2話 その2
オススメ作品。
あれは、いつのことだったでしょうか?
記憶にはありませんが、友達からガンダムSEEDというアニメを進められたことがありました。
ガンダムSEED。日本を代表するロボットアニメです。漫画やアニメが好きなわたしですが、実は、昔っからあまりロボットアニメは得意ではありませんでした。
戦争アニメが大嫌いで、戦っていて、なにが正義なんだろう。どっちも人殺しじゃんっと思う幼少時代でありました。兎に角、戦いを正統化する作品が好きになれない。なので、実は未だにヒロー物とかあまり得意ではないです。
話がそれましたが、ガンダムSEEDは、地球連合軍とザフトとの戦争のお話で、純血の地球人と遺伝子操作された人、コーディネイターとの争う物語であります。
友達にススメられ、渋々とTSUTAYAでDVDを借りて見ました。
すると。これが思いのほか面白かった。
なんやコレ!! 面白ぃ奴やんかぁ。
まさか、まさかの、のめり込み。
何がいいって、敵対するのが同じコーディネイターの親友。
なぜ、戦うのか。
どうして、殺し合うのか。
仲間をお互い殺され、揺れ動く、憎しみと友情との葛藤。
ええ、本気で泣きました。
頭の中はガンダムSEED一色。
そんなときのお話です。
あれはパン屋に行ったときのことでした。
ええ、わたくし、米も好きですがパンも大好き。惣菜パンにタルトなどの甘い菓子パン。
じゅるる。思い浮かべただけでもヨダレが出てしまいそうです。
そのパン屋はアンティークという店で、名物が天使のリング。クルミとチョコの入ったパンが有名でした。
そのころはテレビなどでも紹介されるようになり、人がひっきりなしに訪れるのが常で、まだ、騒がれてないときから知っていた自分としましては、複雑な気持ちでありました。
そのアンティークには天使のリングの切れ端を使って加工して売っていました。
それを買うのがいつものこと。しかし、それが今日はありません。
可笑しいなぁ。
たまたま横を通った店員さんを引き止めて、わたしは聞きました。
ええ、聞いてしまったのです。
この頭がガンダムSEED畑の頭で……。頭のなかでは、ずっとガンダムSEEDに使われてる曲が流れていました。
キャラクターたちが脳裏に散らつきながら、わたしは店員さんに聞きました。
「ラクスありますか?」
ラクス。
ガンダムSEEDのキャラクターのヒロイン。
ラクス・クライン。
ザフト軍の歌姫。
てやんでぃ、元気かぁ。……お前もなぁ。
ああ、なぜかそんな言葉まで浮かんできました。
──これ、わかる人にしかわからないだろうネタです。
そこの、あなた。あなたも同類ですよ。
したがって言い間違えるかもしれないですからね。
ええ、ええ、まあまあ。わたくし“ラスク“をラクスと言っちゃたんです。
ラクスありますか。
出せるか!!!!!
彼女が出てきて『わたし、ラクス・クライン』なんて言われても困るわ。
ちょっと、ちょっと。
列の前の方で肩を震わせてる人がいるんですけど。
いいかい、あなたも同士だ。このネタがわかったんでしょう。
店員さんが、つぶらな瞳で、きょとんと見てくる。
ああ、曇りなき眼が、わたしを見据えている。
「ラクス……」
あっ。またしても言ってしまった。
「ラ・ス・クありますか?」
「ああ、少々お待ちください」
ようやく合点して、店員さんはにこやかに店の奥へと向かわれた。
笑うでねぇ。
前の方でまたしても、肩を震わせてる人。
二度とラスクなんて聞かないぞ。
わたしは思い、このパン屋から、しばらく遠ざかったのでした。
それにしても、言い間違い、勘違い、そんなことは日常茶飯事。有り過ぎて記憶の彼方ですが、コレ、母そっくりなんですよね。そうです。遺伝なんです。
正当なる血脈。DNAによる情報。
すべては、DNAがいけないのです。
………。本当ですよ。
こんな黒歴史、この世にお披露目して大丈夫かしらと思わずにいられない、今日このごろであります。
言葉と黒歴史 甘月鈴音 @suzu96
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