【発情期】掌編小説

統失2級

1話完結

札幌市に青田治久という1人の男が居た。青田はかつての製薬会社勤務時代に副作用の殆どないダイエット薬をほぼ1人で開発しており、会社から500億円の報奨金を受け取っていた。その後、青田は会社を退社し、まだ、30代後半の身ではありながらも隠居生活を送る事になっていた。青田には2度の離婚歴があったが、そのいずれの離婚もダイエット薬開発前の出来事であったので、報奨金は納税額を除いて丸々、青田の懐に入っていた。2度の離婚を経験した事によって青田の結婚生活への憧憬の念は完全に消滅する事となっていたのだが、しかし、青田は何よりも女体を愛する男であり、その性欲は男子高校生並に強かった。その為、青田には金の力で繋がった愛人が4人も居た。2人は女子大生で後の2人は30代だった。本当なら女子高生の愛人も1人くらいは欲しかったが、警察が怖かったのでそれは我慢した。青田は2日に1回のペースで4人の愛人たちとローテーション制で逢瀬を重ねていた。そんな地上の楽園生活を満喫していた青田ではあったが、幸せな日々は長くは続かず、37歳の愛人とのその日、2回目のSEXをしている最中に腹上死してしまうのだった。それは、余りにも早く余りにも呆気ない39歳での突然死だった。


死後の青田は幽霊となったのだが、性欲は生前と同じレベルで男子高校生並に強く、毎日の様に発情していた。その為、青田は幽霊という特性を活かして、女子大生の寮に忍び込んでは女子大生のシャワーシーンや自慰行為のシーン等を鑑賞するのだった。しかし、青田は幽霊である。幽霊であるが為に実体が備わっておらず、SEXも自慰行為も不可能であった。それでも、青田は性欲に導かれるかの様に、あらゆる住宅や女子寮に忍び込んでは女性の裸体を鑑賞し続けていた。だが、当然ではあるが射精は叶わないので欲求不満は募り精神常態は日々、悪化して行く一方であった。そんなとある日、青田はある境地に辿り着く。SEXも自慰行為も出来ない今の自分に取っては女体は苦痛の元であり、遠ざけるべき存在である。そう悟った青田は人里を離れて、山奥の洞窟に閉じ込もる生活を始めるのだった。


それから、季節は規則通りに巡り続け3063回目の夏が過ぎ去った頃、天界の神様は配下の者から青田の存在を報告される事になった。「神様、青田治久という男が39歳の時に死亡し、現在は幽霊のまま、3063年間もとある洞窟に閉じこもって暮らしております。彼は非常に性欲の強い男であり、発散出来ないその性欲のせいで3063年間も苦しみ続けて来ました。本来であるならば、もっと早い段階で神様に報告すべきではありましたが、私の不注意で彼の存在を見落としておりました。誠に申し訳ございません」報告を受けた神様は青田の事を酷く憐れみ、青田を輪廻転生のレールに乗せてやる事にした。配下の者の不手際ではあったものの、それに気付けず青田を放置したのは、自分の不手際でもあると考えた神様は青田に薔薇色の来世を用意する事にした。それは青田を向こう100万回の来世でセイウチのオスのボスに生まれ変わらせ、そのいずれの生涯でも数百頭のメスを従えるハーレムを形成させる来世を経験させる事だった。


斯くしてセイウチに生まれ変わった青田は発情期に入ると数百頭のメスたちと交尾をしまくる薔薇色の生涯を100万回繰り返す事になったのです。


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