第六話 キングの憂鬱②

「パパ!!何で私が国王にならなきゃいけないのですか!?」

 端正な顔立ちもそんな眉間にしわがよってしまっては勿体ない。

 セイラ様は国王の艶やかな金髪の中に銀髪の混じった髪色で、いつもはおとっりとした優しい少女。そんな彼女がこんなに気性が荒くなっているのは初めて見た。


「セイラ、何をそんなに騒いでいるのだ。はしたないぞ。」

「パパ!!私を国王にするって同意ことですの。」

「今からそれを説明しにきたのだ。」


 それから彼女の部屋に入ると、そこには名だたる賞状の数々が置かれていた。

 剣技大会1位、絵画写生大会最優秀賞、チェスチャンピオンシップ2位などといった名だたる賞状が金縁の額縁に飾られている。その他には年相応のぬいぐるみやべっとが置かれている。

 国王と俺はメイドが持ってきた椅子に座った。

「それでなんだが、セイラが国王になるのは上の二人が頼りないことに他ならない。」

 国王の長男と次男は期待外れだというのは聞いたことがある。国王の前では余り言えないが長男『ジキレン』は親不孝息子で国では有名。最近はギャングと付き合っているなんて噂もある。また、次男『ハイデン』は学業優秀なのだが、それ以外は全然出来ないのだという。

 そう考えると、消去法で国王となるのはセイラ様以外はいないということになるのも納得である。

 国王がセイラ様の質問に淡々と答えていく。彼女も理解しだしだんだんと声がいつも通りにもどってきた。


「わかりました。でも、結婚はまだ私には早い気がしますの。」

「そうは言ってもだな。国王は配偶者を持って、心身ともに支えてもらったほうがいいのでは無いか?」

「私が結婚したいときにするのがいいと思いますの。」

「誰か結婚したい相手でもいるのか?」

 国王が質問すると、セイラは顔をそらした。これは何かありそうだが、年頃の女性にこういう質問は野暮かも知れない。

 俺はセイラと国王の間に入る。

「まあまあ国王、年頃の女の子には色々ありますから。」

 彼女を右目でちらりとみる

「何分かったようなことを言ってるんですの。あなたみたいな方に言われたくわ無いですわ。」

 セイラは俺の発言をパッと反論して見せた。

「セイラなんてことを言うんだ。キングはな、日頃父さんを危険から守ってくれている大事な人なんだぞ。その発言は取り消すべきだ。」

 国王は少し顔を赤くして声を荒げ始める。火を消すどころか、油を注いでしまったようだ。

 国王が大きなため息をつき、捨てゼリフのように吐いていく。

「もうこれ以上は話にならん。言い忘れたが、来週から魔法学校に通うことになったからな。後、キングをお前のお目付役とする。」

 ドアがどんと閉じて。部屋中に響き渡る。


「どういうことですの。そのことについて聞かせてもらってもいいかしら。」

 怖い、怖い、怖い。女性は怒ると怖いんだよなぁ。


「分かった。君の言い分を聞こう。君が飲み込めていない部分を聞き出そう。」

 彼女の言い分を聞くと、どうやら結婚したい相手がいるようである。その人については聞かせてくれなかったがそれは追々聞けばいいだろう。

「しかし、それでは魔法学校に行かない理由にはならないんだよなぁ。もう

 校長が決めてしまったからここは飲まなければいけないんだよなぁ。」

 俺が呟くと彼女は両手を合わせて、いい案が思いつきました!、と言った。

「あなたが私の結婚相手になればいいのでは!?」

「それは嫌です。」

 一瞬で返した。娘と婚約したら国王が何を思うかは分かる。僕の愛娘に手を出したな~って言われてその後、最悪死刑にされるかもしれない。それだけは防がねば!!


 その時、昔エルミナに聞いた話を思い出した。昔開催された花嫁争奪戦でエルミナが条件を持ってしたということがあった。それを利用すれば出来るのではないか。

「セイラ様、一つ私から提案がございます。」

 まずは俺たちが争奪戦に参加する者の中に協力者を送り、そのものに最後まで残ってもらいそいつが条件として結婚までの日数を伸ばすようにする。そうすれば、後から結婚を取り消したいと言ってもらい、本当にしたい相手と結婚する。

「無理矢理な感じもしますがそれが出来るなら私も言ってもいいかもしれないですわ。」

 よかった~~~。これで俺の死刑は無くなったみたいだな。

 俺が安堵していると続けてセイラが話す。

「では、その方はあなたが探してくださる?」


「あぁ分かりました。」

 思わず答えてしまったが策は無い。キングは憂鬱であった。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇


 キングは地方の遠征に来ていた。

 天候は最悪。雷が鳴り、あたりが何度か光る。

「どうすれば協力者が見つかるのかなぁ」と呟いていると、一人の老人が警護団の官舎にやってきた。

「わしを手伝いをしている子どもたちがいなくなってしまって、誰か助けてくれないか。」

 老人はバタリと倒れ込む。俺は老人に手を差し伸べる。

「ご老人、俺が向かおう。」

 椅子に置いていた上着をとり、雨の降りしきる外に出かけていった。










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魔人、バージンロードの守護騎士となる トリノ ミラノ @MINQWAsu

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