仁義なき吹部
や劇帖
仁義なき吹部
この二つに挟まれる形でざっくり真ん中にある音楽教諭の
その日、吹奏楽部顧問・
が、常日頃から
「吹奏楽部はんは
吹奏楽はいくつものパートに分かれていて、この区分が非常に強く、ともすれば豪族集団めいた
放課後、各パートの部員たちが練習のために学校内に散る中、第一音楽室にパートリーダーらが召集された。言わば各パートの
「おうお前ら、内輪揉めしとらんと団結せんかい」
開幕の恒例となっている蝶野の言にクラリネットの
「無茶言うなや。先生かて分かっとろうが。
「下のもんに示しがつかんけぇ」フルートの
「まあパート間はともかく、上下関係は適度に風通し良うしといたがええよ」とオーボエの
「女は面倒じゃのう」
トランペットの
「ふざけんなやカスが、そもそもお前らが合唱のモンに要らんコナかけたんじゃろうが」
「合唱の若いのが第二理科室つこうとるのは知っとったはずじゃ。花村が
「何やった。具体的に言えや」。ホルンの
「別に。発声練習しとったから後から真似っこしただけじゃ。『えるはぁべん』つって」
「古いわ」
「しゃらくさい真似しよる」
「四半世紀前にわしらもやっとったやつや」蝶野が嘆息した。「血は争えんな」
「先輩らぁの受け売りじゃ」。チューバの
「しばいたりゃあええんじゃ」
「
「何代分の因果じゃろうなあ」
パーカッション(打楽器)の
「それより、はよ終わらせてくれんかの。後輩どもが練習できん」
第一音楽室は合奏時以外はパーカッションパートの城だが、今回のように部員に占拠されている間は該当部員は外に出る。出ざるを得ない。さすがにこのやりとりの中で打楽器を打ち鳴らす度胸はあるまい。
「そういや打楽器の奴らはどこにおるんや」
「一応うちんとこに退避させとるわ。多分基礎練しとる」。近藤が答え、葉加瀬は軽く会釈した。管楽器の大枠から外れた同士の奇妙な友誼があった。
「どいつもこいつも手ぬるいわ」。サックスの
パートという縦割りの
「花形は言うことが違う」。トロンボーンの
結局、特に何か進展があるわけもなく、口頭注意で解散の運びとなった。合奏時に蝶野から全員に向けて改めて勧告があるだろう。
仁義なき吹部 や劇帖 @yatheater
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