨムカクユーザーが自身の現況ノートに、トリのぬいぐるみの写真を載せているのを見て、俺は愕然とした。


(はあ? なんであの人のところへはもう送られているんだ? もしかして、一斉じゃなくて場所が近い順に発送してるのか?)


 俺の住んでいるところが九州のため遅れているのかと思っていると、その後一週間が経過しても、送られてくる気配はなかった。


 さすがに遅すぎると思った俺は、運営にまだトリのぬいぐるみが送られてこないことをメールした。


 そして、翌日運営から送られてきた文にはこう書かれてあった。


『残念ですが、五回目のお題【11回目】の物語が、お題とほぼ関係のない内容だったため、完走が認められませんでした』


(なんだと? ……えーと、たしかこの時は、友達10人とじゃんけんをして、決着がついたのが11回目だったという話を作ったんだよな。確かにちょっと強引だとは思うけど、他の奴らだって同じようなもの書いてたじゃないか!)


 納得できなかった俺は、その旨をメールで送ったが、運営からの返信はなかった。


「ごめん、トリ美。せっかく新しいつがいに会わせてやれると思ったのに」


 結局俺は、先月ボロボロになって捨てたトリ夫の代わりを、トリ美にあてがう事ができなかった。 


  了


 


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