トップ・シークレット!
錦木
トップ・シークレット!
絶対にはなさないでね。
その日、俺は特大の秘密を抱えることになったーー。
俺の名はナタネ。
今をときめく高校二年生だ。
そして、今日のようにいつも登校してるとやってくるアイツ……。
「おっはよー!ナタネ!」
そう言ってどーんと背中に乗ってくる。
「セリナ重いんだが」
「女の子に重いとか言っちゃいーけないんだ、いけないんだ」
そう言って膨れてみせる。
こいつは幼馴染のセリナ。
外見は
外見詐欺だ。
「先輩、おはようございます」
後輩たちが上品に挨拶してくる。
美人で人当たりがいいセリナは、男子にも女子にも人気が高い。
セリナは俺の背中から元気よく手を振る。
「みんな、おっはよー!」
「やめろやめろハーレムできる」
その姿はアイドルさながらである。
「ったくいい加減にしろよ。俺まで人だかりに巻きこまれるだろうが」
「嫌いじゃないくせにー」
そう言ってセリナはニヤニヤと俺を見てくる。
世間では天使とか言われているのにその顔は小悪魔的だ。
なにが言いたいかというと、こいつは俺に対してはいろいろ重いのだ。
からかっても怒らないし嫌われないと思っている。
まあ、実際その通りなんだが。
「あっ、予鈴なっちゃった!」
「やっべ、急がないと」
うちのクラスの担任は遅刻にうるさい。
グズグズしていたら雷を落とされる。
「ナタネ、今日も放課後に体育館ステージ集合ね」
「おう」
「待ってるから」
そう言った一瞬だけ、セリナが切なげに笑ったように見えた。
「さー今日も頑張るぞ」
そんな繊細な表情を一瞬で火を吹き消すように普段に戻して、セリナは教室へと向かっていく。
俺もその背中を追った。
「遅くなっちまったな」
すっかり忘れていたが、今日は日直だった。
黒板を消して、日誌を書いてから体育館に向かう。
「セリナ、怒ってるかな」
まあ、あいつのことだから大丈夫だろう。
そう思って体育館の戸をソッと開ける。
天使がいるのかと思った。
埃の粒子が、金色の西日にキラキラ輝いて目を閉じて手を組んだセリナを取り巻いている。
黙っていれば、学校一、いや同世代で一番美少女なセリナは別世界のもののように神々しく見える。
地上に舞い降りた天使だ。
パチッと目を開けると俺と目があった。
神聖な印象が消え失せる。
「もー、ナタネ遅いー」
等身大の少女の顔でそう言うと、不満げに続けた。
「待ちくたびれちゃったよ」
そう言ってスポーツドリンクをグビグビ飲む。
セリナはうっすらと汗をかいていた。
トップ・シークレット! 錦木 @book2017
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