第5話

「そういうことか……」

 とぽつりと呟き、みづきは車のシートにどっしりともたれた。


 この心霊スポットで霊を見たという詳細な情報が出てこないのは、話してはいけないからだと納得した。話しても誰も信じないし、話せば話すほど自分が不利になるのだ。


 ゆっくりと走行する車の窓から桜の木が見えなくなると、みづきはしかと自分に言い聞かせた。


 もう二度と紗枝さえのことは話さない。

 最初から紗枝はいなかったのだ。

 

 けれど……、

 紗枝の記憶だけは、この手から生きていこう、と心に決めた。



     〈了〉

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大声禁止 佐藤 楓 @erdbeere2023

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