第4話

 みづきはネットであの公園の情報をかき集めた。


 どれも噂止まりではあるが、「防空壕を埋め立てた場所」「静まり返った夜に誰かが大声を上げると、それを止めようと大勢の霊が集まってくる」「奴らに取り込まれたら、現世には戻れない」「慰霊のために桜の木が植えられた」などと書かれてあった。


 翌朝、学校へ行き、「紗枝さえはいない?」「紗枝を知らない?」と先生やクラスの子たちに聞いて回ったが、「誰、それ?」と一蹴されるばかりだった。


 毎日一緒にお弁当を食べていた子たちに紗枝のことを何度も訴えたが、最初こそ笑って聞いていた彼女たちも「いい加減にしてよ」と煙たがるようになった。


 みづきの家にも行ったが、「そんな子はうちにいない」という。

 警察にも行ったが、誰もみづきの話を信じてはくれなかった。

 それでも、みづきは紗枝のことを話し続けた。



 数か月後、みづきを心配した両親が半ば強引にみづきを車に乗せ、病院へ行くこととなった。


「私は嘘なんてついてない。頭がおかしくなったわけでもない。紗枝は本当にいた!」

 と車内で狂ったように言い続けた。


 だが、偶然あの公園の前を通り、みづきはぴたりと口をつぐんだ。

 入り口の看板に「大声禁止」でも「大きな声で話さないでください」でもなく、ただ一言「話さないで」と書かれてあったからだ。

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