話さないで

ゴローさん

 

 「ねぇねぇ」

「ん?どうしたの」

彼女が甘えてくる。

今、俺たちはホテルのベットの上。

お互い生まれた時の格好をしている。


お互いのことを確かめ合い終わった後、お互いに正面から抱きしめ合っていた。


「あのね、言いにくいんだけどね。」

俺の胸に顔を埋めながらもじもじいう彼女。

なんというかわいらしい生き物なんだろう。


そう頭の中で考えながら抱きしめる力を強くして、頭を撫でることによって返事を伝える。


俺たちみたいにお互い深く愛し合っていたら返事などしなくても大体のことは伝わるようになっている。


もちろんこれは思い込みなんかじゃない。

現に今、彼女もそれを受け取って俺に顔を向け直す。


どんな質問が来るのだろう。

結婚の時期をいつにするか聞いてくるのかな。

それとも来月のカップル四年目の記念日の予定を開けておいて欲しいとかかな。

まぁ、今日の夜ご飯をどうするか聞いてくるだけかもしれない。


でも、どれを聞いてくる彼女も想像するだけで身悶えそうになるくらい可愛い。


「スマホの会話履歴見せてくれない?」


どんなことを聞いてくるのか、、、って、え?

「スマホの会話履歴、、、?」

「うん、スマホの会話履歴。」

「、、、なぜ?」


突飛な質問にびっくりした僕は思わず聞き返してしまう。


それに対して、彼女は至極当然と言わんばかりに、

「知りたいから?じゃダメ?」

と言ってくる。


かわいい。

間違いなくかわいい。

だってこれ!独占欲っていうやつじゃないの?

うちの彼女独占という言葉から無縁だなって今のいままで思ってきたけど、ついに俺に対して独占欲を向けてくれるようになった。


僕は先ほどまでの二割増でニヤニヤしながらスマホを持ってくる。


そして渡そうとした瞬間、僕はあることを思い出した。

ーー履歴の1番上、女性だった、、、!


女性といっても、出張の中であった人でほとんど仕事の中でしか会わない関係なのだが、彼女からしたら知らないことだ。


その一瞬の逡巡を彼女は見逃さない。

「誰かと話してるの?」


さっきまでの声から5℃くらい落ちたのかと思うくらい冷たい声で言ってきた。

「他の女の人と話さないでよ、、、」


かといって怒るわけではなく、ただ失望したように俺のことを見上げてくる彼女。


そんな表情を彼女がしているのに何もしないなんて、

「わかったわかったちゃんと説明するから、ちょっと待って!」

彼氏失格だ。

そのことを丁寧に説明すると、彼女は安心したように息を吐いた。

そして、再び俺の胸に飛び込んで、顔を埋めてくる。


「よかった安心したよ。」


クフフと笑いながら、

「私よりも魅力がある女性はいっぱいいるかもしれないけど、私のこと、これからも離さないでね!」


「、、、お前こそ離すなよ!」

「きゃっ!」


先ほどよりも情熱的な雰囲気の中で、部屋の中の夜は更けていく。

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話さないで ゴローさん @unberagorou

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