第4話

「ご・め・ん。そっぽ向かないでよ~本当にマジごめん」

「……じゃ、ちゃんと私の目を見て、私の名前を呼んで……」


 恥ずかしさを目一杯押し殺し、ちゃんと最後まで言葉にした私の頬にはなぜか、無数の粒が伝って落ちていく。

 

 音乃施さんの顔がますますぼやけて、よく見ようとすればするほど、視界の中では雨脚が強まる。

 当分の間は止んでくれそうにない、このなみだ。いつもならそういう待ち時間も、楽しんで待っていられるのに。


 今ばかりは、邪魔で邪魔でしかたない――。




「ありがとう。本当に」



 ――そっと耳元に、優しい言葉がなぞられる。


 溶け入るようなその声は、なんだかいつもとは違う音乃施さんの声。



「ありがとう。そんなに想っててくれたんだ」

「……うん」

「それじゃ、私も暗野ちゃんにしっかり答えないとね……ふぅ…深呼吸」

「ふふ。緊張してるの?」

「!? そ、そりゃそうだよ」



 そっか。音乃施さんでも緊張するのか。


 

「も~。さっきまであんなに泣いてたのに、めっちゃ笑ってんじゃん」

「えへへ。だっておかしかったから」

「私だって人なんだから緊張します~」

「ごめん、お相子ってことにしよう」

「りょ~解。それにしても、暗野ちゃんずるいな」

「えっ、どこが」

「自覚してないってことか」

「だからどこが――」

「好き。暗野ちゃんのどこまかしこも全部好き。私は暗野ちゃんなしでは生きていけない!!」




 

 

 

 

 

 

 



 

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コンチェルト&ハーモニー 那須茄子 @gggggggggg900

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