初恋の思い出はペリドットのブローチと共に
蓮
プロローグ 懐かしのブローチ
アシルス帝国の帝都ウォスコムにある宮殿にて。
太陽の光に染まったようなブロンドの髪に、アメジストのような紫の目の女性が本を読んでいた。
彼女はソフィーヤ・カルロヴナ・ロマノヴァ。アシルス帝国皇妃である。
その時、部屋の扉がノックされる。
「
「ええ、どうぞ」
ソフィーヤは口角を上げ、扉の向こうにいる娘アナスタシアにそう答えた。
すると月の光に染まったようなプラチナブロンドの髪にラピスラズリのような青い目の、長身の少女が入って来た。
その髪色と目の色は、見事にアシルス帝国帝室ロマノフ家の特徴が出ている。
彼女はアナスタシア・アレクセーヴナ・ロマノヴァ。ソフィーヤの娘で、今年十六歳になるアシルス帝国第二皇女である。
「ナーシャ、何かあったの?」
ソフィーヤはアメジストの目を優しく細めて聞く。
ナーシャとは、アナスタシアの愛称だ。
「実は三日後の晩餐会で着用するアクセサリーが手持ちのものではドレスに合わないのです。
アナスタシアは控えめに首を傾げた。
「そう。それならジュエリーボックスの中に入っているわ」
ソフィーヤはアナスタシアに優しく微笑む。
「
ソフィーヤは側仕えの侍女にそう指示した。
程なくして侍女がジュエリーボックスを持って来る。
ソフィーヤはそれを受け取り、ゆっくりと開いた。
ダイヤモンド、ルビー、サファイア、アメジスト、エメラルドなど、様々な宝石が埋め込まれたアクセサリーが数多くあった。
「どれも素敵ですわ」
アナスタシアはラピスラズリの目をキラキラと輝かせている。
そんな中、彼女はあるアクセサリーが目に留まった。
「このブローチ、細部まで意匠が凝らされていて素晴らしいですわね」
ふふっと微笑み、アナスタシアが手に取ったのはペリドットのブローチ。
「あら、それは……」
ソフィーヤはそのブローチを見てアメジストの目を大きく見開いた。
「
アナスタシアはきょとんと首を傾げている。
「いいえ、何でもないわ。ただ、随分と懐かしいものだったから」
ソフィーヤは過去を思い出すようにアメジストの目を閉じた。
それはソフィーヤがアシルス帝国帝室であるロマノフ家に嫁ぐ前。
ナルフェック王国の第一王女ソフィー・ルイーズ・ルナ・シャルロット・ド・ロベールだった頃の話である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます